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バットマン:エゴ ネタバレあり感想・あらすじ解説

私の名が”恐怖”だからだ

私はお前の中にいる


バットマン翻訳コミックの感想第9回は『バットマン:エゴ』です。

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概要

本作は作者であるダーウィン・クックのバットマン関連の短編集となっています。

付属の解説書によるとダーウィン・クックは元々はデザイナーとしてバットマン等のテレビアニメの業務に関わり、その後コミック作家としてデビューをされたとのことです。

そのデビュー作が本作の表題にもなっている『バットマン:エゴ』です。

本作は長くて90ページ程、短くて数ページで終わる短編が8編収録されていてカバーイラストアートも多く収録されています。

ちなみに一番長い話はキャットウーマンが主役の話です。次に長いのが『バットマン:エゴ』です。

『バットマン:エゴ』はマット・リーヴス監督の映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』のインスピレーション元となったとのことで話題にもなりました。

ダーウィン・クックは元々アニメ関係のデザイナーということもありコミックのアートもアニメーション風で癖が無くて読みやすいと思います。

ただ各短編はある程度バットマンを知っている人向けの話だと思いますので初心者やいままで全くバットマンを読んだことが無い人にはおすすめとは言えません。
コミックを読んだことが無くてもバットマンの映画をある程度見てバットマンが好きな人には良いと思います。

余談ですがアメコミでは冒頭に作者がバットマンを語ったり他の作家が作者について語ることがあるのですが本作もアマンダ・コナーというという作家が本作作者のダーウィン・クックについて語られているのですが作家の人柄やプライベートが垣間見えて結構好きです。

あとがきにはダーウィン・クック本人による各短編作品の解説もあります。

あらすじ

ジョーカーの手下のチンピラを追い詰めたバットマン。しかし、その男は自ら命を絶とうとし、衝撃的な理由を明かす。彼はジョーカーを裏切って金を奪ったが、それが発覚してしまい、ジョーカーに殺される前にと自分の妻子を殺害したというのだ。罪なき親子を救えなかった罪悪感に苛まれたバットマンは、「復讐に燃えるバットマン」と「理性的なブルース・ウェイン」に人格が分裂してしまった。2016年に肺がんでこの世を去った天才コミッククリエイター、ダーウィン・クックが描く衝撃の問題作『バットマン:エゴ』を含む、ファン待望の短編集!

バットマン:エゴ | ShoPro Books(小学館集英社プロダクション)|アメコミ(DC・マーベル)他

本作は短編集なので各話ごとにあらすじを書きます。

バットマン:エゴ

おおまかなあらすじは上に書いてある通りです。
自身の行動により起きた悲劇の罪に苛まれたバットマンの人格が分裂して自問自答をする話です。
バットマンのこれまでの活動を両親の死から振り返る面も有りゴードン、ロビン、ジョーカー、トゥーフェイス等についてもバットマンの視点から語られます。
ある意味バットマンの最終回のような話だなと思いました。

ここに怪物あり

『バットマン:ブラック&ホワイト』という白黒カラーのシリーズで描かれた短編。
マダムXという女性ヴィランとバットマンの対決が描かれる。
8ページのみ。

キャットウーマン:セリナーズ・ビッグ・ストア

キャットウーマン(セリーナ・カイル)が主人公の短編。
キャットウーマンがマフィアから大金を盗む為に仲間を集めて計画をして実行する話。
収録されてる話の中では約90ページと一番長い。
バットマンは回想で1コマしか登場しない。

モニュメント

こちらも『バットマン:ブラック&ホワイト』のシリーズで描かれた短編。
ゴッサムに建てられたバットマンの巨大モニュメントを巡る話。
短編アニメのようなノリのお話。

デート・ナイト

バットマンとキャットウーマンが夜のゴッサムを2人で駆けまわる話。

デジャ・ヴ

目の前でかつてのバットマンと同じように目の前で両親を犯罪者に殺される少年を目撃したバットマンが犯罪者達を追う話。
追い詰められて恐怖をしていく犯罪者の描写が良いです。

バットマン・スピリット:クライム・コンベンション

スピリットという別のアメコミ作品とのコラボの短編。
バットマンの主要メンバーと多数のヴィランとスピリットの主要メンバーとヴィランが登場する。
スーパーマンもちょっとだけ出る。

キリング・タイム

ハーレイ・クインが主人公の短編。
白髪の生えたハーレイ・クインが年を超さないように奔走する話。
タイトルに反してコメディタッチな作品(ハーレイ・クインは狂ってるけど)。
バットマンは登場しない。

解説・感想(ネタバレ注意)











バットマン:エゴ

登場人物紹介

バットマン(ブルース・ウェイン)

主人公。
ゴッサムシティの大富豪ブルース・ウェインがバットマンとして犯罪者を取り締まっている。
ヴィラン達の凶悪犯罪が続き死に慣れてきているのを感じている。
ある事件をきっかけに自身の内面の闇の人格と対峙をすることになる。

バスター・スニッブズ

ジョーカーの部下。
バットマンに脅されてジョーカーの居場所を吐き、さらにジョーカーの金を奪ったがそれがジョーカーに知られたことで恐怖から自身の手で妻子を殺しバットマンの目の前で自殺をした。

解説

あらすじの通り冒頭でバットマンの目の前でジョーカーの部下が自殺をします。
原因はバットマンに脅されてジョーカーの居場所を吐きジョーカーの金を奪って逃げようとしたことがジョーカーにバレたからなので正直自業自得に近いのですがバットマンはこの事件で深く心に傷を負います。
いくらバットマンとして活動してもヴィランの犯罪は無くならず、バットマンの不殺主義もあり捕まえても脱獄を繰り返している現状にバットマンの心はすり減っているのでした。
さらにヒューゴ・ストレンジや市長、バスターからバットマンが狂人に見られていることにも追い詰められます。
ウェイン邸に戻ったバットマンは両親の遺影の前で嗚咽を漏らしながらバスターの話を両親に語り、これ以上の活動は無理だと悟ります。

ここでバットマンが解放感を感じるのがリアルですね。

しかしその安らぎもすぐに終わりました。
大画面のモニターに凶悪そうな顔をしたバットマンが映りブルース・ウェインに語り掛けてきたのでした。
ブルースはすぐにモニターに映るバットマンが自分自身だと確信をするのでした。

バスターとバスターの家族の死を責めるようなバットマンに追い込まれブルースはモニターを消します。
スケアクロウの恐怖ガスのトリックや失血による症状を疑いますがバットマンは直接ブルースの前に現れました。

バットマンは昔からブルースと一緒に居たと言います。
最初に会ったのは父であるトーマス・ウェインの患者の死を目の当たりにした日の夜。
そしてブルースの両親の死でその存在は爆発的に拡大したとのことです。

両親の死の後、バットマンは常にブルースに寄り添い続けました。
そして犯罪者を狩る者として活動を始め、バットマンとなることを決めた時にバットマンとブルースは一つになったと言います。

ここのバットマンになることを決めたシーンは『バットマン:イヤーワン』からの引用ですね。
コウモリがガラスを破って部屋に入ってきたシーンが描かれています。

私は不可避の存在だった

それでもお前は私の名を言えずにいた


お前は私をバットマンと呼んだ

だがお前が私から逃れられない本当の理由は・・・

私の名が”恐怖”だからだ
私はお前の中にいる


そしてバットマンとなったブルースはゴッサムの犯罪者を狩り、やがて仲間を見つけます。
バットマンは承認や仲間を求めるのは弱い心と言います。
ブルースはゴードンやバットシグナルは有益な存在だと反論しますがバットマンはゴードンではなくロビンのことだと言います。

そしてバットマンの活動はヴィラン達の存在を呼び起こし、特にジョーカーは誰よりも危険でジョーカーの狂気を終わらせるにはジョーカーを殺さねばならないとバットマンは言います。

ブルースは殺人を行うことについて断固拒否をしますがバットマンはその不殺主義の為に犠牲が増えていることを指摘してそもそもジョーカーを生んだのは自分たちだと言います。

かつて化学工場でレッドフードに扮していた男がバットマンに追われ化学薬品の廃液に転落をしてジョーカーは誕生したのでした。

このジョーカー誕生秘話はかなり古い話が元ネタなのですが『バットマン:キリングジョーク』『バットマン:ゼロイヤー』でも描かれていて映画や海外ドラマ『GOTHAM(ゴッサム)』でも同じ経緯でジョーカーが誕生しています。

バットマンはジョーカーが生きている限り悲劇は終わらないと言い、いつかは殺すしかないと言いますがそれでもブルースは拒否をします。

押し問答の末、ブルースはバットマンの存在を認めバットマンに前に進む方法を問います。

バットマンはハービー・デントがトゥーフェイスとなった経緯を話し、トゥーフェイスの罪はハービー・デントには無いと言います。
なので今後はバットマンの人格が悪を裁いていくからブルースの人格は退いていろとのことです。

しかしブルースはその提案はやがて怪物になると拒否します。

バットマンは共存できないなら自分を殺せとブルースに銃を渡します。
その銃は両親を殺害したときの銃でした。

しかしブルースはそれは自殺と同じだとこれも拒否します。

苦悩するブルースにバットマンが語りかけます。

これが私たちの運命

私たちはとうに普通の人生を失った

過去は変えられない
決して自分の手には入らない他人の幸福を守って戦うのみだ


ブルースはその言葉を受け入れ、バットマンとして生きることを改めて決意します。

そしてバットマンに殺人をしないこと、バットマンは恐怖の対象だけでなく善良な市民にとっては希望の象徴であることを伝えます

バットマンはそれを受け入れ、ブルースもバットマンとしての責任を受け入れることを語ります。

そしてバットマンは無数の蝙蝠となって消えていき、ブルースの手には写真が残りました。

ゴッサムではジョーカーが連行中に逃げてナイトクラブの客を人質にする事件が起こっていました。

ゴードンに連絡をしてバットモービルで現場に向かうバットマン。
車内には幼い頃のブルースと両親との写真が飾ってあるのでした。


感想

自身の活動の中で起きた悲劇からバットマンとしての責任から逃れようとしたら自身の中のバットマンの人格がそれを止めるというお話。
話としてはバットマンの人格とブルースの人格がずっと対話してるだけなのですがその過程でこれまでの活動としてバットマンになった経緯やゴードンやロビン、ヴィラン達の話が盛り込まれているので退屈にはならずに読めました。

バットマンがジョーカー達ヴィランを殺さずにいるからヴィラン達はまた脱獄して悲劇が起きているという指摘はまっとうで、本心ではブルースも自覚しているということですね。

それでも殺人はしないという信念を貫くバットマン。
ヴィランとの境界を見極め、市民にとって希望の存在で居たいということなのでしょうね。

映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』のインスピレーションとなったのはこの市民にとって希望の象徴になるという所なのではないかなと映画のラストで市民に認められるシーンで思いました。

作中のラストのバットモービルで事件に向かうバットマンの姿はこれぞバットマンという感じの終わり方でとても好きですね。


ここに怪物あり

解説・感想

本作のみのヴィランであるマダムXという女性とバットマンとの対決を描いた超短編。
マダムXは左目が大きく見開いて周りにX状の大きな傷があります。
幻覚を見る薬品をバットマンはかけられ屈しそうになりますがマダムXをなんとか掴みます。
マダムXの首を絞めますが一線を越えてはいけないと放します。
マダムXは警官に捕まりました。

前の話の『エゴ』でもあったように怪物になるまいと一線を越えないバットマンの姿が描かれていますね。

短いですがこの話もバットマンらしくて好きです。


キャットウーマン:セリナーズ・ビッグ・ストア

登場人物紹介

キャットウーマン(セリーナ・カイル)

主人公。
ネコのコスチュームに扮して盗みを働くヴィランだがバットマンとは親密で味方をすることもある。
法律上死亡したことになり有り金全部使って盗んだ品が偽物であったことから途方にくれていた所にマフィアから大金を盗む話が上がり仲間を集めて強盗計画を立てる。

スターク

かつて盗みの達人と言われた男。
セリーナが娼婦時代に出会い盗みの師となり恋人であったがセリーナの裏切りにより破局している。
強盗計画の為にセリーナから仲間に誘われる。
アイアンマンにはならない。

ジェフ

犯罪の天才。
強盗計画の為にスタークがセリーナに紹介をして仲間に誘われる。
ハンサムで陽気な性格。

スイフティ

質屋の店主の老人男性。
セリーナとは付き合いが長く、大金を求めるセリーナに強盗計画の話をする。
強盗計画にも協力をする。

チャンテル

マフィアであるフランク・ファルコーネと交際している女性。
ファルコーネが大金を列車で輸送する計画を聞き強盗を考える。
母と娘と生活し、強盗計画を成功させてファルコーネと縁を切りたいと考えている。

スラム・ブラッドレー

ゴッサムで探偵をしているハードボイルドな男。
市長からキャットウーマンの死の疑惑の解明を依頼されキャットウーマンの正体がセリーナ・カイルと知る。
セリーナを調べていく内に強盗計画に自ら関わっていくことになる。

フランク・ファルコーネ

ゴッサムのマフィア。
明言されていないが名前からファルコーネファミリーだと思われる。
チャンテルと交際している。
麻薬を買うために大量の現金を輸送する計画を立てている。

ラペリエ

麻薬密売者。
フランク・ファルコーネと取引して麻薬を売ろうとしている。

解説

冒頭、キャットウーマンは世間的には死亡したことが語られます。
実際には生きていてとある物を盗みましたが偽物でそれを盗む為に有り金を全て使ってしまったのでセリーナは途方にくれました。

知人の質屋の店主のスイフティになにか儲け話がないか相談すると紹介したい人がいるとのこと。
夜に店にいくとチャンテルというマフィアのファルコーネと交際している女性からファルコーネが麻薬密売の為の大量の現金を輸送する計画があると話します。
チャンテルは一緒に暮らしている母と娘の為にもお金を手に入れてファルコーネと縁を切りたいとのことです。
セリーナ達は強盗計画を立てることになりました。

チャンテルとの会話の中でチャンテルからある言葉が出ました。

正しいとか間違いとか、そんな問題じゃない
人間の基本的な尊厳の話よ


セリーナはかつて同じ言葉を言った男性を思い出すのでした。
それはまだ蝙蝠(バットマン)猫(キャットウーマン)もまだ現れていない頃の話。
セリーナが娼婦の仕事をしているときに客が目の前である男に殺されました。

男の名はスターク
盗みの達人と言われている裏の界隈の有名人とのこと。
事件に巻き込まれることにセリーナはスタークに怒りますがスタークはなぜこの仕事をしているか問います。
未来を諦めたような回答にスタークは先ほどのチャンテルと同じことを言います。

正しいとか間違いとかの話じゃない
人間の基本的な尊厳の話だ


その後スタークはセリーナの盗みの師となり恋人となりましたがセリーナがスタークを騙したことで破局をしていました。

セリーナは強盗計画にはスタークが必要だと思い、スイフティを通してスタークに連絡をします。

マイアミビーチでスタークとセリーナは再会します。
過去のことは水に流して話を聞くというスターク。
しかしセリーナのことは信用出来ず、スタークは断ろうとしますがセリーナから協力を懇願され話に乗ることになりました。

一方ゴッサムでは市長がキャットウーマンの死を疑いスラム・ブラッドレーという探偵を雇いブラッドレーはスイフティの店を荒らしていました。

チャンテルはファルコーネのメールから輸送計画の情報を盗みセリーナに伝えます。
スタークはラスベガスでセリーナに犯罪の天才であるジェフという若い陽気な男を紹介します。
ジェフも強盗計画の話を聞き、協力をすることになりました。

各自で計画の準備を進め、順調に進んでいきました。
スタークとジェフが夜に2人で呑んでいるときにジェフがスタークとセリーナの過去の関係について聞きます。

スタークはセリーナには別の顔(キャットウーマン)があったと言います。
ジェフは別の男に取られたのかと揶揄するとスタークの脳裏にはバットマンの姿が映り、ジェフに対して無言で怒るのでした。

そしてジェフにかつて一緒に強盗をしている最中に裏切られたことをスタークは話します。
スタークは信用できる相手なんかいないとこぼすのでした。

ファルコーネのところに居たチャンテルはメールの情報を盗んだことをファルコーネに詰められていました。

ここから探偵であるスラム・ブラッドレーに視点が変わります。
ブラッドレーは市長からキャットウーマンの死を真相を探るように依頼されましたがセリーナ達を調べている内にセリーナやチャンテルが危険な計画に手を出そうとしていることを知るのでした。

チャンテルの様子を怪しんだブラッドレーはファルコーネの所に行くとそこには拷問を受けて瀕死のチャンテルとファルコーネ達マフィアが居ました。
計画はバレてチャンテルも始末されそうな時、ブラッドレーは銃でマフィア達を殺害しました。
チャンテルはブラッドレーの腕の中で息を引き取ります。

ブラッドレーはファルコーネを脅してチャンテルから聞いた計画の内容を聞くとファルコーネを屋上から落として殺害しました。

セリーナ達は計画がバレていることを知らないまま強盗計画を開始しようとしています。
ブラッドレーも飛行機で強盗現場に向かいますがその中でファルコーネから聞いたスタークの名である事件を思い出します。

その事件はセリーナとスタークともう1人フィンガーズという男と3人で起こした強盗事件だったがセリーナは途中で裏切り強盗した金品をキャットウーマンが強奪していった事件でした。
この事件でフィンガーズはマフィアに殺され、スタークはゴッサムから出ていくのでした。

強盗計画は開始され、警戒はされていましたが順調に進みファルコーネの金を盗むことにセリーナ達は成功しました。
脱出用のボートで逃亡しようとしたとき、ジェフとスイフティが銃殺されます
強盗計画を知った麻薬を密売する側のラペリエが麻薬を売らずにファルコーネの金だけ奪おうとしたのでした。

セリーナ達を狙うラペリエですがそこにブラッドレーの飛行機が接近し、セリーナ達を助けます。
飛行機はラペリエの仲間に撃たれて不時着しますが飛行機に近づいたラペリエの仲間をブラッドレーは銃殺します。

逃げようとするラペリエの運転するボートに乗り込んだスタークとセリーナがラペリエを追い詰めますが逆にスタークは撃たれます。しかし執念でラペリエの銃をラペリエ自身に向けさせラペリエも死亡しました。

スタークにセリーナが駆け寄りますがもう助からず、スタークは最後に自身の名は「ジェイムズ」だと告げてこと切れました

一人岸に上がったセリーナを待っていたのはブラッドレーでした、
セリーナはブラッドレーからチャンテルが死んだことを告げられます。

セリーナは盗んだ金を持ってゴッサムに帰ると言いますがブラッドレーはセリーナを警察に引き渡すと言います。
セリーナはブラッドレーに対して死なないように銃を撃ち、盗んだ金でチャンテルの残された家族を養うと言います。

去り行くセリーナにブラッドレーは問います。

「セリーナ・・・あいつを愛してたのか?」

「そんな言葉の意味、わからない」


海のボートの上でセリーナはスタークの亡骸を抱えています。
やがてスタークの亡骸は海の中に沈んでいき、セリーナを一人乗せたボートはゴッサムに向かうのでした。

感想

完全にセリーナが主役の短編です。
バットマンが出なければセリーナはキャットウーマンにもなりません。

本作のみのキャラクター、スターク、ジェフ、ブラッドレー等はシンプルですが良いキャラでした。短編ゆえにブラッドレー以外は皆死んでしまいましたがそもそも犯罪者達なので末路としては有りうる話ですね。

ハードボイルドなノワール物という感じでした。

セリーナはスタークの死を悲しみながらも愛するという言葉の意味はわからないと言いました。
わからない振りをしているのか本当にわからないのか。
愛してる相手でも何度も裏切ってきたセリーナなので自分自身でも本心が分からなくなっているのかもしれませんね。

モニュメント

解説

ゴッサムシティのとある公園にゴッサムの守護者であるバットマンの巨大なモニュメント像が建設・お披露目がされます。

しかしバットマン本人は下アゴが強調されていることやファンクラブのような存在をあまり快く思っていませんでした。
ちなみにこのシーンのバットマンはめちゃくちゃ下アゴが強調されて描かれています。

バットマンのモニュメント像は犯罪者を追い払ったり落書きされたりきれいにされたり人によって様々と捉えられ方をされていました。
そしてその様子をずっとある男性が監視をしていました。

男はDr.ヒューゴ・ストレンジで知能犯のヴィランでした。
ストレンジはアナウンサーをモニュメント像に縛りつけ、モニュメント像を爆破するとジャックしたテレビで告げます。

バットマンはストレンジの居場所を特定し、ストレンジから爆破のリモコンを奪います。
そしてアナウンサーもバットマンが助けますがモニュメント像は爆破されました。
バットマンはリモコンを奪いましたが爆破は止めなかったのです。

感想

やたらとアゴが強調されたバットマンが活躍する話でした。
内容はシンプルなバットマンの短編という感じです。

エゴにも登場していましたが作者はヒューゴ・ストレンジがお気に入りなのではないかと思います。

デート・ナイト

解説・感想

バットマンとキャットウーマンがじゃれあいながらゴッサムの夜を駆け巡る短編。
それだけ。

デジャ・ヴ

解説・感想

目の前で両親を強盗達に殺される少年を目撃したバットマンが強盗達を追い詰めて恐怖に陥れる短編。

デジャ・ヴとは「既視感」という意味。
少年と同じように両親を亡くしたバットマンは強盗達を執拗に追い詰めていきます。

ちなみにこの強盗達の内2人の名前がスタークジェフ
見た目も先ほどの『キャットウーマン:セリナーズ・ビッグ・ストア』と同じですが作者がキャラを使いまわしただけで他人とのこと。
本作を流れで読んでるとさっき死んだんじゃ・・・って思います。

バットマンにスタークをボコボコにされてジェフはバットマンを殺そうと隠れ家の小屋を出ますが外ではジェフの恐怖する声と銃声だけが響き、それを聞いた残りの1人も震えながら銃に弾を込めます。
隠れ家の小屋に入ってくるバットマン。
最後の1人になった強盗は震えながら銃を構えてバットマンの狙いますが逆にバットマンは銃を掴み自分の頭を狙わせます
結局強盗は恐怖で銃を撃てず、うずくまり警察に捕まるのでした。

ウェイン邸に戻ったバットマンはマスクを脱ぎ、自分と同じような被害者の少年のことを嘆き両親の絵の前でうなだれるのでした。

犯罪者に恐怖を与えるバットマンというのがしっかり描かれていますが悲劇が続いて救われないバットマンの世界観も描かれています。

シンプルで悲劇的なストーリーですが個人的には好きです。

バットマン・スピリット:クライム・コンベンション

登場人物紹介

バットマン(ブルース・ウェイン)

主人公。
ゴッサムシティの大富豪ブルース・ウェインがバットマンとして犯罪者を取り締まっている。
ロビンと共にジョーカーを追いハワイに行きスピリットと協力してヴィラン達と戦う。

ロビン

バットマンのサイドキック。
バットマンと共にジョーカーを追いハワイに行く。
何代目のロビンかは不明だが13歳とのこと。

ジェームズ・ゴードン

ゴッサム市警の本部長。通称ジム・ゴードン。
セントラルシティのドーラン本部長とハワイの警察親善協会年次総会の法執行コンベンションの参加する。
プゲルというスピリットの女性ヴィランと交際している(妻のバーバラはどうした?)

バーバラ・ゴードン

ゴードンの娘。
バットガールとして活動しているかは不明。
ゴードンがプゲルと交際していることは歓迎している。

ジョーカー

正体不明のサイコパス。
大勢のヴィランを乗せた飛行機でハワイに行き警察関係者達を皆殺しにする計画をする。

ハーレイ・クイン(ハーリーン・クインゼル)

ジョーカーを心酔している女性ヴィラン。
ジョーカーの計画をサポートする。

ポイズン・アイビー(パメラ・アイズリー)

ジョーカー達と共にハワイに行った植物を操る女性ヴィラン。
誘惑した相手を操ることもできる。
ドーラン本部長を誘惑して操る。

ペンギン(オズワルド・コブルポッド)
キャットウーマン(セリーナ・カイル)
リドラー(エドワード・ニグマ)
スケアクロウ(ジョナサン・クレイン)
キラークロック(ウェイロン・ジョーンズ)
マッドハッター(ジャービス・テッチ)
ベントリロクエスト(アーノルド・ウェスカー)

ジョーカーの計画に乗ったヴィラン達。

スピリット(デニー・コルト)

『スピリット』という別のアメコミ作品の主人公。
セントラルシティ(フラッシュの住むセントラル・シティではない)の若い刑事デニー・コルトが化学薬品槽に落ちて仮死状態になった後に復活すると肉体が強化されていて覆面で正体を隠してスピリット(亡霊)として犯罪と戦っているヒーロー。
大勢の犯罪者が警察達のコンベンションを狙っていることを察してハワイに行きバットマンと出会う。

ドーラン本部長

スピリットに協力するセントラルシティの警察本部長。
スピリットの正体は知らないがデニーとも仲が良い。
ポイズン・アイビーに誘惑される。

エレン

ドーラン本部長の娘。デニーとも交友関係がある。

オクトパス

スピリットのヴィラン達をまとめている男。
顔がいつも影になっていて見えないので正体不明。

キャリオン
コサック

スピリットのヴィラン。
キャリオンはジュリアというハゲワシを連れた詐欺師。
コサックは大柄な男。

プゲル

スピリットの女性ヴィラン。
富豪と結婚して財産を奪う為に殺害する悪人。
ゴードンと交際している。


スーパーマン(クラーク・ケント)

クリプトン星から来た超人。
普段はメトロポリスに居るがヒーローとして世界中で活躍している。
バットマンとは友人。

解説

冒頭、ゴッサムのゴードン本部長とセントラルシティのドーラン本部長の2人がバットマンとスピリットの出会った時の話を思い出す所から始まります。

セントラルシティではスピリットがキャリオン達ヴィランを追いますが逃げられます。
一方ゴッサムでは飛行場でバットマンとロビンがジョーカーを追いますが飛行機で逃げられそうです。
なんとか飛行機内に入ったバットマンでしたがハーレイ・クインに撃たれて外に放り出されました。
ジョーカーは大勢のヴィランを飛行機で引き連れて逃亡をするのでした。

セントラルシティの空港ではドーラン本部長がハワイで開かれる警察親善協会年次総会の法執行コンベンションに行く為にデニーと娘のエレンに送られていました。
ドーランが空港で歩いていると女性とぶつかります。
女性はポイズン・アイビーでした。ドーランはキスをされて操られます。

一方ゴッサムではゴードン本部長が同じコンベンションに出発する為の準備を娘のバーバラと行っていた所にゴードンと交際しているというプゲルという女性が現れます。

スピリットとバットマン達はヴィラン達がハワイの警察達のコンベンションを狙っていることに気づきます。

ハワイではヴィラン達が交流を楽しんでおり、警察達のコンベンション会場の隣の会場でヴィラン達は一堂に会していてオクトパスが演説をしていました。

警察達が仮面舞踏会でヒーローやヴィランに扮する中、本物のバットマンはプゲルの正体を知っている事をプゲルに告げます。
また、スピリットもキャットウーマンと接触していました。

バットマンとスピリットはそれぞれ2人に同じ時間に誘われますがそれはヴィラン達の罠でした。
しかし罠を察したバットマンがスピリットを小屋に入れてやり過ごそうとしますがスピリットが抵抗した為ヴィラン達の集中砲火を受けてしまい倒れた
2人は確実に死なせる為にとベントリロクエストに撃たれます。

ヴィラン達が去った後、ベントリロクエストに扮していたロビンが正体を明かしバットマンとスピリットも目を覚まします。
ロビンはスピリットに自分たちがバットマンとロビンであることを告げますがスピリットはバットマンの存在を都市伝説だと言って信じません。

そこにコサックキラークロックが戻ってきますがスピリットとバットマンに倒されて脅されて計画の内容を話すのでした。

ポイズンアイビーはドーランを操りゴードンを撃たせて会場の爆弾スイッチを押すように指示をします。

会場でコンベンション中にドーランはゴードンを撃ち、爆弾のスイッチをゴードンが押しますが銃も爆弾も偽物でした。

このゴードンの正体はジョーカーでした。

会場には麻袋で顔を隠されたロビンとオクトパスがハーレイ・クインに運ばれてきます。

バットマンとスピリットは互いのコスチュームを交換してジョーカーとハーレイ・クインを倒します。
捕まっていたオクトパスはゴードンとすり替えられていました。
爆発が起きない事を不思議がるヴィランの達の上から声がかけられます

海辺でスピリットがバットマンにヴィラン達をどうするつもり聞くとバットマンは手配済で空を見ろと言います。
空を見るとヴィラン達の乗る船はスーパーマンによって空中で運ばれているのでした。

「冗談抜きで、あんた何者だい?」
「バットマンだ」
「ああ、だろうな」


こうしてバットマンとスピリットの出会いの物語は終わりました。

感想

まずスピリットを知らなかったので付属の解説書にはかなり助けられました。
スピリットは初見でしたが分かりやすいキャラクターで好印象です。
バットマンとスピリット両方のヴィランが多数登場するというアニメ映画のようなノリのお話でした。
背景のモブにブラックマスクのようなキャラクターがちっちゃく書かれているなどの描写も面白かったです。

キリング・タイム

解説・感想

ハーレイ・クインが主人公の短編。
ハーレイ・クイン以外のヒーロー、ヴィランなどの既存のキャラクターは登場しません。

ある日白髪が生えていることにショックを受けたハーレイ・クインはルーム・メイトと思われる男からファーザー・タイムのせいだと言います。
ファーザー・タイムはひげを生やした老人で誰でも年を取る事実を象徴しているとのこと。そしてニューイヤー・ベイビーを迎えることで新年を祝うとのことです。

ハーレイ・クインはそれを聞いてファーザー・タイムを殺せば年が変わらないと考えます。
ハーレイ・クインは老人介護ホームでファーザー・タイムと思われる老人に目をつけ犬猫の引くソリで老人介護ホームに向かい、建物中に犬猫たちを放してファーザー・タイムを探します。
途中出会った赤ちゃんを連れた夫婦と少し交流した後ファーザー・タイムと思わしき老人の部屋にハーレイは入ります。

ハーレイは老人をファーザー・タイムだと思って話しますが当然話が通じません。
そこに先ほど出会った夫婦が訪れます。夫婦は老人の家族でした。

ハーレイは赤ちゃんがニューイヤー・ベビーだと言いますが父親にファーザー・タイムは童話の話だと言われます。

悲観に暮れるハーレイですが老人に老いは怖いことじゃないと言われ、白髪は赤ちゃんが引っこ抜いたことで喜び、犬猫たちを連れて帰ろうとしましたが犬猫たちは老人たちと一緒に寝ていたのでそのままにしておいてハーレイは歩いて帰るのでした。

いい感じに終わったのですが最後のコマの背景がとてつもなく治安が悪いというオチになっています

ハーレイのイカれたキャラクター性の元に描かれるコメディ短編という感じでした。

まとめ

同じ作者のバットマンシリーズ短編集ということですが作品によって雰囲気も絵柄のタッチも変わっているので飽きずに各話を読めます。

個人的にはやはり表題でもある『バットマン:エゴ』が好きですね。
バットマンが自身の闇と対峙して活動を振り返り新たに誓いと信念を強く持ちゴッサムを駆けるラストシーンが好きです。

というわけで『バットマン:エゴ』でした!

読んで頂きましてありがとうございました!

次回の感想についてですがジョーカーの誕生の秘密が明かされる『バットマン:キリングジョーク』を書こうと思います!

また読んで頂けると嬉しいです!

よろしくお願いします!

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