見出し画像

【少年野球】親がSNSで訴える時代

 地域に根ざした普通の少年野球チームに入ったのに、前時代的な価値観を押しつけられ、常識を超えた理不尽な思いをする中で「野球はもういい」と去ってしまう親子がいる。
 私の予想ではそういう親子はこれからもっと増えるだろう。

 もちろん、そうしたトラブルはこれまでもたくさんあっただろうが「野球とはそういうもの」というあきらめもあって、合わない親子が静かに去って行くのが普通だった。
 チームとしては合わない親子が去ってくれることで問題が解決した気になり、それまでと変わらぬ価値感で、変わらぬメンバーで、旧態依然とした体制を継続することが出来た。

 しかし、そうした「見かけ上の解決」が本当の解決になったかどうか、チーム側は安心できない時代になった。 
 SNSでの反撃である。

 私は別の記事でも「現代に生きる人間と関わるならば、現代の感覚を理解しなければならない」と言ったが、まさか自分たちの言動がSNSで広まるなど、古い世代の関係者たちは予想もしていないだろう。

 しかし、これから自分の子を少年野球チームに入れようと思う若い親たちは、チーム側と正面切って話し合いをする気など最初からない。
 本当に腹に据えかねた時はSNS上で訴えた方がよほど楽で効果があることを知っているからだ。 
 監督やコーチに直接不満を訴えても、「野球とはそういうものだ」と言われ、自分の方がモンスターペアレントのような扱いを受ける可能性が高い。そしてやっかいな親として目を付けられたり、子どもがさらに理不尽な思いをする可能性もある。匿名で自分を守りながら実情を訴える方がすべてにおいて安全だ。
 そう考えると、今後チームにとっては直接疑問や不満を言ってくれる人がとても有り難い存在になるだろう。

 そうした時代の変化に対する危機感がないチームは、必ず淘汰されていく。「野球とはそういうものだ」のひと言で、どんな理不尽にも黙って耐えてきた世代には信じられないだろうが、チームや監督は親のご機嫌を伺う時代になったのだ。監督もコーチもいつも見られている。監視されている。それがどれほど恐ろしいことか、あまりにも無知で無防備だ。
 
 そしてもう一つ大事なことがある。
芸能人やスポーツ選手であっても「人間性」が重視される時代になった。別の記事で書こうと思っているが、圧倒的弱者である子どもに対する大人の態度は、そこに「愛」があろうとなかろうと「ハラスメント」として追及を受ける時代だ。
 少年野球は子どもと深く関わり、「子どもの教育」の側面ももつ活動である。その指導者は必然的に人間性が問われ、現代のコンプライアンスをきちんと理解している人でなければ、おおげさではなく「世間」が許さなくなるだろう。
 その「世間」とは、親の背後に大きくひろがっているSNSの世界である。もし炎上してしまえば、どこのチームで、監督は誰か、コーチは誰か、その名前まで暴かれ、晒され、デジタルタトゥーとしてずっと残ってしまうのだ。
 チームも監督もそれを肝に銘じ、正しく恐れて活動する必要がある。

 こうして書いてくると、少年野球チームの監督になりたい人は今後いなくなるだろうと思う。でもそれも致し方ない。時代である。
 
 
  
 

 

 

 
 

 

 

 

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?