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旅の記憶 1994・夏 トルファンからカシュガルへ バス旅2日目 #1


30年前の夏
 僕は中華人民共和国 新疆ウイグル自治区
トルファンからカシュガルへ向かう
バスに乗っていた


バス旅2日目

朝7:00
深い眠りに着いていたところを起こされた

昨日は長時間のバス旅で
疲労のピークだったから
ベットに入った後のことは
まったく覚えていない


バスは定刻に出発
エンジンは大きな唸りを上げて走るが
古い車体に大人数と
たくさんの荷物を載せているせいで
速度はせいぜい50キロといったところ
体感速度があきらかに遅い

タクラマカン砂漠の中にできた
まっすぐな道をひた走るバス

道路に並行して
点々と並ぶ電信柱

遥か彼方の街に
電気を届けているのか
はたまた電話線なのだろうか
などとぼんやり考えながら
変わらない景色にうとうとしかけた頃
何やら周りがざわつきだした

みんな同じ方向を指差して
何かを話している
なんだろうと
みんなの視線を追うと

地平線の向こうに何やらモヤが・・・


さっきまで永遠に続いていた
地平線が大きな何かに
さえぎられて消えている
その何かがどんどん近づいてくる

砂嵐だ

砂嵐が迫ってくる

砂漠の真ん中で
砂嵐に遭遇
あっという間にもうもうと立ち込める砂に
僕たちのバスは呑み込まれた

砂嵐の中から、突如現れる車 嵐の中は視界がほとんどない

隙間だらけのバスの中は
砂埃が舞い、呼吸が苦しい
上海で別の旅行者が
シルクロードに行くなら
マスクを持っていった方がいいよ
と言っていたのを思い出した

砂嵐はいったいどれほどの規模なのか想像がつかない

視界はほとんどなくなり
1メートル先も見えない程

窓の外をふと見ると
突如対向車が現れた
真横に並ぶまで気が付かないほど
視界が悪い
これでは事故になるのでは?
運転手さん頼むから止まってくれ
と願うが
バスは止まろうとはせず
視界ゼロの砂嵐の中を
ノロノロと進み続ける

30分ほどその状態が続いた後
ようやくバスは砂嵐を抜けた
いや、砂嵐が過ぎ去ったのか


周りの人が口々に
ひどい嵐だったね
なんてことを話していたようだ
なにしろ会話もままならなかったのだ

無事に過ぎ去った砂嵐
砂漠の神秘を感じ
大陸ってすごいなぁ
なんて考えながら
1時間ほど走っただろうか

あの嵐の中でも止まろうとしなかったバスが
急に止まり、そのまま動かなくなった

なんだろうと、先を見ると
砂漠の真ん中で
渋滞ができていた

砂漠になぜか渋滞が・・・どこまで続いているのかも全く見えない


運転手も降りてしまい
他の乗客たちも降りだしたから
僕も後に続く


砂嵐を抜けてほっとしたのも束の間

先も見えないし
周りの人たちも
なんだなんだと
先に止まっていた車の人に
話を聞いているが
言葉もわからない僕たちは
何が起きているのかさっぱりわからなかった

同じバスに乗っていた
日本人旅行者同士で
どうしたものかと相談したが
僕たちは待つことしかできない
せめてこの先がどうなっているのか知りたくて
バスの上に登ってみた

バスの上から渋滞の先を見つめる

西の空が夕日に染まる前で
流れる雲が美しかった

続く


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バス旅1日目についてはこちら↓からどうぞ

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