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【令和俳句叢書(その1)】胡蝶の夢


藤貴広さん撮影

夢見鳥とは、もうひとつの異名「夢虫」と併せて、その故事から生まれた蝶の異名です。

夢見月とは、桜にちなんだ異称です。

「夢」に「蝶」と言えば、老荘思想で知られる荘子の「胡蝶の夢」が思い浮かびます。

荘子が夢の中で胡蝶になります。

中国で胡蝶は、長寿のシンボルであり、世界的にも、

「魂」

「再生」

「命」

の象徴とされています。

「荘子」斉物論篇には、「此之謂物化」という言葉もあり、「物化」は、「万物が変化すること」を意味します。

このことから、折角、長寿や再生を意味する蝶になれる夢を見たのに、夢が覚めてしまったことで、人生のはかなさを表すようになったのかもしれませんね。

けれど、夢が現実になることは、決してありえないことではありません。

夢をみることは、夢というスパイスを、日々の毎日に溶かした時間を生きていくことなのかもしれませんね(^^)

だから、夢は叶うほうがもちろんいいんだろうけど、国語辞典で調べてみると、夢は叶うことを前提にした言葉であり、だったら、抱きしめた夢の数だけ、毎日は色鮮やかになって気がしてきませんか。

そんな風に考えてみれば、心に抱きしめている夢の数のほうが、ずっとずっと大事なんだって思います。

High Speed Boyz「叶えたい夢がある~4EVER BOYZ AND GIRLZ SPIRIT~」

「世の中は 夢かうつつか うつつとも 夢とも知らず ありてなければ」
(よみ人知らず「古今和歌集」より)

「古今和歌集」(岩波文庫)佐伯梅友(校注)

あるようでない現実の世界。

でもね。

人間には、一度、思いついた考えを、考え直すという素晴らしい能力があります。

「違う考え方もできるのではないか?」

「他にいい考えはないだろうか?」

「なりたい自分なら?」

「今できる幸せになる考え方は?」

などと、他の考えを探すこともできるのです。

そして、いくつかの考えの中から、好ましい考えを、選択することもできるのです。

少なくとも、

「こんなことを考えるのはやめよう」

「この事を(これ以上)考えるのはよそう」

などと、思いついた考えを、ストップしたり、リスタートしてみたり、カスタマイズしてみたりと、色んな対応をすることも可能なのです。

たった一度きりの、はかない夢のような一生だからこそ、人は夢を見るのかもしれません。

自分の心(感情・望み・思考)を、うまくコントロールできるようになれば、それだけ、幸せに暮らせるようになれるのではないでしょうか。

どんな方法でも

一休みしながら

前に進んで

寄り道しつつ

危なくなったら

戻って

また

前に進めば

道は

そのうち

ひらけていくのだと

の~んびり

いきますか(^^)

【令和俳句叢書(その1)】

大石悦子句集『百囀』

「画眉鳥を加へ百囀ととのひぬ」
◆自選十五句より
天地を束ねし結柳かな
一人居る五日となれば糟湯酒
負暄してうまうま老いぬわれながら
硯北といふみどりさすひとところ
オリオンに一献シリウスと一献
鴛鴦の絢爛と流れゆきたる
根のもの厚く切つたる雑煮かな
春の山とは父もゐき母もゐき
擬態して自切して竹節虫枯る
蕪村忌の青楼の黒框かな
画眉鳥を加へ百囀ととのひぬ

西宮舞句集『鼓動』

「日のさして後ろ姿の夕時雨」
◆片山由美子選
七夕や磨れば一体墨すずり
驚きの手足のままに鵙の贄
月光や白さざんくわのこぼれ継ぎ
雨音のごとき川音鮎下る
凍鶴の時を封じてゐたりけり
春愁や写真のなかのひと昔
綿虫やこの世にうかと紛れ込み
しろがねの鈴振るごとく山清水
時惜しむごとくゆつくり散るさくら
美しき空取り戻す白雨かな
夫に息吹きかけてゐる雪女郎
終の息冬青空に吸はれゆき

木暮陶句郎句集『薫陶』

「水と土ぶつけて轆轤はじめかな」
◆自選十五句
この窓の四半世紀や初景色
水と土ぶつけて轆轤はじめかな
窯口に人日の闇ありにけり
体ごと振るフライパン春隣
梅くぐる君は光となりながら
太陽の寿命を言へば亀鳴けり
心とはすぐ染まるもの桜の夜
水音の透けてをりたる谷若葉
航跡といふさよならやサングラス
夏帯を鏡の中に軋ませて
野分あと筆圧強き手紙来る
両の手は太古の器水の秋
目の前の未来信じてばつた跳ぶ
虹色の鳩降り立てる初時雨
銃口の最も暗き狩の森

酒井弘司句集『地気』

「戦後遠しどくだみの線路跨ぐとき」
◆自選十五句
天上のシリウス帰途の見えぬ旅
白いかもめ八月は歩いていった
揚羽きて水の話をしてゆけり
群れて立たず一撃ひびく朝の蟬
遠ざかる櫂の音いくつ天の川
きぶしの黄よ兜太先生の返歌
野の花のようになれたらまた一歩
春立てりあしたゴドーに会えますか
異星人まぎれていたり桜の夜
戦後遠しどくだみの線路跨ぐとき
小鳥くる大きな涙ひとつ連れ
みな土に還ってゆけり草は実に
九月一日風に立ってる小さな子
つくつくぼうしいのち惜しめということか
十二月木は立ったまま星に会う

南うみを句集『凡海』

「歯朶刈るやこほりの雫うち払ひ」
◆自選十五句より
鮎苗に雪の匂ひのかすかなる
干し若布にぎり砕きて飯のうへ
三鬼忌の草餅めうにねばりつく
呑まれゆく蛙や脚を真つ直ぐに
青蘆をゆさぶり来る投網打
蛍見のなまぬるき顔ひと撫です
祭来と鯖の頭を刎ねにけり
くちなはの水のごとくに岩すべる
地蔵会の抱き回さるる赤子かな
満月へぬた場の猪の泥しぶき

秦夕美句集『金の輪』

「さみしいといへぬさみしさ花石榴」
◆自選十五句
夢の字は艸や夏嵐
曇天を流るゝ時間ちやんちやんこ
その声はたしかに異界黄水仙
不死鳥の頁に付箋大夕焼
しらみゆくこの世の丈の火吹竹
正夢に赤のきはだつ寒さかな
青銅のキリストおはす雪の闇
金の輪をくゞる柩や星涼し
黒猫のすゞしくあゆむ奈落かな
ありふれた雨です爆心地の四葩
八月や息するうちを人といふ
さみしいといへぬさみしさ花石榴
夜は雲のながれやまざり遠蛙
その時は目をつむりませう玉子酒
胎内や渦まき昏るゝ飛花落花

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