圧巻のCivil War
A24初のブロックバスターであるシビル・ウォーをIMAXで観てきました 圧巻です！！！
内容は、トレイラーや前評判通りで、内乱中のアメリカをジャーナリスト視点で描いた戦争映画であり、大統領への取材を目的に4人組のクルーがワゴン車に乗ってワシントンD.C.を目指す、というロードムービーのような側面もあります
特筆すべきは、やはりA24の独創的な、芸術的かつポップでエッジの効いた演出および映像と音響です ストーリーに関しては丁寧な説明なんかは全然なくて、”なぜ内戦状態になっているのか？” ”どのような分断が起きたのか？” ”何と何が戦っているのか？” ”経済はどうなっているのか？” ”政府はどうなっているのか？”などの詳しいことは明かされていなくて、映像の端々から視聴者が状況を推測することになるのですが、その一様の解釈を求める説明的な作りでは無く、視聴者に映像から想像させる感じがいいのです それは良く言えば視聴者を信じているわけで（悪く言えば投げっぱなしジャーマンのような…）そんな作り手と視聴者の関係が、より想像力を掻き立てます その最たる例は同じA24の関心領域で強く感じました
例えば、分断する1つの勢力に、星2つの星条旗を掲げるカリフォルニア州とテキサス州が中心となっている西部勢力（WF：Western Forces）というものがあります 現代社会では最もお金を持っている2つの州であり、リベラルなカルフォルニアと保守のテキサスが同盟を組んでいるというヤバい状況なのですが、そういった野暮な説明はないです でも、給油をお願いするのにカナダドルを使うヤバさだとか、交戦中の兵士が戦っている相手が何者なのか解っていないというヤバさだとか、直接的な説明が欠落しているかわりに、それを感じ取るための映像が丁寧に作られていて、内乱中のやばいアメリカ感がヒシヒシと伝わってくるのです そして、そこにはいろいろなアメリカ人がいて、その一人一人がそれぞれ非常にアメリカン人らしく描かれています
また、音響に関してもものすごくエッジが効いてて、無音からの衝撃音のメリハリがキレッキレで、まるでジェットコースターに乗っているように油断がなりません フルに満喫するにはIMAXがいいように思います
では、この映画で描かれている戦争がリアルなのか？というと、私がイメージするリアルさとはちょっと違っていて、とても無慈悲で研ぎ澄まされた戦争の印象を受けました 私にとってリアルな戦争のイメージは、フルメタル・ジャケットだったり、ティム・オブライエンの小説だったりと、滑稽さや身も蓋もない泥臭さのような格好悪さを内在しているのですが、この映画の戦争は殺伐としていながらもクールでスタイリッシュです もちろんタランティーノのように捕虜をいたぶって楽しむようゲスい表現もないです
それから、ジャーナリストや戦場カメラマンの描かれ方について、劇中では保護されながら戦場の最前線にまで足を踏み入れていましたが、あれがリアルなのかどうかは私の知識では判断がつきませんでした 戦場カメラマンと言えば地雷を踏んだらサヨウナラの浅野忠信の印象が強いのですが、本作におけるベテランカメラマンであるキルスティン・ダンストにも、それに通ずる心情を感じました 一方で若い見習カメラマンであるケイリー・スピーニーは、レオンのときのナタリー・ポートマンを彷彿させるような、苦悩と葛藤と成長と覚悟と狂気を感じさせるような、素晴らしい演技でした
なお、私は俳優としてのキルスティンが好きで、スパイダーマンとかエターナル・サンシャインのころ（そんなにみてない…）に比べて歳を取った彼女の演技と表情もすごくよかった
劇中のような退廃した世の中にならないように、数々の危険を冒しながらも戦場カメラマンとして活動してきた彼女の無念さと喪失感が痛く心に染みいったが、独りよがりの過度な感情移入をさせてはくれないのが、A24の魅力の1つだと思う
不思議と映画を観た後に引きずる感情というものはなく、特に感動した訳でもないし、爽快感が残るわけでもないし、戦争や分断化される社会について思い直すことがあるわけでもないし、ただただ作品に圧倒されただけ
だからきっと、この映画は社会派なんかではなくて、王道のエンターテイメントなんじゃないかと思う とにかく圧巻です！！！
おまけに、トレイラーにもある印象的なシーンに登場する恐怖の赤メガネ男は、キルスティンの旦那さんで、スケジュールの都合、急遽代役として抜擢されたんだってさ、いい味出し過ぎでしょ
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