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ジャンルによって強弱記号の解釈は全然違う

おはようございます。チューバ奏者、指揮者、金管バンド専門家の河野一之です。

僕自身もそうであったが、日本で金管バンドを楽しまれている方の大半は多くの場合吹奏楽から楽器を経験し、そこから金管バンドを始められる方が多い。

そういった中で多くみられる異なる点について今日は深掘りしてみる。

もくじ

吹奏楽と金管バンドの違い

吹奏楽=Wind Band

金管バンド=Brass Band

吹奏楽は大きく分けて
木管楽器、金管楽器、打楽器、弦楽器(コントラバス)

という4種類の楽器で構成されている。管弦楽=Orchestraであるとの違いはヴァイオリン、ヴィオラ、チェロが使われていなく弦楽器の最低音楽器であるコントラバスのみ使用されることがあるという点だ。

少々ややこしいがコントラバスが使用されていなくても吹奏楽と呼ぶ。
(曲にもよる)

金管バンドは極めてシンプルで、大きく分け
金管楽器、打楽器の2種類で構成されるアンサンブルだ。

このように使われる楽器の種類が異なることからこれらのアンサンブルはそれぞれ独立した特徴的な響きを持っているアンサンブルだ。

今日はこの2つを比べながら書いていく。

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強弱記号とは

強弱記号とはpやfと言ったイタリア語の意味を示す記号でpiano=弱奏forte=強音という風に音量を表す。

この強弱記号を表現することで音楽に奥深さや表情、感情、想いといった音楽表現をつけることができる。

例えば僕たちも元気一杯さをアピールするときは大きく張りのある声、悲しく沈んだ気持ちを表現するときは小さくはっきりとしない声で話すだろう。つまり音の大きさでの表現は聴者に何かしらの感情を湧き立たせることができる、これが強弱記号の役目である。

吹奏楽と金管バンドの違い

吹奏楽では構成される楽器が4種類、大まかにいうと金管バンドの2種類に比べ2倍である。その事から音楽の表現の方法や幅が金管バンドに比べたら2倍あるといっても良いだろう。

こう考えるとわかりやすい、1人で演劇を演じるのと、2人でやるのであれば2人の方がそれぞれのキャラクターの違いを表現しやすいだろう。

なので吹奏楽の方がそれに優れている。吹奏楽に比べた金管バンドの難しさはその表現の幅の拡大を行わなければならないところだ。

木管楽器や弦楽器が行なっていた役割を金管楽器の役割に加えさらに行う必要が出てくる。

音量の違い

僕たち日本人がイギリスの指揮者によく教えてもらうことは

pはもっと小さく

である。とにかくpがで過ぎてしまう。

これはもし吹奏楽をご経験されたことがある方ならわかるだろうが、吹奏楽で求められる我々金管楽器のpの大きさと金管バンドでのpの大きさが違うというのはもとより、それぞれ一本一本、1人ずつの奏者に求められるpの大きさが違うからだ。

恐らくデシベルメーターで測れば吹奏楽のpの金管バンドのpも大差はないけれど、それぞれのアンサンブルでのpの表現の方法、出し方が異なる。

吹奏楽では木管楽器も弦楽器もいるので彼らが主にpの役割を果たすことが多い。そして大音量の箇所になれば花形の金管楽器が大活躍することになる。

しかし、金管バンドにおいては、そのpの役割を果たしていた木管楽器がいなくその役割を金管楽器でこなしてく必要がある。これを吹奏楽の時に吹いていたpの音量で演奏すればそれは”大きすぎる”となるのは当たり前だ。

吹奏楽で金管楽器が求められる"p"と金管バンドのものではまるで求められる役割が違うからだ。

楽器構成も演奏するジャンルも、人数も何もかも違う中でたまたまマウスピースという同じ発声装置を使用しているだけで全く違うジャンルだ。違いで言えばトランペットとコルネット、同じ弦楽器だからということでヴァイオリンとコントラバスぐらい違う。

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吹奏楽と金管バンドだけに限らない

この強弱の違いは吹奏楽と金管バンドの差だけに止まらない。

オーケストラ、ロック、ジャズ、金管五重奏、オペラ、ポップスetcどんなジャンルであれそれぞれの音量やバランス、音色、吹き方、曲の進行&表現などが確立されてある。いわゆるスタイルだ。

これが同じ楽器を使っているからといって全て同じになってしまうのであればそれは勿体無い。

よく金管バンドで言われる、金管バンドではなく金管アンサンブルですねという話だ。

あえて吹奏楽寄りのポップスにしているのであれば良いが、気づかぬうちになってしまうとせっかくのポップスの良さが失われてしまうし、逆もありだ。

ぜひそれぞれの音楽ジャンルが持つ魅力を研究し音量だけに関わらず色々な表現を試してみてほしい

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まとめ

金管バンドは難しい!

と言われるけれどもその主語には恐らくこんな言葉がいつもついているはずだ。

・吹奏楽と比べて
・オーケストラと比べて
・自分が今までやってきた音楽と比べて

でもそれは多くの場合こういうことで

大人になってから出会う初めてのことは難しく感じやすい
=これまでの経験と比べやすいから

小学生で初めて自分で奏でる音楽が金管バンドの子供たち、金管楽器の演奏が金管バンドで初めてという大人たちに話をすると

難しい

という言葉は出てこない。それはこういうものだと思ってやるからだ。

何かと比べ、特に日本において大多数の方が楽しまれている吹奏楽と比べるのは簡単なので難しいと感じる。

さらに共通の楽器であるフリューゲルホーン、ユーフォニアム、トロンボーンの方々は特に感じるだろう。なぜか同じ楽器扱いをされているトランペットの方が演奏するコルネットもチューバの方が演奏するベースもマウスピースが似ているだけでほぼ違う楽器として役割を与えられている。担当される声部=音域が近いだけで役割は別物だ。

ここでは吹奏楽と金管バンドを取り出して書いてみたけど、どのジャンルにいって同じ楽器(似たような楽器)を吹いていても

全くの別物

だという認識を持って音量はじめ表現も工夫されると恐らくもっとスタイルが出てご自分の音楽表現が広がり楽しくなるはずだ。

賛美歌を歌いたいのにデスメタルのような声で歌うのはどっちが良い悪いではなくスタイルが理解できていないという判断をされてしまいどちらの良さもでにくくなってしまう。

ぜひせっかくご自分が選んだ楽器、そしてジャンルであるのだからその音楽がどんな音楽か、そしてその音楽の表現のために書いてある共通の記号であってもぜひそのスタイルにあった表現をオススメする。

自戒も込めて

Thank you

Kazz


サポートして頂いた支援は全て金管楽器や金管バンドの奏法の研究、音楽を使ったエンターテイメントの発展に使用させていただきます。