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Apple Musicプレイリスト "Post Classical music vol.1 selected by UTSUGI Koichi (UN.a)"

UN.aの宇津木紘一によるApple Musicプレイリスト “Post Classical music vol.1 selected by UTSUGI Koichi (UN.a)” のご紹介です!

現在とても注目されているジャンルのポストクラシカル。
名前にある通り伝統的なクラシック音楽からの流れを汲んでいるのですが、生楽器、電子音楽、アンビエント的、プログレ的、等様々な要素が混在していて現在進行形の興味深いジャンルです。

さらに地域によって曲の雰囲気の特徴、映画との親和性等、文化的な側面からみてもとてもおもしろいです。

ポストクラシカルのプレイリストは探してもあまり多くなく、このプレイリストではディープな音源もセレクトしていますのでぜひ!
サムネイルはUN.aの中村浩之氏によるものです。

Post Classical music vol.1 selected by UTSUGI Koichi (UN.a)

1 : Move / Nico Muhly, Performed by Timo Andres

アメリカの作曲家”Nico Muhly”によるピアノ曲。
曲の冒頭から最後まで感じられることが、「短いフレーズのモチーフ」を繰り返し、そのモチーフの音を増やしたり減らしたりポリリズム的にしたり、拍子を変えてスピード感を変化させたりしています。

もうひとつ感じることは、この曲にはいわゆる「メロディー」といわれるものが存在せず、フレーズが上方向や下方向に様々な音列で動いています。

まるでピアノが自我を持ち、もしくは何かに突き動かされて、躍動したり時には葛藤したりと、身体的にも精神的にも様々な動きを想像することもできます。タイトルの[Move]はこのような動きを表現しているのではないかと感じる。

こちらのYouTubeにて、ピアニスト”Timo Andres”本人による演奏が楽譜付きで視聴できます。

2 : Opaque / Hildur Guðnadóttir

アイスランドのチェリスト、作曲家”Hildur Guðnadóttir”、映画[Joker]にてアカデミー作曲賞に輝いたことでも知られています。

チェロの多重録音による曲、北欧音楽の大きな特徴のひとつの北極圏の深い静寂が広がる北欧の大地を想像させます。

冒頭から響く低音域のミニマルミュージック的な短いフレーズの展開は、代り映えしない厳しい冬の北欧の景色を思い起こさせ、高音域に移り変わるところでも、どこかすっきりとしない不安を感じさせる響きが続く。

楽曲全体に感じられる不安さの理由は、
「同じリズムでのフレーズの展開」「同じ音を何度も繰り返す」「多重録音のチェロがそれぞれ独立して動いている」ということではないかと感じます。

チェロが重なりいわゆる美しい「かたまりのハーモニー」を作るのではなく、チェロそれぞれのパートが絡み合いすれ違い「独立した線によるハーモニー」を形成しているからだと。

3 : re:member / Olafur Arnalds

ポスト・クラシカルの最重要人物の1人の、アイスランドの“Olafur Arnalds”。

楽曲全体を包み込むオーガニックでピースフルな雰囲気、それを感じさせる理由のひとつにフェルトをつけた「ゴーストピアノ」と呼ばれるピアノの存在があると思います。

フェルトにより柔らかく優しく変わったピアノの音色は、ノスタルジックな気持ちにもなります。
そのピアノを中心に、電子音や弦楽器が絡み合い、さらに後半にはドラムも加わり躍動感が増し、過去の記憶が映像的によみがえってくるような幻想的な楽曲。

4 : Folk Music / Judd Greenstein, Performed by Now Ensemble

アメリカの作曲家“Judd Greenstein”が、Now Ensembleのために書き下ろした楽曲。
Now Ensembleはフルート、ピアノ、クラリネット、エレキギター、ベースによるグループで、コンテンポラリー・クラシカル・ミュージックの楽曲を演奏しています。

「コンテンポラリー・クラシカル・ミュージック」と呼ばれるこの楽曲は、アメリカの独自のクラシック音楽から派生する文化を感じることができます。
その理由のひとつとして、アメリカの伝統的なサウンドのカントリーミュージックの響きが関係しているのかもしれません。クラシック的な重厚さはヨーロッパの感じとはまた違い、ポップミュージックのような軽快さも私は感じます。

5 : Love Birds, Night Birds, Devil-Birds / Kelly Moran

Oneohtrix Point Never のライブセットに参加していることでも知られているアメリカの作曲家”Kelly Moran”。

プリペアド・ピアノの多重録音と電子音による楽曲で、規則性がなくカオティックにランダムに重なり合っていく。
しかし、プリペアド・ピアノの音色の関係なのか、不快感のような感情は感じずに逆にその「規則性の無さ」に心地良さを感じます。
アンビエント・ミュージックとはまた別の「インスタレーション的」な楽曲。

この楽曲はメディアアーティスト”Cassie McQuater”のビデオインスタレーションと共に公開されました。

6 : Familiar / Nils Frahm

Olafur Arnaldsと並びポスト・クラシカルの最重要人物のひとりのドイツの“Nils Frahm”

柔らかい音色にしたピアノを中心として、ピアノからのノイズや演奏者の息、柔らかい電子音による楽曲。
ピアノとグロッケンのほぼ変化しないループフレーズは、まるで時間が淡々とながれていく日常のようでもあり、穏やかな時間の中に揺蕩っている感覚にもなります。
おとぎ話のような異世界に迷い込んだようにも感じられるピースフルな楽曲。

7 : Loud /Graham Fitkin

ポスト・ミニマルミュージックの代表格、イギリスの”Graham Fitkin”による6台のピアノのための作品。
映画音楽でも多用されるミニマルミュージックからの発展型のポスト・ミニマルは、要注目のジャンルだと感じます。

この曲は5分を超える内容で、Steve Reichに代表されるような徐々に移り変わっていくミニマルミュージックとは違い、
複雑なポリリズムでは無く、力強く前進していくスピード感はまるでロックのようでスリリングな展開が魅力で、サウンドはジャズ的の要素も感じられます。
6台のピアノによって演奏されることで「縦に重なる広い音域のハーモニー」や「横に繋がる高速フレーズでのハーモニー」が美しい。

こちらのYouTubeにて、ピアニストグループ[Piano Circus]による演奏の一部が視聴できます。

8 : Fiore / Le Lendemain (David Wenngren & Danny Norbury)

スウェーデンの"David Wenngren"と、イギリスの"Danny Norbury"のプロジェクトの[Le Lendemain]による作品。

ピアノとストリングスによる幻想的なアンビエント。
小節の概念は無く揺蕩うような響きは、特出して何もドラマティックなことは起きずゆっくりと時間の流れを感じ、日常的な風景を切り取っているようでもあるのかなと。
クラシックでいうところの「エリック・サティ」に通じるような感覚を覚えます。

David Wenngrenのような北欧のアーティストの作品には、この曲のような深層意識に語りかけてくるような深く厳かなで雰囲気の曲が多くあるので、またの機会にご紹介できたらと思っています。

9 : So Long Art Decade / Michi Wiancko & William Brittelle

ポストクラシカルやインディークラシックといったクラシック音楽からの流れを主体とし、そこに様々なジャンルや電子音等を用いた最先端のサウンドを提供し続けているレーベル[New Amsterdam Records]の共同創立者の"William Brittelle"と、
カリフォルニア出身の日本の女性ヴァイオリニスト"Michi Wiancko"による作品。

ヴァイオリンを中心に電子音を大胆に取り入れ、ヴァイオリン自体にもエフェクトをかけたりと遊び心満載です。
生楽器の様々な特殊な演奏方法を次々に繰り出したり、拍子やテンポ変化を多用するアレンジは"William Brittelle"の特徴でもあり、私たちを安心せることなく常に刺激的に私たちを高揚させてくれます。

10 : By the Roes, and by the Hinds of the Field (ノロジカや野の雄鹿にかけて) / Jóhann Jóhannsson

アイスランドの作曲家"Jóhann Jóhannsson"による作品。

北欧のアーティストの大きな特徴として、どこかもの悲しく且つ幻想的で雄大です。"Jóhann Jóhannsson"は幻想的な雰囲気の作品も多く、ある意味映像的であったり映画的な音楽の筆頭の作曲家ではないかと私は感じます。

「ほっこりする」というよりは「胸を締め付けられる」ような、静かに意識に迫ってくる響きは北欧の大自然や北極圏寒さに通じるところは大きいと予想します。

以上こちらの10曲をご紹介しました。ご参考いただけたら嬉しいです、ぜひお聴きくださいませ!

UN.a 宇津木紘一


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