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算数における文章題の困難さとどう向き合うか

中村(2013)は、算数障害児童生徒への一斉指導における支援の現状と課題について次のように述べている。

算数障害児童生徒への一斉指導は、多くの学校ではすべての児童生徒を対象とした支援を複数取り入れた指導が行われていることが明らかとなった。一方、一斉指導においては、個別の支援はあまり行われておらず、補償教育的アプローチの考え方を取り入れた個別の支援を考慮した教材や指導法の開発が課題であることが示唆された。

中村好則(2013)「算数障害児童生徒への一斉指導における支援の現状と課題」数学教育学会誌第54巻


現任校でも算数障害と思われる児童が各クラスに在籍しているが、個別の支援はほとんど行われていない。UDの視点で授業を構成することで、全員が参加しやすくなる授業を学校として目指している。クラス全体を意識して授業を行なっているが、個を大切にできていない現状がある。

1クラスの人数も多く、個別支援が必要な児童も一人というわけではない。
担任一人でできことは限られていることから、通級指導教室などで個別の指導を行い、通級担当と担任が情報共有を行い、その子に応じた続けてできる支援を考えることが大切であると思う。 


宿野部・五十嵐(2019)は、発達障害児の算数文章題における有効な手立てを次のように述べている。

先行研究から算数文章題における具体物、半具体物、テープ図、線分図、数直線など(以下、学習法略と記す。)を用いた指導は文章中の情報をイメージ化し、立式することに有効であることがわかった。

宿野部惇平・五十嵐靖夫(2019)「発達障害児の算数文章題における困難についての現状と課題」北海道教育大学紀要第69巻


小学校高学年の割合の問題などは、大人でも文章題を一読しただけでは問題を解くことは難しい。文章内容を視覚的に把握することはどの教科書でも行っているが、子どもが学習方略を使いこなすことができていないからつまずくこともあるのではないだろうか。

教師が教えるべきことは教え、授業で何度も取り上げることで少しずつ子どもが使いこなすことができると考える。一斉指導では繰り返し学習方略を用いることを行い、ペアやグループで使い方等を適宜確認する。それでも学習法略が身につかない場合は、個別の支援を行うといった支援方法が考えられる。

これまでのように一斉授業だけで文章題のつまずきを乗り越えるだけでなく、もっと子どもたち同士が関わり合う授業にしていくことも大事なのではないだろうか。個別最適な学びが求められていることを踏まえると、先生に聞く・自分一人で進める・友達と学習するといったように学習方法を選択させることでつまずきに前向きに向き合う姿が見られるようになるかもしれない。

最後に別の観点から文章題にどのような支援の方法が考えられるか述べてみたい。今井(2024)で取り上げられている記号接地という見方は非常に参考になる。

抽象的で記号接地が困難な概念は、実践ー失敗ー修正のらせん状のブーストラッピングの過程を経て、徐々に接地し、コツをつかみ、最終的に直観的にすぐに取り出して使えるところまでもっていく。それが「身体化」された、「生きた知識」になるということである。難しい抽象的な概念を「生きた知識」にするにはそれ以外の方法はない

「学力喪失」(2024)今井むつみ,岩波新書

これまで算数の教科書にある単元冒頭の復習ページは、あまり重要性を感じなかったため、さらりと流すように扱っていた。しかし、記号接地という点から復習ページを見直すと、概念が形成されることは非常に難しいことから記号接地のために用意されているのではないかと思うようになった。
やはり、教科書は奥深い・・・

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