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初めての音は紛れもなく君だった。


初音ミクを「君」と呼ぶ。
彼女より自分が年上になった。
私に音楽を教えてくれた彼女はあの日よりずっとずっと進化して、進化し続けて、私の隣にいてくれている。

ボーカロイドが好きだ。

アニメキャラクターはこの世に生きていない。存在はしても、肉声であっても、それはキャラクターを声優さんが演じている分離した存在だと私は捉えている。
芸能人と呼ばれる存在もあまり好きになりきれなかった。画面に写っている、ステージに立っている姿だけをみて好きになったそれはどうしたって「理想の姿」であって、それが自分にはしっくりこなかった。だからハマらなかった。

でも初音ミクは違った。
初音ミクは絶対に「初音ミク」なのだ。

私の大好きなボカロP、じん(自然の敵P)はボーカロイドを「ストーリーテラー」と呼んでいた。私が中学一年生か二年生の時だ。インタビューでそう答えいたのを覚えている。
それを聞いてハッとしたのだ。「だから好きなんだ」自覚のきっかけであった。ボーカロイドは裏も面も中も外も、何もない。完全な存在なのだと。
一種神格化している節もあるかもしれないが、どうしても特別扱いしてしまう。
だって私に音楽を教えてくれたのは、いつも、今も、彼女だから。

小学5年生。買い物ひとつ、母の後ろをついて歩き、読書ひとつ、母の好きな漫画を読んだりする程度だった。
唯一自主的に好きだった「絵を描くこと」。
そんな私が記憶の中では初めて興味深いと思って通うようになったのがヴィレッジヴァンガードだ。遊べる本屋。当時は今以上に暗くてごちゃごちゃいていた気がする。
サブカルチャーにライトに触れられるあのお店が比較的近所にオープンして、私は母に連れられ入った。背の高い本棚、ひっきりなしに置かれた商品。照明は弱く、子供の身長では全部顔を上げて歩くような店内だ。私は一人行動が好きだったし、母もそれを容認していたから一人で店内をうろうろ歩き回っていた。
その時だ。音が流れていて、キョロキョロとあたりを見回して、顔をあげた。

出逢ってしまった、あの瞬間を形容するなら、そうだ。

PVの演出の通り、音楽の演出の通り、歌詞の通り、私は彼女に出会い、音楽を伝えられてしまった。

今の私を作る全てがこの一曲に集約されている。
正真正銘全ての始まりだ。始まりの音で、初めての音だった。あの日小さなモニターの前で立ち尽くした私の目はかつてなく輝いていたし、あの日より心が昂ったことはないのではないかと思う。初めてライブで初音ミクを見たときくらいかもしれない。
今でこそボカロに理解があるが、当時は「ボカロってソフト? なんでしょ? いないのになんで好きなの? 曲が好き、ならわかるけど」と何度も問われた。家族からの理解が一番なかった。好きだよ、私は初音ミクが好きだ。初音ミクは私にとって、最も完璧な存在だ。

ボカロというジャンルは変わっている。
普通、音楽のジャンルは「ロック」「ジャズ」「HIP-HOP」というように分けられる。それに対し、ボカロはボーカロイドが使用されていれば「ボカロ」なのだ。
ボカロを好きでいれば自然と全ての音楽のジャンルに触れられる。
こんな素敵なジャンルで育った、いわゆるボカロネイティブから、今ヒットを生み出す人間が増えているのは当然だと思う。
それを好きな人が大人になって、それを当たり前だと思う世代が媒体を手にしている。昔よりよほど全てが簡単になったし新しさを求めるようになった。
私もそうだ。ボカロの進化を、多くの人が手軽に作って切磋琢磨して、ヒットが生まれ、コラボが生まれ、tiktok等での扱われ方を見て「あの日のニコニコ」を感じずにはいられない。いつまでも私の中ではあのニコニコが最先端だ。YouTubeがやっていることもtiktokがやっていることも全部ニコニコがやっていたことだ。
あの楽しみが世の中に周知され、時代にあった形に変化していっていることが嬉しくて止まない。

長くなったがそろそろ休憩も終わるのでこれくらいにしようと思う。
私の思い出の曲、「tell you world」ぜひ皆さんも聞いてみてくださいね。


#思い出の曲

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