どんなお題でも語る #3「だっぺルゲンガー」
ばさつです。このnoteでは「どんなお題でも語る」をモットーに、皆様から貰ったお題について小噺にして語っていきます。
#3「だっぺルゲンガー」
ドッペルゲンガー。
世界のどこかに自分と同じ顔がいて、出会うと死んでしまうという都市伝説だ。
・・・と、私も出会うまでそう思っていた。
結論を言えば、ドッペルゲンガーは実在するし、出会っても死なない。
あと、茨城弁を話す。
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6月、私は中学最後の大会を、反則以外の考え得る最速の手順で敗退し、期せずして受験戦争を一歩リードすることになった。
結局、向いてないことを確認するだけの為に2年も費やしてしまった。
部活、好きだったんだけどなぁ・・・
夏休みに入ってもモヤモヤした気持ちは収まらず、いち早く始めたハズの受験勉強も捗らないままお盆になった。
お盆は茨城のお婆ちゃんの家に行くのが恒例行事だが、お母さんも今年はさすがにどうするか聞いてきた。
でも別に大丈夫。
家でも集中できてないし。
「よぐ来だな〜、疲れだっぺ?」
玄関で出迎えてくれたお婆ちゃんは私達を家の中に案内した。
いつもなら全員客間に泊まるのだけど、事前にお母さんが受験生を配慮して欲しいと伝えていた様で、私だけ書斎が与えられた。
お婆ちゃんの家は海沿いにあり、道路を挟んで向かいの土手を下りればすぐに砂浜だ。
いつもなら水着を持ってきて妹と遊ぶけれど、今年はお預け。
お婆ちゃんも気を遣って、出迎えのあとは会いに来なかった。
ここまでされたので勉強してみたけど、やっぱり進まない。
私は気分転換に砂浜を散歩しようと外に出たものの、日中は海水浴客ばかりで落ち着かない。
仕方ないので土手に座り、目を閉じる。
次第に人の声は気にならなくなり、心地良い波の音だけが耳にフォーカスされる。
「おーい、ちょっといいけ?」
・・・真横から声をかけられた?
すぐ目を開け振り向く。
!?
私がいる・・・
顔や体型は勿論、背が高いのがコンプレックスで猫背気味な姿勢も、外にハネるくせっ毛も、全て同じ。
え、こんなことある?
「やー、あんまし似てっから気になっで気になっで。」
「話しかけっとめいわぐがなーとは思っだんだけども、もう会えねーがもんしねーし。」
「・・・まさか隠し子け!?」
茨城弁(だと思う)で自分に捲し立てられている。
不思議な気分ではあるけど、悪い人じゃなさそう。
私は、私と話すことにした。
家族のこと、部活のこと、友達のこと。
あと、他人にはちょっと言えないことも。
目の前の私は、たまに何言ってるんだろうという顔でこっちを見ていたけれど、基本的には真剣に話を聞いてくれた。
同じくらい自分のことも話してくれた、ハズ。
ごめん、途中何箇所か聞き取れなかった。
でもどうやら血縁関係はなさそうで、そこは2人とも安心した、ハズ。(ごめん、私)
私達はいっぱい話したけど、名前だけは聞けなかった。
お互いちょっと恐かったんだと思う。
「やー楽しがったなぁ。またそのうちどこかで会うべな!まだなー!」
私は私にニッコリ微笑んで去って行った。
あれ?そういえば、
"だっぺ"って、あんまり言わないんだね。
気付けば、心のモヤモヤは消えていた。
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今日、土手に座る「私」に会った。
ドッペルゲンガー。
世界のどこかに自分と同じ顔がいて、出会うと死んでしまうという都市伝説だ。
・・・と、私も出会うまでそう思っていた。
結論を言えば、ドッペルゲンガーは実在するし、出会っても死なない。
あと、津軽弁を話す。
#3「だっぺルゲンガー」完
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