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"天才"岡林勇希 飛躍の1年を振り返る

みなさん、お久しぶりです。
ここ最近更新が滞っていましたが、シーズンオフに入り色々と落ち着いたため、いくつか今季の振り返りnoteでも書いていこうかと思います。

先日、中日ドラゴンズの岡林勇希おかばやし ゆうき選手が契約更改を終え、441%増となる4000万円でサインしました。

高卒3年目となった今年は開幕スタメンを勝ち取ると、攻守に渡ってチームを牽引しシーズンを通して試合に出続け、最終的にチームトップとなる最終的に142試合に出場し、最多安打のタイトルを獲得、ベストナインゴールデングラブ賞にも選出されるなど大ブレイクを果たしました。
今回はそんな岡林選手の1年を振り返っていこうと思います。

1.2022年シーズンを振り返る

打撃

まず目につくのは打席数の多さではないでしょうか。608打席はチームトップ、リーグでも3位の数字であり、それほど多く使われる程の信頼を勝ち取ったと言っても過言ではありません。
そして打率.291、161安打も文句のつけようがない成績です。ホームランは0本ですが二塁打は11位タイの25本、三塁打は両リーグでもトップの10本をマークしており、「鋭いライナーで外野を抜いて足で塁打を増やす」といったスタイルだったように感じます。
出塁率.329、長打率.373、OPS出塁率+長打率.702も申し分ない数字と言って良いでしょう。

またそれだけでなく高い適応能力も彼の持ち味であり、月別打撃成績は進むにつれて良化の傾向がありました。


更にマルチ安打はリーグ最多の50回、猛打賞に関してもリーグ2位の14回とまさに「打ち出すと止まらない」選手でした。
これらのパフォーマンスを可能にしたのが高いコンタクト能力であり、Contact%コンタクト率は86.2%、Z-Contact%ゾーン内コンタクト率は92.3%と高い数字を記録しています。


走塁

続いて走塁面での貢献を見ていきます。先述したように、岡林選手は非常に足で塁打を増やすことが多く、走塁による貢献もかなりのものでした。

Spd足の速さを評価する指標は7.0でリーグトップ(2位は)、UBR盗塁以外の走塁による得点貢献は8.4でリーグトップ、wSB盗塁による得点貢献は2.0でリーグ2位、BsRUBR+wSBは10.4で両リーグトップと圧倒的な数値を叩き出しています。
また今季は盗塁技術の上達がめざましく、成功率、盗塁数共に大きな伸びを見せています。

数だけでなく、質まで両立させた盗塁技術は相手によってかなりの脅威であったことでしょう。

打撃能力に加えて足でも貢献出来るというのは大きな強みになるでしょう。


守備

続いて岡林選手の守備を振り返っていきます。2020年、2021年とこれまではセンターのポジションを年間で一番多く守っていましたが、大島選手が健在ということもあり今季は開幕戦をライトで迎えました。その後もセンター大島ライト岡林を中心に大島選手の離脱を機にセンターでの起用が増えた、といった感じでした。実際に守備イニングを見てみるとより分かるでしょう。

岡林選手の守備における持ち味はなんと言っても俊足を活かした広い守備範囲と肩の強さでしょう。RngR守備範囲の広さを表す指標はセンター、ライトでもプラスの数値を記録しています。ライトが両リーグでもダントツトップの数値なのは他のライトを守る選手に依る部分も大きいでしょう。しかし、センターでもプラスの値を記録出来ていることは素晴らしいです。

肩の強さに関してもセンターでのARM外野手の送球による貢献はプラスを記録しています。ライトでは-1.6で2位(1位は佐藤輝明選手の0.0)となっていますが、ライトゴロを記録したり、8/7のDeNA戦にて二度の本塁送球で失点を防いだことなどを踏まえると、相手にとって脅威であったことは間違いないでしょう。

UZR守備の総合指標でもセンターが5.9、ライトが21.3と両方でプラス、ライトは規定守備イニング到達者の選手ではダントツトップの21.3(2位が佐藤輝明選手の7.1)を記録しています。またセンターの守備イニングが他の選手に比べて少ないということもあり、他11球団の選手で一番センターを守った選手と比較してUZR10001000イニングあたりのUZRが13.2と最も高く(2位はロッテ髙部瑛斗選手の9.0)、センターでも高い守備貢献が期待できる選手であると見て良いでしょう。

今シーズンの岡林選手をまとめると
・打撃では高いコンタクト能力でヒットを量産、長打も足で稼ぐスタイルで打ち出すと止まらない
・走塁は走塁盗塁共に両リーグでもトップクラス、特に盗塁技術の向上がめざましい
・守備においても足と肩を活かしてセンターライト両方で高いパフォーマンスを発揮
といった感じでしょうか。

このように岡林選手は走攻守の全てでチームを牽引した存在ということが分かりました。特に守備走塁の貢献は凄まじく、WAR選手の貢献度を示す総合指標では2位の6.8を記録(1位は村上宗隆選手の10.3)しています。

2.来季の更なる飛躍に向けて

ここまで岡林選手の2022年シーズンを振り返り、特に良いと思われる要素をピックアップして紹介してきました。しかし、逆に課題となる要素も見つかったので来季の更なる飛躍に向けて筆者なりに分析をしてみました。

打撃

まず打撃についてです。2022年の打撃を振り返った際に「申し分ない数字」と言いましたが、それはあくまで「高卒3年目、レギュラー1年目の選手」と見た場合の数字です。やはりホームランが0本、Iso長打率-打率.081でリーグでは下から5番目という数字は本来の岡林選手のポテンシャルを考えたら物足りないという人もいるかと思います。
というのも岡林選手の1年目の二軍成績は出塁率.333、長打率.346、OPS.679という数字でした。この成績に近いウエスタンリーグの選手だと、鈴木誠也選手(出塁率.326、長打率.367、OPS.693)がいます。また公式戦ではないものの、バンテリンドームナゴヤと同じ規格のナゴヤ球場で146キロのストレートを引っ張ってのホームランもありました。そして今季も度々見かけたフェンス付近まで飛ばすことの出来るパワーを考えると、まだまだ打撃に伸びしろがあり、本来の力を発揮しきれてないと見て良いでしょう。

アプローチの面から見てみるとより分かりやすくなると思うので見ていきます。

上の図は打球方向を引っ張り方向、センター、逆方向の3種類に分けた際の割合です。最も多いのがCent%センター方向で39.1%となっています。Pull%引っ張り方向は31.2でリーグでも下から6番目の数字でした。

次に打球の成分でも見てみましょう。上の図は打球の強さを三段階に分けたものであり、Hard%が強い打球、Soft%が弱い打球、Mid%がその中間となっています。最も多いのがMid%で50.7%とリーグで5番目になっている反面、Hard%は29.3%とキャリアでは最高の値ではあるものの、リーグでは下から2番目(1位は村上宗隆選手の48.5%)に位置しています。

これらの課題に対する解決策としては、打球の成分(ゴロ/フライ/ライナー)を変える、体重を増やすなどが考えられますが、岡林選手はキャリアを通して打球の成分がゴロ>フライであり簡単に変えるのが難しいことや、体重を増やすことで彼の持ち味であるスピードが失われることも考えられます。となるとやはりまずは強く振ることが求められます。強く振り引っ張った打球が増えてくれば自然と長打は増えてくるでしょう。

本人も「強く振る」ことを意識して秋季キャンプに臨んでいました。

また先ほどマルチ安打が非常に多いことを挙げましたが、反面ノーヒットの試合も47試合と多く、分かりやすく「打つ時は打つ、打たない時は打たない」といった感じの選手でもあったので、調子の波をなくしていくことも求められます。

また四球に関しても数が29、割合も4.8%と少ないことが挙げられます。これに関しては長打が増えてくれば相手が警戒して増えてくるのではないでしょうか。目指すところは「長打の打てるリードオフマン」であり、数値的な目標としてはまずOPS.800越えを目指して欲しいところです。

走塁

走塁に関して大きな課題は無いでしょう。ですが、ここは彼の強みでもあるので更なる盗塁技術の向上を目指して欲しいところです。具体的な目標としては「30盗塁以上&盗塁成功率90%越え」を目指して欲しいところです。
また打撃が関わる面も大きいと思いますが、彼の走力ならば上林誠知選手が持つシーズン三塁打記録14本越え、その先のシーズン記録となる18本越えも狙えるでしょう。

守備

守備に関しても大きな課題は見つかりません。
来季は新助っ人選手アキーノ加入の影響もあり、岡林選手はセンターでの起用が中心となることが明言されており、引き続き高いパフォーマンスを期待したいところです。

本人もセンターを守ることに強い自覚を持っているようです。

強いて守備の課題を挙げるとすればErrR失策抑止による貢献が-1.6でライトの規定守備イニング到達者両リーグトップ、失策数もリーグの外野手では最多の5を記録している部分でしょうか。これに関しては彼の守備範囲が広いことに起因するものと考えて良いでしょう。
守備範囲に関しては、外野守備の名手でもあり、2013~2022年にドラゴンズでコーチを務めた蔵本英智氏も「まだまだ広くなる」と語っています。

更に広くなるであろう守備範囲に加えて確実性が増せば、相手にとって厄介極まりないことは間違いありません。

課題をまとめると
・打撃では主に長打の増加が求められる
・走塁は強みなので更なるレベルアップ
・守備は範囲を広げ、確実性の向上
このような感じです。

岡林選手は現時点でも素晴らしい選手であることは間違いありませんが、同時に更なる進化の可能性も秘めています。"天才"の来季の活躍を期待しましょう!


■出典


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