アグニの子

哀しみは果てに追いやって
増やした余白に砂を乗せ
ここから陸と生き物を放し
ここまで海と生き物を放す
日陰を作り雨雲を浮かべ
外来種の巣に水が入り込んだら
昔栄えた人間の為の灯台が
その足元から崩れてしまった海岸

哀しみは過去に置いていって
開いた隙間に溶岩を覗かせ
ここから空と生き物を放し
ここまで川と生き物を放す
大気を増やし稲妻が落ちた
プロメテウスの子が炭を埋めたら
滅びてしまった人間の汚れが
紫外線に蒸されて立ち昇る荒野

かつての沖縄で待っている
赤い海で待っている
かつての斜塔で待っている
緑の羽根で待っている
かつての黒海で待っている
青い肌で待っている

ヒノカグツチの子が薪を探して
昔栄えた人間の為の暖炉に
焚べる
次は人間の為ではなく

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