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「ゲーム」の違いによるミスマッチ

「ゲームビジネスによってゲームデザインが変わる」
という
当たり前だけど、ゲーム開発者も認識が曖昧な概念を
若手のプランナーに伝える機会があったので簡単に要約します。

なぜ、ビジネスの違いによってゲームデザインが変わるのかは以下の記事に売り切りと基本無料ゲームにおける事情があるということで書いたので興味あれば見ていただくとして

今回はなぜ、知っておく必要があるのかについて書いてみたいとおもいます。

改めて、売り切りゲームと基本無料ゲームについては
現在、ゲームビジネスの潮流であるコンシューマゲーム(売り切り)スマホゲーム(基本無料)のことを指します。

説明として以下の表現を比喩的に使って例えてみました。

おもちゃとテーマパーク

ゲームビジネスとしてのゲームの切り分け

ゲーム開発者目線でいうと「ゲーム」という言葉を取り扱うときに
それって
おもちゃのゲーム?
テーマパークとしてのゲーム?

と分ける必要があると思っています。

おもちゃのゲーム(売り切り)

家庭用のコンシューマゲーム、主に売り切り販売用につくられたもの。
パッケージング商品を売るというシンプルなビジネス構造なので、ゲームコンテンツ側にはゲームデザインの制約はほぼありません。
要は面白そう(面白い)な魅力的なゲームを提供する小売ビジネス、なのでおもちゃ販売のイメージ。

テーマパーク(基本無料)

主にスマホゲーム、基本無料でゲーム内課金があるもの。
(テーマパークは入園料があるが…)基本的に遊び部分のテーマパーク部分は無料で開放して人を集めて、快適に楽しむためには課金が必要になってくる。みたいなテーマパーク運用のイメージが理解しやすいと思います。

ファストパスのための課金や強いキャラで楽しむためのガチャ
閉園時間(時間制限)までにいかに楽しむか。(ちょっと関連付け強引なところはありますが…)
などといったところに時短の課金が発生するのが、スマホゲームの大枠のビジネスモデルだと考えると理解しやすい。

お金を持っている人はより楽しめるダイナミックプライシングともいえる

ゲームの切り分けが必要なワケ

上記で説明もしていますが一番重要な部分は

”販促”をゲーム内に組み込む必要があるのがテーマパークビジネス
だということ

スマホゲームはその足かせがあるために、ゲーム体験を自由に作ることができません。ゲーム体験は課金とセットにできるかどうか?が必ず必要だからです。
そして、課金には販促(販売促進)が必要で、ゲーム内マーケットを作り出し、商品を買ってもらうために購買意欲を刺激する訴求ゲームデザインである必要があります。

要は「ガチャ」という強力な課金訴求要素を組み込むことのできるゲームにならざるを得ないというのが実情です。

ガチャについての賛否や、ゲーム性についての話はここでは割愛しますが、開発者としての認識が必要だなと感じるのは

学習スキルと実務スキルのミスマッチ

エンジニアは学生含めてプログラミング、コーディング技術を習得し、一定実務での基礎となりえます。
(学生レベルのスキルではと実務レベルでは使い物にならないよというのはどの業種でも同じなのでそこは置いておくとして…)

デザイナーも絵を描くスキルやデザインスキルなど、学んだスキルが実務のスキルの基礎になり、それを土台としてプロのお仕事を行っていけます。

ただし、プランナーだけがどうも学んだことと実務スキルがミスマッチしていると感じるんです。

理由はいくつかあるとおもうのですが

「ゲーム」というものが、あまりにも「おもちゃ」としてのゲーム部分に洗脳されすぎて教育にまで及んでいるということ。

(憶測で書いているので間違ってたらごめんなさい)
学校ではゲームのゼロイチの企画や企画書の書き方、まとめ方。
進行管理やチーム制作のノウハウ、ゲームデザイン設計など、UX設計を実際のゲーム制作を通じて学んでいるような印象を持っています。

ゲームマーケットを調べてみると…

【ゲーム市場の大きさ】
ファミ通さんの2022年データで国内約2000億円規模
そのうち75%がモバイルゲーム(テーマパーク型)でのこりが
コンシューマゲーム(おもちゃ型)のソフトとハード

ファミ通ゲーム白書2023から引用

モバイルゲームの収益率が高いというのを加味したとしても
多くの開発者がモバイルゲーム(テーマパーク型)に従事していることが想像できます。

話が逸れましたが

プランナーという職業の多くは
もちろん必要ですが、学校で学んでいるスキルというのはそれほど大事ではなく
むしろ、「ゲームデザイン+販促」のテーマパーク型ゲームのスキルが必要なケースが多いんじゃないかと思うんです。

その学ぶべき代表格としては
行動経済学
・セールスプロモーション
など、マーケターが学ぶ技術を習得するほうが大事であることが分かってきます。

もちろん、ドキュメント制作や仕様設計、チーム内の橋渡し役としてコミュニケーション能力や進行管理能力も大事なのですが、専門性が必ずしも高くないことや一般的なビジネススキルでもあることから、会社で働くことで身についていくスキルであり、どの職種でも必要な汎用スキルとも言えます。

プランナーの役割としては一般的に
「おもちゃ」にしろ「テーマパーク」にしろ、ゲームデザインとしてUXデザイン能力(体験設計)が必要とされていると思います。

ただ、UXデザインって体系化されにくいし、いろんなゲームをたくさんプレイして抽象化したものを転用なり再構築していくのが実態だったりするので技術として定量化しにくい部分だと思うんです。

そして、「おもちゃ型」のほうが足かせがない分、より感覚的なゲーム体験よりの体験設計を行うことが多くなる傾向がありますが対して「テーマパーク型」は定性的な体験設計というのは比較的少なめです。
ガチャというマネタイズマシンを載せているため、ゲーム設計にプレイヤーによって結果が大きく変わるようなスキルを介在させるとバランスが取れなくなる、イコール商品価値が毀損してしまう。商品買わなくても楽しめるなら商品いらないですよね。

なので、ゲームらしいゲームの体験設計(定性的)ってあまり必要ではなく、パラメータ設計(定量的)が多くなる。

よって、比重的には曖昧なゲーム体験デザインよりも
体系立てて確立されている「行動経済学」やマーケティング技術などを学ぶことも重要なのでは、と感じています。

まとめ

何がいいたかったのかというと
「ゲーム」って言葉が割と一緒くたに扱われていることについて

一般消費者ならともかく、開発者でさえも「おもちゃ」としてのゲームの印象に引っ張られ、実際のゲーム開発と学ぶべきスキルの方向性について乖離があるんじゃないかと感じています。

学生さんでなく、ゲーム開発現場にあっても
スプラトゥーンのようなゲーム体験を見ながら、ガチャサイクルのスマホゲームの企画や運用を考えたりするのは、危ういなと感じます。
違いが解っていて「ゲーム」全体からさまざまなエッセンスを学んでいくのは大事だと思っているのですが、、

「おもちゃ」ビジネスと「テーマパーク」ビジネスくらい
やってること違うんやぞ!

というのは
共通認識でみんな理解を持っているといいなと思った話でした。
会社側から見た場合、採用とかでも重要ですよね。

ーーー

たまに
スマホゲームがオモロないとか課金のやり口がひどいとか
どうしても、売り切りのゲームとして比較されたりしますが同じ「ゲーム」のくくりだと思ってるからそういったヘイトになったりするのもこういう認識不足からくるものかなと感じています。

おもちゃテーマパーク比較しないでー なんですよね。

とはいえ、、
「ガチャ」に対する射幸性の課題はなくはないなと少なからず感じているので
そのへんの想いは以下の記事に書いたりもしましたので良ければ。

以上
ここまで読んでいただきありがとうございます。

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