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「口うるさい社員は宝物」、大事にしないと事業の成功が難しくなります

社員の中に、ことあるごとに異を唱えたり、屁理屈、口煩いことを言う人がいます。

マネジメントする立場であれば、正直に言えば

「鬱陶しいなぁ。。。四の五の言わず黙って俺の言うことを聞け!」

と思うのですが、そういうメンバーの中に核心を突く直言をしてくれる人がいるので、疎かには扱えません。

今日は、私が間近で見たあるワンマン社長のお話をしたいと思います。

1.ワンマン社長の傲慢(ゴウマン)経営


これからお話することは、30年前にM社を担当したときの話です。

M社はスポーツ用アフターマーケット向の自動車部品メーカーで、自社で企画した様々な部品を販売する会社でした。

はじめて訪問した時は、僅か従業員3人の地方の小さな整備工場でした。

しかし、社長がニッチ市場に火を付けて、5年後には年商数十億企業に急成長し、業界で注目されるようになりました。

当時、的を得た経営で順調に業績を上げていたので、社長に経営センスがあったことは間違いありません。

しかし突然支店を増やしたり、社内のムードを変える言って刀匠に刀を創られて社長室に飾ったり(その筋の企業ではありません! 笑)、社員が驚くようなこともしていました。

ある日M社に訪問すると、見知らぬ方が経理部に座り、黙々と帳簿作業されていたので挨拶すると、

すっと立って

「こんにちは、経理部に配属になりました〇〇と申します。宜しくお願い致します。」

と物腰柔らかく簡潔な対応を見て、実直な方とのと印象を持ったことを覚えています。

後で分かったのですが、その方は元地方銀行の支店長で、リタイヤ後に経理部長としてヘッドハンティングされた方と聞き、「あぁ なるほどなぁ」と納得しました。

2.ワンマン社長が怒られた日


ある日、M社に訪問すると、社長が声を掛けてきました

M社長
「飯田君。ちょっと付き合ってくれ」

飯田
「どこ行くんですか?

M社長
「ホンダのディーラーさ」

飯田
「え?! ホンダ車買うんですか? すでに凄い車を何台も持ってるじゃないですか? まだ欲しいんですか?」

M社長
「NSXって車が発売されることは知ってるだろう?」
「あれは、本田宗一郎イズムが詰まった車だ」
「自動車部品を企画している以上、モノづくりの魂を学ばなければいけないんだ」
「だからNSXを買うんだ」

飯田
「はぁ。。。そうですか。。。」

当時NSXの価格は800万円で、これはメルセデスE500と同じ価格でした。

いくら社長とは言え、こんな高級車を勝手に発注掛けちゃってもいいのかなぁ。。。なんて思いつつ、ディーラーで発注を終えて一緒にM社に戻りました。

社長は、経理部長にNSXを発注した旨を事後報告した瞬間、いままで温厚だった経理部長がみるみる顔色が変わっていきました。

経理部長
モノづくりの魂? 結構じゃないですか!」
「当社はモノづくりの会社ですからね」
「しかし社長。モノづくりにはカネが必要です。」
「当社のキャッシュフローから言えば、この車は分不相応です。」
「つまり身の丈に合わない車に投資ですか?」
「いかがなものでしょうか?」

社長
「絶句。。。。。」
「しかし、この車は当社のブランディングにも、社員のモチベーションにも有効なシンボルになる」
「だから発注した。キャンセルはしない」

経理部長
「分かりました。事業に必要だとのご判断であれば、やり繰りします」
「では社長の報酬は〇〇%カット、経費は50%カットをご提案申しあげます。ご了承下さいますか?」

素晴らしい経理部長です。

こういう発言をトップにするのは、かなり勇気がいることですが、真実に勝る物はありません。

3.後日談

暫くして社長に会ったとき、こんなことを言われました

「飯田君。経理部長は我が社の宝物だ。」
「あの人が居る限り、この会社は安心だ」

この言葉が出る経営者は立派です。

っがしかし。。。この社長は相変わらずワンマンぶりは治りませんでしたが、事あるごとに経理部長にお説教されて、間違った経営をせずに済んでいました。

こういう人材をそばに置くというのも、センスと才覚なんですね。

皆さんは、そういうメンバーが近くにいらっしゃるでしょうか?






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