#好き024 ライ麦畑でつかまえて
J・D・サリンジャーによる唯一の長編小説
私が初めて読んだのは高校生の時で、16歳か17歳のときだ。
アメリカで道徳的に発禁になっただの、ジョン・レノンを射殺した犯人が犯行現場で読んでいただの、健全な反骨精神をはぐくむために10代で読むべきクールな本の代表格として、盛大な前評判によるバイアスがかかった状態で読んだわけだが、10代だった私もその例外に漏れることなく、ホールデン・コールフィールドに大いにシンパシーを感じた。
所謂文学的な作品としてのお気に入りなのとは少し違うが、私にとって特別な一冊である。梶井基次郎の『檸檬』や中上健次の『十九歳の地図』は、大人になってから読んだので、ライ麦畑でつかまえてのようにシンパシーを感じることはなかった。なので、この本を高校生ときに読むことが出来たのは幸運だったと思っている。
なお、最初に読んだのはもちろん白水社のもので、表紙には落書きみたいなピカソの絵があった。村上春樹が翻訳したものも発売日に購入をしたが、すでに読み慣れているものとの違和感で、最後まで読むことが出来なかった。
私は「滅入る」という表現がとても気に入っていて、40歳を過ぎた今でも普通に利用している。便利な言葉だと思っているのだが、この表現を使う人は他にあまり見かけない。
なお、口には出さなくとも、心の中で「やれやれ、滅入たな」と思っていることはしょっちゅうで、これはホールデンから譲り受けたマインドである。理不尽な事に直面した時に、真正面から受け止めて悲観的になるのではなく、ちょっと他人事のように、肩の力を抜いて受け流すニュアンスを含むこの表現を、冗談ではなく本気で気で入っているのだ。
曖昧な記憶ではあるが、確か村上春樹の翻訳では、この頻繁に登場していたはずの「滅入る」という表現が使われていなかったと思う。
それからもう一つ、赤いハンチングの話。
元々ハンチングは好きなのだが、KANGOLの赤いハンチングを所有している。もちろん、これもホールデンを意識して購入したもので、今でもたまに、気をつけながらかぶっている。(※ジャッキー・ブラウンのサミュエル・L・ジャクソンの影響でもあるが、そのルーツだってきっとホールデンだと思っている)
この本は、読んでから四半世紀たった今でも、それくらいの影響を私に及ぼし続けている。
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