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【お題・シナリオ】アシスタント(3,050字)【投げ銭】

【前回のお話】

――放課後の教室。

生徒A「アシスタントになりてぇやつはいるかーっ!!(クソデカボイス)」

生徒B「うわびっくりした。いつ聞いても声デカすぎやな。どっから声出してんねん」

生徒A「え、口からですけど」

生徒B「ふつうの答え返ってきた。てかそれよりアシスタントって、何のアシスタントだよ」

生徒A「漫画のアシスタントに決まっとるやろがボケェーーーイ! って、さっきから当たり前のことしか訊かんよなオマエ」

生徒B「いや、え? 漫画のアシスタントかどうかは別に当たり前じゃないだろ。むしろ漫画のアシスタントの方がレアな気がするけど」

生徒A「レアてどれぐらいレアなん。食べたらお腹壊すくらいのレア度なん? アニサキスとかに侵されるかどうかについては」

生徒B「肉に例えてるのか魚に例えてるかわからんようなこと言うな。レアに関する度合いはどうでもいいんよ。それよりいつからオマエ、漫画家になったの」

生徒A「今から」

生徒B「そうかー、俺の知らないところでもうそれほどの努力を重ね……って、え? 今から?」

生徒A「結構無理やりノリツッコミ入れてきたな」

生徒B「いや、オマエがツッコミ入れんなや。え、今から漫画家になるのに、先にアシスタントとか募集すんの?」

生徒A「いかんの?」

生徒B「いかんだろ普通。そもそも、漫画とか描いたことあんの?」

生徒A「無いかな」

生徒B「そうかー、それだけ実績があるなら俺は何も言うことは……って、え、無い? 一回も??」

生徒A「ちょいちょい腹立つノリツッコミ入れるやん。どういう回答を想定しとったんよ」

生徒B「まあツッコミ役って華がないからな、基本な。ちょっと目立とうと思って」

生徒A「華は無いけどハナにつくってか」

生徒B「やかましいわ。で、漫画描いたこともないやつがようアシスタント募集だとかほざくよな」

生徒A「ええやんけ。むしろ描いたことないからこそ、アシスタントのやつに代わりに漫画描かせたらOKやろ」

生徒B「いやオマエ、それもはやアシスタントやなくて作画担当やんけ。え? じゃあオマエはなに描くの? 原作?」

生徒A「いや俺そんなアイデアないから原作もアシスタントにやってもらおうかと」

生徒B「は????? いや、漫画も他人に描かせて原作まで他人に任せたら、オマエは何する人なん」

生徒A「だから、漫画家」

生徒B「いや、漫画家ちゃうやろ。漫画家を何だと思ってんねん。そんな高見の見物だけやっとって、他人をアゴで使って余裕ぶっこいとるだけの仕事が漫画家なはずないやろ」

生徒A「そうかー。じゃあ俺がなりたいこの役職は何なのだろう」

生徒B「知るかボケ、そんな役職あるか。ただの偉そうなだけのクソ野郎じゃ」

生徒A「じゃあ、編集者は?」

生徒B「いや、編集者は……」

生徒A「……」

生徒B「……」

生徒A「……え? いやどうした、急に黙って。編集者は?」

生徒B「オマエがやりたいことって、編集者なんかなーって思って……」

生徒A「え? 高見の見物だけやっとって、他人をアゴで使って余裕ぶっこいとるだけの、ただの偉そうなだけのクソ野郎が、編集者?」

生徒B「いや、そんなこと言ってないやん」

生徒A「言うたやん! さっきオマエが言うたのって、編集者のことやろ! オマエ、編集者のことそんな風に思っとったの!?」

生徒B「ちょ……いや、思ってないです、断じて思ってないです」

生徒A「思っとったやろ! じゃないと、一瞬どもったりせんやろ!」

生徒B「めっちゃツッコミ入れてくるやんオマエ……ああ、思ってました! すみません、一瞬、思っちゃいました! でもごめんなさい、編集者も大変な仕事だと思いますッ! 他人をアゴで使って余裕ぶっこいてるだけじゃなく、先生をいかに不快な気持ちにさせずに締め切りまで間に合うよう催促するとかいろいろ精神的にキツい仕事だと思いますごめんなさい!」

生徒A「いや誰に謝ってるの。別に土下座とかせんでも」

生徒B「ごめんなさいッ! この通りです!」

生徒A「いや、脱ぐなし。急に制服脱いでパンツ一丁で土下座し出すなし。まだ教室に残ってる女子が見てるし。やめろし」

女子生徒C「先生、大変です! 生徒Bくんが!」

生徒A「ほら、先生呼ばれてもうたやん! はよ服着ろ!」

女子生徒C「めっちゃ出ベソです! あんな出ベソ見たことない! まるでドラ〇もんのジャ〇アンくらいの典型的な出ベソです! レアすぎます! 写真撮りましょう!」

生徒A「いや、あの女子、どこに反応してるの!? 頭おかしいんじゃない!?」

生徒B「深くお詫び申し上げます、僕のこの出ベソに誓って!」

生徒A「いやオマエは何に誓ってるの。いいから早く服着て。はい、着た。下着着て、シャツ着て、はいズボン履いて、セーター着て、マフラー巻いて、コート着て、ニット帽を……って、いやそこまで着こまんでいい! 今もう春! いやホッカイロとか貼らんでいいから!」

生徒B「お詫び申し上げます! 暑ッ! 暑ッ!」

生徒A「我慢大会みたいになってるから! てかいい加減話進まないなこれ。アシスタントをテーマにした会話劇を書く予定やなかったん!?」

生徒B「いやぁ、途中からどうにも収集つかなくなって。これならいっそボケ倒すしかないなーって思って」

生徒A「わからんて。ボケの次元がイリュージョン過ぎて引くわ普通に。てか先生、きた! ゴッツイ一眼レフ持って教室入ってきた!」

先生「おーい、ここに天然記念物レベルの出ベソがあるって聞いたんだが、どこだー? ギネス世界記録級だとか聞いたぞー」

生徒A「しかも話に尾ひれがついてる! いよいよ収集つかなくなってるやん!」

生徒B「すみません、先生。そんな出ベソなんてここにはないです……」

先生「なんだとー! 騙したなぁ! せっかく俺が昨日ヤフオクで1円で競り落としたばかりの高級一眼レフが火を噴くところだったのに!」

生徒A「いやヤフオク1円ってそれ、競ってないですやん。むしろ送料めっちゃ取られて損するタイプのやつですやん」

SE:ボッ!

先生「おわーっ! 熱ッ! 熱ッ!」

生徒A「いや、本当に火を噴いたーっ! 1円で落札したいわく付きボロ一眼レフが火を!! バッテリーに難あり!!」

生徒B「おわーっ! 熱ッ! 熱ッ!」

生徒A「生徒Bのコートに燃え移ったー!」

生徒B「さすが天然素材、よく燃えますなぁ」

生徒A「いや感心してる場合か! 消防呼べ、消防を!」

先生「フゥーッ! 舌が痺れる辛さ! 豆腐もフワッフワ! やっぱ中華はこれじゃないと!」

生徒A「いやそれ麻婆! てか先生、燃えながらよくそんなん食べれるな」

女子生徒C「ほらー、よく見ておくのよ。これがあなたたちが来年入ることになる学校の先輩たちよ」

中学生E「えー、いやだー。あんな高校生になりたくなーい」

生徒A「いや、中坊じゃなくて消防呼べ!」

生徒B「"そこでは、あらゆる事が可能である。人は一瞬にして氷雲の上に飛躍し大循環の風を従へて北に旅する事もあれば、赤い花杯(はなさかずき)の下を行く蟻と語ることもできる。罪や、かなしみでさへそこでは聖(きよ)くきれいにかゞやいてゐる。"(※)」

生徒A「……はっ、え? 何それ? 何を引用したの?」

生徒B「宮沢賢治。イーハトーヴォの情景」

(※引用元)

生徒A「いや、わかるか!! 消防、早く消防を!! 早くしないと!! うわ、教室が大炎上!! こりゃマジで収集つかねぇーっ!!」


――放課後の教室。

生徒A「見て、これが俺が初めて描いた漫画。すごいやろ。学校が大炎上」

生徒B「クソつまんな」

生徒A「誰かアシスタントになってくれないかなーって思って」

女子生徒C「絶対イヤ」

(つづく)


※本作は、「アシスタント」というタイトルで作品を作るというお題のために制作した書き下ろしシナリオ作品です。

(画像出典:Free Images - Pixabay

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【作品、全文無料公開。投げ銭スタイルです】

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