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【「嗜む」のすすめ】物語の母系に焦がれ本を嗜む

酒井貴弘さん撮影

私達が密かに大切にしているものたち。

確かにあるのに。

指差すことができない。

それらは、目に見えるものばかりではなくて。

それらを、ひとつずつ読み解き。

それらを、丁寧に表わしていく。

そうして出来た言葉の集積を嗜む。




■テキスト

「[増補版]知の編集工学」(朝日文庫)松岡正剛(著)

本書刊行時の時代背景と執筆時の思い、そして、今回、増補した制作経緯を明かし、あらためて「知の編集工学」で問おうとしたメッセージを、以下の5つの視点で解説しています。

1.「世界」と「自己」をつなげる

2.さまざまな編集技法を駆使する

3.編集的世界観をもちつづける

4.世の中の価値観を相対的に編み直す

5.物語編集力を活用する

これらの視点の大元には、「生命に学ぶ」「歴史を展く」「文化と遊ぶ」という基本姿勢があることも、AI時代の今こそ見直すべきかもしれません。

■物語の母系

物語には型があり、

「物語の母系」

とか

「ナラティブ・マザー」

と呼ぶそうです。

例えば、英雄伝説は、出発、試練、帰還という三段階の物語構造を持っています。

世界の神話や民族の歴史(古事記、旧約聖書など)が共通の型を共有していることは知られています。

ひょっとすると私達の頭の中に、そのような物語構造が潜んでいるということかもしれません。

ある種の物語の母型が、私達の編集感覚の根本に関与しているなら、物語の母型構造こそ、編集工学の根幹ではないだろうかと推定されます。

鋳型、原型が、次々とヴァージョンを生み出しているということだろうと考えられます。

編集工学は、ある段階から、急に「物語学」に興味をもち、1994年には、世界物語学会も発足したそうです。

ユング心理学は、病症を神話の型に求める心理療法「箱庭療法」を開発しました。

日本では、河合隼雄さんの「癒しとしての物語」の研究が有名です。

世界で物語構造の共有性があることが、文化の伝達や移植、通信が可能となる人類の普遍的特性であると云う人がいます。

例えば、物語が、かなり壮大な役割を担ってきたハイパーメディアであったことは間違いないと思われます。

ヘイドン・ホワイトは、

「物語は文化間の通信が可能になる人類の普遍的特性である」

とさえ主張しています。

「メタヒストリー 一九世紀ヨーロッパにおける歴史的想像力」ヘイドン・ホワイト(著)岩崎稔(監訳)

「物語と歴史」ヘイドン ホワイト(著)平凡社(編)海老根宏/原田大介(訳)

私達は、結局、頭の中に定着したいくつかの物語回路を組み合わせて編集することで、必要に応じたアウトプットとしての物語を作っています。

物語構造や物語回路が、日常の生活の中でさえ作用していることから、次のようなことを読み取ることができます。

物語のマザーは、今なお脈々として生きていて、所謂、物語の中だけではなく、心の奥底にある事のマザーパターンとして現れてくる。

マザーは、意外にも単純な構造でできています。

マザーから、言語体系や国語が形成されていきました。

特定のマザー、例えば、川による2つの世界の分断のマザーなら、そのマザーを物語るために、「川」や「分ける」という感覚を表す語彙や表現が整備されていったそうです。

このように、マザーは、単純な構造を起点に作られていますが、今までの分析では、その種類は、そう多くないとのこと。

「マザー・十数種×物語の筋・5型×物語の要素・5つ」で、大体のストーリーは、分類する事が、できるそうです。

マザー=物語の原型は、境界マザー、往還マザー、応答マザー、遺失マザーなど、十数種類。

物語の筋=マザーの動き方は、同時型、遅延型、痕跡型、相似型、階層型など。

物語の要素=文字通り、ワールド・モデル(世界構造)、ストーリー(スクリプト、プロット)、シーン(場面)、キャラクター(登場人物)、ナレーター(語り手)の5つで、特に、「ナレーター」が、物語の本質を理解するために重要です。

同じ物語を、

「誰が、どのように」

物語るのかによって、その見え方が変わってくるのが、面白い点だと思います。

「ストーリー ロバート・マッキーが教える物語の基本と原則」ロバート・マッキー(著)越前敏弥(訳)

■9夜90冊目

2024年4月18日から、適宜、1夜10冊の本を選別して、その本達に肖り、倣うことで、知文(考えや事柄を他に知らせるための書面)を実践するための参考図書として、紹介させて頂きますね(^^)

みなさんにとっても、それぞれが恋い焦がれ、貪り、血肉とした夜があると思います。

どんな夜を持ち込んで、その中から、どんな夜を選んだのか。

そして、私達は、何に、肖り、倣おうととしているのか。

その様な稽古の稽古たる所以となり得る本に出会うことは、とても面白い夜を体験させてくれると、そう考えています。

さてと、今日は、どれを読もうかなんて。

武道や茶道の稽古のように装いを整えて。

振る舞いを変え。

居ずまいから見直して。

好きなことに没入する「読書の稽古」。

稽古の字義は、古に稽えること。

古典に還れという意味ではなくて、「古」そのものに学び、そのプロセスを習熟することを指す。

西平直著「世阿弥の稽古哲学」

自分と向き合う時間に浸る「ヒタ活」(^^)

さて、今宵のお稽古で、嗜む本のお品書きは・・・

【「嗜む」のすすめ】物語の母系に焦がれ本を嗜む

「医学書院 2007」

「大書源」

「いっぱいたべてげんきなうんち」(きむらゆういちのだんだんしかけえほんシリーズ) きむら ゆういち(著)みやもと つよし(イラスト)

「南方熊楠 菌類図譜」萩原博光(著)

「栄養・食糧学用語辞典」日本栄養・食糧学会(編著)

「こねずみチッチのひとりでおつかい」(わくわくメルヘンシリーズ)末崎茂樹(著)

「てんじつきさわるえほんシリーズ きかんしゃトーマスなかまがいっぱい」ヒット・エンタティンメント(監修)

「漂流教室 楳図PERFECTION! 全3巻完結」(ビッグコミックススペシャル)楳図かずお(著)

「神なるオオカミ・上」姜戎(著)唐亜明/関野喜久子(訳)

「神なるオオカミ 下」姜戎(著)唐亜明/関野喜久子(訳)

「神なるオオカミ 小説版~大草原のちいさなオオカミ~」姜戎(著)唐亜明/関野喜久子(訳)

「アンコールの仏像」石澤良昭(著)

■(参考記事)松岡正剛の千夜千冊

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