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「YELL BANK」にたどり着いた理由

はじめに

BASE BANK事業のプロダクトマネージャー兼 事業責任者をさせていただいている柳川です。
前回の記事では、BASEグループが取り組む金融事業であるBASE BANK事業全体をご紹介させていただきました。
今回の記事では資金調達サービス「YELL BANK(エールバンク)」をピックアップして紹介させていただきます。

「YELL BANK」とは

一言でいうとネットショップ作成サービス「BASE(ベイス)」をご利用のショップのこれまでの実績をもとに、即時に資金調達が行えるサービスです。
「BASE」の利用データから、独自のアルゴリズムにより各ショップの将来の売上金額を予測して「YELL BANK」が対象となるショップオーナーから将来の売掛債権を買い取ります。買い取った金額は即時にショップオーナーに支払われるため、ショップオーナーは将来の売上を” 今すぐ ” 利用することができます。これが一瞬で資金調達ができる仕組みです。

与信の都合で既存の金融機関を利用できずにいるショップオーナーも、資金調達の選択肢を得ることが可能です。また「BASE」への支払いも、ショップの商品が売れたタイミングで行われるため、想定のペースで売上が出なかった場合、支払いもその分遅れることを許容します。例えば100万円の売上予測に応じて資金調達をしたが、読み違いがあり50万円しか売れなかった場合も、50万円に対しての回収しかされません。残債はその後売り上げたタイミングで「BASE」への支払いが行われます。「BASE」としてはリスクですが、ショップがチャレンジするために、「BASE」が先にリスクを取る形としています。

「YELL BANK」を作った背景

前提として、「BASE」を利用するショップオーナーの中には、今まで商売をしたことがなかった方も多くいます。

”誰でも決済が使えるように”という第一ハードルをBASEでは10年かけて超えてきました。
では、そのハードルを超えた先に次のテーマはどこにあるか、”ショップの可能性を広げるために”ということを考えたときに、資金面の課題を解決するべきではないだろうかという発想になりました。

一定以上の規模に事業を成長させるためにはリスクを取る必要があります。リスクとは何でしょうか。それは投資、お金の問題と読み替えられると考えています。お金があれば在庫が増やせるし、人が増やせるし、広告宣伝もできる。
しかし特に商売の経験のない人にとってリスクを取ることはかんたんなことではありません。当たり前のことですが、リターンが確約されているわけではない中でリスクを取るというのは、損をするということであり、イメージの中では失敗というものはことさら大きくのしかかります。また、そもそもリターンが来る感覚がわからなければリスクを取ろうとも思えません。つまりできるだけリスクをリスクと捉えられない形でサービスを提供したうえで、リターンを実感してもらうということが必要であると考えました。
リスクをリスクと捉えられないようにという思想は、「BASE」とも通じています。先に手数料を頂くのではなく売れてから手数料いただく。まず先にBASEがリスクを取るという形で資金調達サービスの提供を目指しました。

「BASE」を利用するショップのための資金調達サービスとしてのポイント

「YELL BANK」は融資ではありません。比較すると特徴が見えてくるので、あえて銀行融資と「YELL BANK」を比較させていただきます。銀行融資の中で、特に「BASE」のショップオーナーにとって課題となるものを挙げさせていただきます。

  • 資金が手元に来るまでに時間がかかる

  • 期日がきたら投資成果に関係なく返済が必要

  • そもそも与信の問題で調達できない場合がある

  • 少額の融資はそもそもコストバランスの問題で銀行としても対象になりえない

  • 手続きが煩雑

それらを「YELL BANK」では「BASE」のショップオーナーにフィットする形にアレンジしました。

  • 素早い資金調達の実現のため、持っているデータを活用した事前審査

  • できるだけUI/UXを洗練させユーザーに負担をかけない

  • 期日がきても売上が立たなければ支払いが遅くなる

  • 自動化により少額の提供もコストバランスが成り立つ形を実現

これらを実現するために、ファクタリングのスキームを活用しました。
通常のファクタリングは、顕在化した債権を買い取ります。それに対して「YELL BANK」では将来発生するであろう売上を買い取ります。ファクタリングにおいて、支払いは債権が実現したときに行われるので、将来の売上が実現しない限り支払いがされません。つまり売上予測が外れた場合損失が出ます。「BASE」にとっては極めてリスクの高いスキームです。
これはそもそもデータが無いと実現できない上、できたとしてもリスクが高すぎて、事業として実現することが難しいです。

では、「BASE」ではどのように実現しているのかというと、奇をてらったことはしておらず、徐々に対象を広げながらPDCAをまわし、適切なリスク管理を行いながら、アルゴリズムの改修を行い、サービスとして成り立たせています。
先にデータから売上を予測し、「BASE」から提供金額を提案するフローなので、ユーザー体験としては資金調達の案内がきて、それを使うかどうかを選択するのみとなります。その後は今まで通り売上を立てていれば、「BASE」への支払いが行われます。決済を握っているがゆえの体験になっています。

「YELL BANK」の現在地

サービス開始後から徐々に利用対象を広げつつ、順調に成長しています。
BASEとしてもリスクを伴う事業であるため拡大の仕方は慎重ではあるが、着実に進展しており、リスクとリターンのバランスを鑑みながらPDCAを回しアルゴリズムを改善しながらサービス拡大しています。また、BASE BANK事業では、「YELL BANK」以外にも「お急ぎ振込」や「BASEカード」と合わせる形で、総合的にキャッシュフローのサポートを充実させています。

「YELL BANK」の課題

では今後の「YELL BANK」の課題はなにか。それは2つの意味で対象を増やすことだと考えております。

① そもそもサービスが受けられる予備軍を増やすこと
これを実現するためには、アルゴリズムの改善が大事になります。より多くの「BASE」をご利用のショップに「YELL BANK」を提供するためには、より正確でより多くのショップに適用できる売上予測の改善を地道に行っていくことが必要になります。

② 資金調達という選択肢を取る人を増やすこと
資金調達をして、事業を伸ばす。ネガティブな表現をすると、借金というリスクを背負うという言い方になるかと思います。これをしようと思うのは現段階ではなかなか勇気のいることだと考えています。リターンがある自信がないと、リスク取りにくいことに加え、そもそも何のためにリスクを取るのかということも明確ではありません。適切にリスクテイクすること、それはリターンを得て自分がしたいことをするための手段なんだということを一人でも多くのショップオーナーに実感してもらう必要があると考えています。

「YELL BANK」で実現したい世界

「BASE」が推し進めてきた、誰もが挑戦できる世の中というものを更に加速させたいと考えています。やりたいことや、好きなことを更に推し進めるための選択肢となりたい。挑戦を諦めるハードルをなくしたい。そのように考えています。
そのためには対象を広げることが大事です。
お金は上手に使えば強い味方になるということを、より多くの人に実感していただき、現実の選択肢としてほしいです。大げさに言えば投資して成果を最大化することが当たり前になる文化を作るつもりでプロダクト開発をしています。

「YELL BANK」で調達した資金を使って、新商品等を作り、さらにショップの売上が上がる良い循環が加速すれば、「BASE」全体の取り扱い金額が増えて売上が上がる構造がつくれるため、更に「BASE」の機能の開発へ投資が進みます。そしてBASEグループ全体で強力にショップをサポートする体制が盤石になります。

ロングテールの市場に挑むことは長期戦です。根気強く続けていく必要があります。「YELL BANK」を始めとしたBASE BANK事業は、まさにロングテールを末永くサポートするための、サステイナブルな構造の一助となると考えています。

BASEグループ一丸となって、誰もが挑戦できる世の中を実現していきたいと考えています。