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【暦のことば】「今日の菊」「新酒」

九月九日。

九の重なる重陽は、菊の節句といわれていますね。

現在、中国から伝わった五節句(※)のうちでは、

※印:

あまり、意識されない日になってしまっていますが、

「菊枕」

「山田松香木店」のレシピで菊枕作り

「菊の酒」

等、菊づくしで祝うことには、穏やかな楽しさがあります(^^)

「お立ちやるかお立ちやれ新酒菊の花」

そう言えば、明治28年、正岡子規が夏目漱石と過ごした愚陀仏庵を旅たつときに詠んだ句が上の句です。

言葉書きに、

「送子規」

とあります。

新酒に菊の花といえば

「菊の酒」(※)

のことで、重陽の節句に呑む菊の花を浸した日本酒のことです。

※印:

9月9日は「重陽の節句」。菊酒・菊湯・栗ご飯、重陽の節句の風習と、菊の花にまつわることを調べてみたhttps://www.homes.co.jp/cont/press/reform/reform_01192/

「菊の酒」は、盃に菊の花びらを浮かべて菊の香りを楽しむ古くからの習わしで、厄除けや長寿を祈願する意味がありました。

夏目漱石は、下戸でありながら、他にも「菊の酒」の句を詠んでおり、

「憂ひあらば此酒に酔へ菊の主」

「黄菊白菊酒中の天地貧ならず」

「兵ものに酒ふるまはん菊の花」

「菊の香や晋の高士は酒が好き」

「飲む事一斗白菊折って舞はん哉」

酒の句を、意外とたくさん詠んでいて、「新酒」の季語は、秋になります。

「新酒売る家ありて茸の名所哉御」

「名残の新酒とならば戴かん」

「ある時は新酒に酔て悔多き」

「落ち合ひて新酒に名乗る医者易者」

「憂いあり新酒の酔に托すべく」

「頓首して新酒門内に許されず」

「酔過ぎて新酒の色や虚子の顔」

そして、正岡子規も、「重陽」や「菊の花」を詠んでいましたね。

「お菊見や酒をたまはる供の者」

「たまはるや大盃の菊の酒」

「雨の菊酒酌む門の馬もなし」

「喝士殿に盃さすや菊の酒」

「記者會す天長節の菊の酒」

「升のみの酒の雫や菊の花」

「嚊殿に盃さすや菊の酒」

「喝士殿に盃さすや菊の酒」

「記者會す天長節の菊の酒」

「升のみの酒の雫や菊の花」

「菊の宴に菊の蒔繪そ心なき」

「お菊見や酒をたまはる供の者」

「菊の宴に菊の蒔繪そ心なき」

なお、重陽の句として、江戸時代の俳人・召波の句、

「人心しづかに菊の節句かな」

は、この一日の美質を、上手く言い当てていますね。

また、現代俳句の中においては、青木昭子さんの『秋袷』の中に、

「如意棒にほつほつほつとおひさまが置かれ列島けふ菊日和」

とあり、なんだか気分の良い秋の訪れを感じさせてくれますよね(^^♪

みなさんにとって、

「今日の菊」

は、どんな一日でしたか?

重陽の日の主役は、私達ではなく、菊の花。

菊は、墓前に手向けたり、刺し身などにあわせて食べたりもする、日常的な花。

そうであるかと思えば、菊花紋章のように、デザインとして表舞台に立つこともあり、年間を通して目にする花。

でも、菊といえば、やっぱり、秋ですよね。

庭や野にしたたかに咲くキク科の花々は、道ゆく私たちを励ましてくれます。

華やかさ。

強さ。

そして、一抹の淋しさ。

それらが、混在して、秋の日差しに映え、切実な印象をもたらしてくれるのでしょうね(^^)

季語「今日の菊」とは、

「菊の節句」

である

「その日の菊」

のことを表しているのですが、

「今日この日のもの」

という感慨は、今この瞬間を、

「味わうこと(セイバリング)」

でもあって、暑い夏を乗り越えた秋ならではの気分なのかもしれませんね(^^♪

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