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⚾元気でよろしいーENEOS・度会隆輝選手から見る、大人の勝手な期待ー

2022年の都市対抗野球が、昨日(7/29)閉幕した。優勝は横浜市代表のENEOSだ。神奈川県民の私にとって、とても嬉しい知らせだった。

今回の都市対抗野球は一回戦のみ現地で観戦。それ以降は、仕事の都合上テレビでの応援となった。様々なバックグラウンドをもつ選手が、優勝を目指して白球を追う姿は、毎度ながら心を打たれる。

素晴らしい試合の内容はもとより、今回の大会で印象に残ったことがある。それは、ENEOS・度会隆輝選手のインタビューだった。

度会選手の素晴らしさや功績については、多くの情報があるのでここでは割愛する(今大会で橋戸賞含む三冠を手にした)。

注目はそのインタビュー内容だ。上記に掲載したリンクを見るとわかる通り、屈託のない笑顔を見せ、感情の赴くまま回答をしていく。

元気でよろしい。


私は素直にそう思った。社会にでて二年目。弱冠19歳の選手が、半ば興奮でインタビューを受ける。ここまで純粋な『若者の姿』を久しぶりに見た。人によっては、あのフレッシュさを常識知らずと捉えることもあるだろう。しかし、ENEOSというチームは笑顔で受け入れていれていた。そのシーンさえも微笑ましく思えた。

なぜ、こんなことを考えたのか。それは近年、高校野球の試合後のインタビューを見て疑問を抱くことがあったからである。数年前、私は高校野球の取材の補佐をしていた。試合後の囲み取材から、単独取材までたくさんの経験をした。今の高校生は非常に優秀で、こちらが求めている受け答えがすんなりとできる。


常に大人の顔色を伺っている。



質問を投げかけると、一言目には「そうですねー」と一拍おく。この間に、こちら(大人)側が求める答えを考えているのだと想像する。感情そのまま「嬉しかったです!!」と即答する選手は稀である。冷静に淡々と、こちらの質問に答えていく。

それに対して度会選手は、自分の思う感情を全てドームに投げ切った。もちろん緊迫する試合展開であったこと。優勝がかかっているので、そうなるのも当然の流れである。しかし、ここまで感情をむき出しにできるだろうか。

無論、取材とインタビューには違いがあるので一概に比較することはできない。ただ、自分の思いや考えを伝えるという意味では同義である。そのような場面で自然な姿を見せることはできるだろうか。

そもそも、大多数の大人が若者に対して『期待をしすぎている』というのが問題ではないか。もちろん色々な意見があって然るべきであるが、あまりに高い質を求めすぎていないかと疑問に思うのだ。もっと寛容であって良いのではないか。今回の度会選手のインタビューは、大会を全力で駆け抜けた証が詰まっている。彼らの熱に水をさしたり、止めてはいけないと思うのだ。

当然、優秀な回答を否定するわけではない。それが本心であれば、素晴らしいにこしたことはない。ただインタビューを通して、何かを抑制しなければならない状況(コンプライアンスに違反するものは除く)を作り出すのはいかがなものかと思うのだ。こんな優しく、素直な世界が広がったらと切に願うのだ。

度会選手のインタビューを見て、私はとても元気をもらえた。はつらつとしたプレーはもちろんだが、あれだけ素直に生きていけることに羨ましすら感じた。直球に生きていく。年を重ねるごとに忘れてしまう感情。それを思い出したような気がする。本当に素晴らしい都市対抗野球大会だった。ENEOS、度会選手、そして出場した全チームの皆様、本当にありがとうございました。


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