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ゼロステップを完全に理解できる話②

前稿①では、バスケにゼロステップが導入されて以降、審判の世界でも正しく理解している人がいない現状について書きましたが、本稿では正しいゼロステップとは何かについて触れていきたいと思います。

ゼロステップを正しく理解する3つのポイント

競技規則やガイドラインの言葉はその記載文言以上でも以下でもありません。
JBA プレーコーリング・ガイドラインにはきちんとゼロステップを構成する要素が記載されているので、これを正しく読み解けば”基本的には”ゼロステップは完全に理解できます。

JBA プレーコーリング・ガイドライン (20210901)

”基本的には”と書いたのは、完全に理解できるがゆえに、このガイドラインが不十分なものであることまでもが理解できてしまうからです。

ポイント①:動きながら

ゼロステップが適用されるには、「動きながら」であることが必要です。
ここは非常に重要な要素で、「止まった状態」でボールをミートする場合はゼロステップは適用されません。
レイトミート(ジャパニーズステップ)がトラベリングと判定されるのはこの規定に違反してるからであることが大半です。
(もちろん、前稿の動画にあるような、1(0),2(1)⇒ジャンプ⇒1,2のような意味不明なステップはそれ以前の問題ですが。)

ちなみに、「動きながら」の定義については、

※「動きながら」とは、ボールをレシーブする前に、明らかな位置の移動がありながら動いている⼀連の動作をいう

JBA プレーコーリング・ガイドライン (20210901)

と明記されており、ボールを「もらう前」のことなので、「ストップしたらゼロステップは適用されない」といった「ボールをもらった後」まで含めて一連の動作かどうかは関係がありません。私が講習会で受けた説明は間違いです(前稿①参照)。

ただし、何をもって「動きながら」とするのかの判定基準が記載されていないため審判の主観に左右されてしまうのがこのガイドラインの不完全な部分なのです。

ポイント②:ボールをコントロールするタイミング

動きながらフロアに⾜がついた状態でボールをコントロールした場合、コントロールをした後に2歩までステップを踏んでも良い (0歩⽬の適⽤)

JBA プレーコーリング・ガイドライン (20210901)

「ボールをコントロールする」とは何か。これもガイドライン上は明確な定義はないので不完全ではありますが、一般的なバスケットボールプレーヤーならなんとなく感覚的にわかるのでここにはあまり議論の余地はありません。
コントロールという言葉が分かりづらいのですが、「保持」もしくは、「ギャザー」と読み替えればよいです。

簡単に言うと、
・ドリブル中 ⇒コントロール(ギャザー)していない状態
・ボールをキャッチ ⇒コントロール(ギャザー)している状態

ということになるのですが、これはダブルドリブルかどうかの判定を想像すればそんなに難しくはありません。

両手で持てばギャザー。
ポケットドリブルの状態で片手の中でボールがシュルシュル回っているうちはギャザー前。
片手であってもボールを抱え込んでしまう、もしくは手のひらを上に向けて持てばギャザー。

それよりも、ボールをコントロールするタイミングが重要で、ゼロステップ判定がされず、トラベリングになるパターンとして「動きながらでない」のと同じぐらい多いのが、コントロールするタイミングが早すぎて、ゼロどころか、マイナス1の状態でボールを保持してしまっている場合です。悪質なジャパニーズステップがこれに当たります。

ポイント③:パス・シュートか、ドリブルか

これも間違いがちなのですが、ステップ後のアクションがパスもしくはシュートか、ドリブルかによって許容されるステップが異なります。

【パスもしくはシュートの場合】

−パスもしくはショットをするためにピボットフットでジャンプすることはできるが、どちらかの足がフロアに着地する前にボールを手から離さなくてはならない

2022バスケットボール競技規則

パスやシュートの場合は、ゼロステップの適用有無にかかわらず3歩目が地面につくまでにボールを離せばOKです。
普通のレイアップシュートを想像すれば大丈夫ですね。2歩目が地面から離れている(ジャンプしている)状態でもトラベリングにはなりません。

【ドリブルの場合】
ドリブルの場合はもう少し複雑になります。

−ドリブルを始めるためには、ボールが手から離れる前にピボットフットを上げてはならない。

2022バスケットボール競技規則

⽌まった状態からドリブルをする場合、ピボットフットがフロアから離れる前にボールをリリースしなければならない。

JBA プレーコーリング・ガイドライン (20210901)

これが原則です。
いわゆる、突き出しでトラベリングを吹かれるのはほとんどがこのケース。
ドリブルより先に軸足が浮いてしまうとダメ。シュートやパスと異なり、ジャンプしてしまうと着地前にドリブルをついてもアウトです。

さらに、ドリブルの場合、例外があります。

−ボールをキャッチした後ドリブルを始めるには、2歩目のステップを踏む前にボールを離さなけ ればならない。

2022バスケットボール競技規則

この条文は前提条件がちょっと分かりづらいです。
ボールをキャッチした後ドリブルするって「当たり前やん」となり、これだけ読むと原則と違うことを言っているように見えてしまいます。なのでガイドラインと合わせて読まないとわかりません。

4)ドリブルをする場合
①⽌まった状態からドリブルをする場合、ピボットフットがフロアから離れる前にボールをリリースしなければならない。
② 0歩⽬が適⽤され⼀連の動きの中でのドリブルの場合、2歩⽬がフロアにつく前にボールをリリースしなければならない。 ただし、1歩⽬のピボットフットが確⽴した後に⽌まった状態ができた場合は、上記4)①が適⽤される。

JBA プレーコーリング・ガイドライン (20210901)

①が原則のことを言っているのですが、②で動きの中でのドリブルする場合は2歩目をつく前にドリブルをしないといけない、とあります。
ややこしいのですがこれはかなり重要で、ドリブルするときは、結局0⇒1でドリブルをしないといけないので、ゼロステップの恩恵はあまり受けられない、ということになります。

厳密にいうと、0の足が離れてもいいので1⇒2の場合(1が離れる前にドリブルをしないといけない)に比べて許容範囲は広がっているのですが、あくまでも許容範囲が広がっている、というぐらいの感覚です。

ゼロステップとは何か

ゼロステップはギャザーステップともいいます。

ゼロステップを正しく理解すればよくわかるのですが、あくまでも、ボールギャザーのタイミングでちょっとぐらい後ろ足が残っていても、動きの中であればセーフにしましょう、だって厳密に足が残っているかどうか判定するのは難しいんだもん!、ということであって、決して1歩歩ける歩数を増やしました、というようなルール改訂ではありません。
そうでなければ、止まっているときはダメ、2歩目がつく前にドリブルをしないといけない、といった例外の説明がつきません。


もっと言うと、バスケットボールをエンターテインメントとしてとらえ、ランニングプレーからシュート(ダンク)に行くときにステップを整えることを見逃してよりスピーディーで魅力的なスポーツにするために作られたものなのです。

バスケのステップは昔からずっと変わっていません。
誰もが最初に習った通り、3歩歩けばアウトなのです。



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