見出し画像

「2」魔法のエリクサー

鎧を侍従に投げ渡し、彼は急いで向かった。周囲の騎士たちは驚いて彼を見つめた。
「一体、殿下は何をそんなに急いでいるんだ?」と彼らは問いかけた。しかし、それは理解できないことだった。待っている人がいるということだけがわかる。長い一日の後、彼は彼女に会いたくてたまらなかった。彼女の存在が彼に新たな生命を吹き込むのだ。桃の木の下で川の虹色の反射を描いている彼女を見つけると、心に平穏が訪れ、彼はほっと息をついた。
「ここにいたのか!」と彼は冗談めかして言った。「そんなに俺に会いたかったのか?」
彼女は驚いて彼を見つめ、そのからかうような笑顔を見ると、顔を背けて笑いをこらえた。彼は彼女の自然な反応に大きな笑顔を浮かべ、彼女の隣に座った。彼女は彼に絵を見せた。絵には走るウサギと、その後ろに心の形の線が描かれていた。彼はその絵をじっと見つめ、彼女の意図を考えた。
「君は、俺が君の元へ急いで来ることを言いたいのか?」
彼女は恥ずかしそうに顔を背け、唇を噛んだ。彼は軽く笑い、「いいよ、少しスピードを落とすよ」と言った。
「それで満足かい?」彼は穏やかに尋ねた。彼女はゆっくりと彼を見つめ、彼の無邪気な表情とリンゴのように赤い頬で、彼の質問にうなずいた。彼は思わず笑い、「安心して、俺はここにいるから」と言い、芝生に横たわった。
「見て、君のことは見えないようにするよ」と言って、腕で顔を覆った。彼女は微笑み、絵を描き続けた。

しばらくそのままの状態で、彼は静かに体を起こし、彼女の背後から絵を覗き込んだ。しかし、その息が彼女の首筋にかかり、彼の存在に気づいた彼女は絵を胸に押し当て、彼から距離を取った。その際、絵が彼女のドレスに付着し、彼は笑いを堪えきれず、声を上げて笑った。彼女は自分の状態に恥ずかしそうにしていた。

彼女は絵を悲しそうに見つめた。せっかくの絵が無駄になったと思ったのだ。しかし、彼が手を差し出し、謝罪の表情で言った。
「ごめんね、君の絵を台無しにしてしまった。どうかお詫びさせてくれないか?」
彼女は一瞬ためらったが、深いため息をついて決心し、彼の手を取って立ち上がった。彼は彼女を静かに引っ張り、まだ彼の手を握っていた。古い壁の後ろに隠れ、周囲を見渡した。
「急いで、誰にも見られないように」と彼はささやき、彼らは放置されたテントを通り抜けた。彼は別の壁に寄りかかり、道を確認している間、彼女は好奇心旺盛にテントを見つめた。彼は彼女を引き寄せ、広い花畑へと連れて行った。そこには色とりどりの花と咲き誇る木々が広がっていた。その楽園の中心には細い土の道があり、二人はその道を進んだ。彼女はその美しい景色に見とれ、色鮮やかな鳥が枝から枝へと飛び交い、蜂が花から花へと飛び回るのを見つめた。蝶もあちこちに舞い、木漏れ日が道にカラフルな光を投げかけ、まるで透明なカーテンのようだった。

ノルスはその美しさに心を奪われていたが、彼の声で現実に引き戻された。
「ここが目的地だ」と彼が言い、大きな小屋が現れた。色とりどりの景色の中にあり、その場所に相応しい風格を持っていた。彼らは少しの階段を上がり、木製のバルコニーに立った。彼がドアを開けると、豪華な木造のホールが現れた。中には現代的な家具が並んでいた。

彼は部屋の片隅のテーブルに向かい、重い荷物を取り除きながら、頭を掻いて言った。
「まだ片付いていないけど、ここで待っていてくれ」
彼女は彼が片付けたスペースに座り、その場所を見渡していた。彼は彼女が見つめるものを不思議そうに見てから、微笑んで言った。
「まず、汚れた服を替えよう」
彼女は自分のドレスを見て、そのことを思い出した。彼はすぐに2階へと上がり、姿を消した。彼女は不安な気持ちで座り込み、逃げ出したい衝動に駆られていた。

その時、女性の笑い声が聞こえ、彼と共に女性が階段を降りてきた。
「まあ、なんて散らかっているのかしら」
その女性は30代で、王室の侍女のような姿をしていた。ノルスはさらに身を縮めた。女性は彼女に近づき、優しく微笑んだ。
「心配しないで、愛しい子。直してあげるわ」
彼女はノルスの手を取り、
「さあ、一緒に新しいドレスを探しましょう」
ノルスはためらいながらも、彼の優しい声に勇気づけられた。
「安心して、彼女は君を助けるためにここにいるんだ」
彼の手を握りしめ、階段を上った。彼女が冗談を言うと、彼は微笑んで見送った。
「君も追いかけてくるんじゃないよ」
彼は笑い、ノルスは恥ずかしそうに顔を赤くして頭を下げた。

女性は木製のクローゼットの中の服を熱心に調べていた。ノルスは木製の椅子に座り、静かに部屋を見回していた。突然、女性が叫んだ。
「おお!これがいいんじゃないかしら」
彼女はノルスの絵の具で汚れたドレスを脱がせ、新しいドレスを着せた。その後、彼女の髪を整え始めたが、ノルスは考え事に沈んでいた。
「もしここが彼の住む場所なら、なぜ女性の服があるのだろう?」

その時、女性が話し始めた。
「ところで、私はララ。ここで侍女をしているの。ここは仕事がたくさんあって、自分のことを構う時間なんてないのよ。ああ、あなたもここで働いているみたいだけど、私たちの服装とは違うわね。もしかして、温室で働いているの?」
二人はお互いの顔を見つめ、しばし沈黙が続いた。その後、ララは軽く笑って言った。
「温室はまるでハチの巣のようだって聞いたわ。あそこにはどんな秘密が隠されているのか、誰も知らないのよ」
ララは夢見るように続けた。
「いつかその中で何が行われているのか知りたいわ」

ノルスは緊張して唾を飲み込んだ。ララは笑いながら言った。
「心配しないで、その場所のことを聞くつもりはないわ」
ララはノルスの髪を整え終わり、鏡を持ってきて彼女に渡した。
「見て、まるでお姫様みたいだわ」

ノルスは少し不機嫌そうに微笑み、鏡をララに返してから部屋を出た。ララは彼女が出て行くのを見送り、優しい笑顔を浮かべた。

ノルスが階段を降りると、誰もいなかった。ただ、白いキャンバスと絵を描く道具がテーブルに置かれていた。彼女はそれを見つめ、困惑した。キャンバスの横にあるメモには、可愛らしい落書きが描かれていた。彼女は道具を見つめ、悩んだ。
「これを持って行ってもいいのかしら?」
彼女は再び考えた。
「でも、ここに置いていくのもよくないわよね?」

ノルスは目を閉じ、深く息を吸い込んでから、キャンバスと絵の道具を手に取り、部屋を出た。彼は階段の陰から彼女を見守り、静かに微笑んでいた。ノルスは小屋を見つめ、名残惜しそうにしてから、温室に向かって急いだ。きっと今頃、皆が彼女を心配しているはずだ。

つつき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?