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[SUZUKI カプチーノ]について

スズキより、1991~1997年間に販売された、二人乗りの軽自動車。
フロント部にエンジンを縦置きで搭載しリア側で駆動させる、軽自動車としては数少ないFRレイアウトのオープン2シーターとなっている。
モデルとしては、販売終了までに1度MC(EA-21R型 1995年~)を受けている。MCの際の変更点としては、アルミ製EG(K6A型)や軽量ホイールが採用されている。

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外観はFRの特徴を生かした古典的なロングノーズ・ショートデッキを採用しており、屋根の開閉(脱着)が出来るハードトップのオープンカーとなっている。開閉機構は、他に例のない4WAY方式が採用されている。
この機構は、3分割ルーフと格納式リアウィンドウから成り立っており、④.Closed状態[ハードトップ] ⇒
③.ルーフの左右を取り外した[Tバールーフ] ⇒
②.中央を取り外した[タルガトップ] ⇒
①.リアを格納した[フルオープン]
となっている。
取り外したルーフは重ねてリアトランクに収容させることで格納し、リアウィンドウ部は下部に押し下げることで、リアガーニッシュへ廻りこむように格納されるようになっている。

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外装は、軽量化の為ボンネット・ルーフ・下部フェンダー・ホイールなどにアルミ製が採用されている。
ボディは、センターコンソール(フロアトンネル)及びサイドシルを太くすることによりオープンカーとしての剛性を確保している。
フロント51対リア49という重量配分を実現する為、EGを前輪車軸(フロントアスクル)より後方に配置した、フロントミッドシップレイアウトとなっている。


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EGは、アルトワークス(3代目MC後-4代目)用に開発されたDOHC三気筒660ccターボEGが搭載されている。
前期型(EA-11R)には、F6A型が採用されている。このEGは軽自動車の新規格化に合わせて、基となるF5Bのストロークを延ばすことで660ccの排気量を実現している。トルクは最大8.7kgmを4000rpmで発生させる。
後期型(EA-21R)は、軽自動車では初となるオールアルミ製EG、K6A型が採用されている。F6Aとの主な差はオールアルミ合金製・タイミングチェーン駆動となる。トルクは10.5kgf·m/3,500rpmを発生させている。後期型では、オールアルミ型EG・ホイールの軽量化などにより、車重は前期の700kgから-10kgの690kgと軽量化されている。

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サスペンションは、縦置EGにより出来たスペースを利用することで、フロントを含む4輪ダブルウィッシュボーン式が採用されている。
ブレーキは、軽自動車では当時珍しい4輪ディスク(フロントはベンチレーテッドディスク)を採用している。
トランスミッションは、5速MTに、後期のみ3ATが追加されている。
ABSとLSDに関しては、基本は非設定ではあるが、オプションによる追加設定が選択できるようになっていた。パワーステアリングの設定は、限定車(リミテッド2,3)や3AT車に電動(3は速感応式)式が設定されている。しかし、パワステ車ではハンドルのチルト・テレスコ機能が省略されていたりする。


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内装では、インパネ周りは古風な水平基調となっている。シートはバケットタイプが採用されている。前期は合皮が用いられているが、後期では撥水パブリック仕様シートとなっており、トランクオープナーが装着されている。
メーター部では、前期にのみターボランプが設定されている。(後期には、ターボに関する計器は装着されていない)

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バブル期に販売されたBEAT(ホンダ)・AZ-1(マツダ)と合わせて「平成のABCトリオ」と呼ばれていたこのクルマは、現在のマーケットでは考えられないほどの専用設計・部品により構成されている。贅沢なサスペンション構造・4輪ディスクブレーキ・専用設計され、流用されることのないフレーム・重量軽減の為のアルミボディの一部採用など、ライトウェイトスポーツとして真面目に開発されていたことが伺える。

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ハンドリングは、クィックではないがダイレクト感があり、700(690)kgの車重と形式からブレーキ・コーナリング・加速性能は十分以上にある。
実際このクルマは、運転がとても楽しい。
某漫画にも登場したことから、ドリフトをイメージされることがあるが、LSDはオプションでありトレッド幅が狭いことから、FR車ではあるがドリフトコントロールしやすいクルマではない。
また、MC後に採用されたK6Aエンジンは、当時の新開発でありトラブルが多いとされているが、トルクや車重から後期のほうが乗りやすくなっている。

「ABCトリオ」の全てに当てはまる構造上の問題点として、サスペンションのストローク不足があり、ウレタン樹脂シートと相まって乗り心地が良いとは言えない。このことにより、街中のギャップで頻繁にダンプすることとなる。
また、軽自動車であるので他車の軽自動車と同じくホイールベースは短く、高速域は不得意である。特に操舵のダイレクトさは、不利となりえる部分(反応し過ぎる)である。

このクルマの外観であるロングノーズから、整備性が良いと思われがちだが、実際は極悪である。特にボンネットのEG廻りの作業スペースは無きに等しい。しかも、パーツがアッセンブリー単位しかないことが多く、修理代は高い。

ビート・AZ-1と比べて、FRとしてのセンターコンソール部が存在することにより、車内空間が狭いと評されることがあるが、ロングノーズであることやEGの搭載位置が前よりである為、足下にゆとりがあり、運転操作において不満を感じることはなく、ドライバーの空間は確保されている。天井も、身長180cmぐらいまでは問題なく空間が確保されている。ただし、185cm以上は注意が必要である。標準では、天井に接触してしまうことになるだろう。

このクルマの一番の問題点として、ボディに対する問題があげられる。スズキ車らしく防錆処理が不十分であるにも関わらず、排水経路がボディ内部のバルクヘッド・サイドシルやフェンダーアーチを通過している上、詰まりやすく錆びやすい。さらにネジ・ボルトもメッキが薄い安物を使っているのか大体サビている。年式が嵩むこのクルマでは、大抵の個体が直面している共通の問題である。

ボディの剛性は決して高くなく、天井ルーフパネルの1つでも外すと、誰でもわかるほど剛性不足を感じる。しかもルーフパネルをトランクに収めると、ルーフパネルの重さにより、リアにトラクションがかかるので、軽快になったと感じるのと同時に不安を感じるほど、ボディの剛性は低下してしまう。
ルーフパネルをトランクに格納する為、トランクの荷物とルーフはトレードオフとなっている。


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終了までの7年間で約26000台が販売されたこのクルマを評すると、
・軽自動車なので、グランドツアラー的な要素は皆無に等しく、絶対的な「速さ」はない。
・何かを「運ぶ」機能はこのクルマには望めなく、FRの2人乗り軽自動車であるこのクルマは多数でレジャーや旅行などの、このクルマを用いて何かをすることには向いていない。
・主役はクルマであり、「クルマに自分を合わせる」必要がある。
しかし、普段の道を走るのはとても楽しい。ツイスティな峠道を、自分のペースで走行するだけでも、とてもエキサイティングである。

自動車を用いる目的は数多くあるが、普段の運転を楽しくしてくれるこのクルマのことを、個人的には大変気に入っている。


・・・じつは自家用車だったりします。

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