卵巣嚢腫体験記⑤〜運命の手術当日〜


『#君たちはどう生きるか』原作・#吉野源三郎/漫画・羽賀翔一

病院で読んだ本二冊目。
今再び大注目を浴びている昭和の小説の漫画版。漫画版と言いつつ、約半分は主人公・コペル君へのおじさんからの手紙という形で、文章になっている。
中学生ぐらいの時に出会っていたかったと思うような、人生の教訓になる内容。
終盤で、タイムリーにもからだの痛みについて触れられていた。
痛みがあるから不調に気づくことができる。その通りだと思った。
そして改めて、これまで至って健康に生きてこられたことに感謝しなければいけないと思った。

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体験記⑤

1/24(水)手術日の朝。
前日の夜9時から絶食のため、朝8時から点滴を開始。
病衣と弾性ストッキングを着用。

今回の一件で、採血やら血液検査やら点滴やらで合計10回以上も針を刺されており、あんなに嫌いだった注射もお手の物になりつつあった。
そして、生まれてこのかた謎に包まれたままだった血液型も、ちゃっかりあっさり明かされてしまった。

事前に配られた行程表には浣腸をすると書いてあり、嫌悪感を隠さずにはいられなかったが、いざ入院してみると浣腸は不要と言われて大いに喜んだ。

手術は14時からと言われており、それまでは相変わらずすることもないのでテレビを見たり読書をしたりして気を紛らわせた。

14時過ぎ。
看護師さんが迎えに来て、「それじゃあ開始しまーす。まずトイレに行ってついて来てくださーい。」
とやけに軽いノリ。

母ともなあなあな別れ。

トイレを済ませて同じフロアの一番奥にある手術室へ、点滴を引きずりながらも自分でテクテク入っていった。

医療ドラマによくある担架に乗せられて家族に手を握ってもらって…という光景とはあまりにかけ離れていて少し滑稽であった。

手術室には見たことのないお医者さん1人と見慣れた看護師さん3人がスタンバイ。
キャップを渡され髪の毛をしまい、名前を告げ、病衣を脱いで台の上に横になった。
いよいよ緊張感がピークに。

お医者さんに酸素マスクを口に当てられスーハースーハー。
膨れ上がったお腹のせいで足を伸ばすのが困難なのに、無理矢理伸ばされそうになって抵抗して…と足に気を取られているうちに、急に喉が苦しくなり、世界が歪み、ゲホゲホとむせて……意識を失った。





長い夢を見ていたような感覚。

はい、終わりましたよ、と声をかけられて、目を開けた。まだ意識が朦朧とする中で、看護師さんに足の指怪我したの?このシミは元からあったの?もともとは体重軽かったんでしょ?何キロだったの?と矢継ぎ早に質問を浴びせられ、必死に頭を動かして声を出すと、麻酔のせいで喉がおかしくなって、声も変。なんだこの感覚は。

そうこうしているうちにリカバリールームに運ばれた。しばらくしていつもの婦人科の先生が見に来てくれ、「5.5 リットルもあったよ。卵巣、残したから」と言われた。

間も無く母も現れて、やっとすべてが終わったという実感がわき、涙が頬を伝った。

(体験記⑥に続く……)

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