見出し画像

退屈なファンドには刺激的な年、インデックス運用が活況An Exciting Year for Boring Funds. Indexes Are Booming.インデックス運用の強みはシンプルさと低コスト

2023年は「細身の強気相場」

今年は株式市場にとって面白く、エキサイティングであったことは間違いない。筆者が「スキニー・ブル・マーケット(細身の強気相場)」と呼ぶ、主要株価指数が史上最高値またはそれに近い水準にある市場は、ハイテク企業7社(マグニフィセントセブン = アップル<AAPL>、マイクロソフト<MSFT>、アルファベット<GOOG>、アマゾン・ドット・コム<AMZN>、メタ<META>(旧フェイスブック)、半導体大手エヌビディア<NVDA>、電気自動車(EV)大手テスラ<TSLA>)が席巻した。これらの銘柄がブームになることを十分承知していた投資家、あるいはツキが十分だった投資家は、大いなる好成果を収めた。しかし、良い年を過ごしたのは彼らだけではない。

ANGELA WEISS/AFP/ GETTY IMAGES

退屈な投資をした人々が勝ち組に

2023年の圧倒的勝ち組の中には、わざわざ個別銘柄を深く分析することなどしなかった投資家もいた。彼らは退屈極まりない、だが非常に重要な二つの投資を行った。彼らにも、投資実績を少しは楽しむ資格があるのだ。こうした投資家は年々増えており、市場が好調、不調、平凡であっても、彼らの投資が市場に占める割合は過去十数年間、毎年拡大してきた。

この投資とは何か。(市場全体の動きを表す指数に連動した成果を目指す)インデックスファンドだ。具体的には、S&P500指数に連動するファンドと、トータル・マーケット・インデックス・ファンド(大型株から小型株までを含む米国株式市場の時価総額をほぼ100%カバーする時価総額加重平均型の株価指数に連動するファンド)である。

インデックスファンドの成長は目覚ましい

確かに、インデックスファンドには個別株のようなワクワク感はない。しかし、ワクワク感がないのと同じくらい、人気も高まっている。本稿のチャートを見れば、インデックスファンドが(常時換金可能な)オープンエンド型株式ファンド市場でシェアを伸ばしていることが分かる。投資信託の評価を中心とする情報サービスを提供するモーニングスターから筆者が入手した数値によると、11月30日現在、オープンエンド型株式ファンド市場におけるS&P500指数連動ファンドとトータル・マーケット・インデックス・ファンドのシェアは計17.5%だ。2013年末の計8.76%から上昇しており、換言するとインデックスファンドの市場シェアは10年弱で倍増したことになる。

2番目のチャートは、これら2種類のインデックスファンドにどれだけの新規投資資金が流入したかを示す純流入額である。トータル・マーケット・ファンドの運用資産残高はS&P500指数連動ファンドの3分の2以下だが、2013年から2022年までのトータル・マーケット・ファンドの資金流入額3913億ドルは、S&P500指数連動ファンドの資金流入額3832億ドルを上回っている。

先駆者はバンガードのS&P500指数連動ファンド

S&P500指数連動ファンドの運用資産残高がトータル・マーケット・ファンドよりも目立って大きい理由は、トータル・マーケット・ファンドが始まる約16年前に、最初の個人投資家向けS&P500指数連動ファンドが設定されたことによる。この最初のS&P500指数連動ファンドは、ご存知の方も多いと思うが、世界最大級の資産運用会社バンガードの創業者ジャック・ボーグル氏によって、1976年にバンガードが設定したものだ。モーニングスターによれば、11月30日現在、S&P500指数連動ファンドの運用資産残高は2兆7000億ドルを超えている。

利点は低コスト

これらのファンドの大きなセールスポイントは、多くの投資家やファンドマネジャーがS&P500指数をベンチマークとしていることだ。そのため、わずかな管理手数料でS&P500指数連動ファンドを購入できれば、運用会社の大半の運用成果を上回ることが可能だ。バンガードはバンガード500インデックス・ファンド・アドミラル・シェアズ<VFIAX>に管理手数料0.04%を課しているが、運用会社の諸経費はこれよりかなり高いためだ。

バンガードがトータル・マーケット・ファンドけん引

トータル・マーケット・ファンドは、S&P500指数連動ファンドよりもはるかに分散投資されており、何千もの銘柄を購入する。例えば、バンガードのトータル・マーケット・ファンドは11月30日現在3761銘柄を保有している(S&P500指数ファンドには500以上の銘柄があるが、これはアルファベットなど二つの株式クラスを持つ企業があるためだ)。

バンガードは1992年に最初のトータル・マーケット・インデックス・ファンドを発売した。モーニングスターによると、バンガードのトータル・マーケット・ファンドの運用資産は設定後の最初の月末までに1億1300万ドルに達し、その後も増え続けた。3年前には、全米初の1兆ドルファンドとなった。

S&P500指数のインデックスファンドの世界では激しい競争が繰り広げられているが、トータル・マーケット・ファンドの世界ではバンガードが独占状態にある。11月30日現在、バンガードのトータル・マーケット・ファンドの運用資産は1兆3900億ドルに上り、同種ファンドにおける市場シェアは80%を超える。

長年の個別銘柄投資よりもインデックスファンド

S&P500指数連動ファンドとトータル・マーケット・インデックス・ファンドのシェアは拡大が予想される。どちらもワクワク感に欠け、面白さもない。だが、シンプルで低コストのワンストップショッピングを提供している。筆者はバンガードが(VFIAXの前身である)ファースト・インベストメント・インデックス・トラストを設定する20年近く前から個別株を買い始めていたが、直近の保有銘柄の筆頭がS&P500ファンドとトータル・マーケット・インデックス・ファンドなのはそのためだ。本稿で取り上げた数値から判断すると、こうした投資の仕方は筆者だけではないだろう。

執筆者のアラン・スローン氏は独立系ビジネス・ジャーナリストであり、ビジネス・ジャーナリズムにおいて最高の栄誉と称されるジェラルド・ローブ賞を7度受賞している。

この記事は「バロンズ・ダイジェスト」で公開されている無料記事を転載したものです。