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まずは、「やってみる」「行ってみる」~会社員×コーヒー屋の働き方~

今回は、平日は会社員、副業でコーヒー屋を営む久保谷さんにお話を伺いました。
会社員×コーヒー屋の働き方、葛藤や悩みなど、リアルな部分をご紹介します。


場所は東京都中野区。幡ヶ谷駅の賑やかさから一変、住宅街に入ると静かで落ち着いた雰囲気。20分ほど歩くと、古民家の一角にパッと目を引く豪壮で美々しい看板。

久保谷さんはこちらで、会社員の傍ら、シェアロースター「こゝからはじまる、珈琲。」を運営しています。

こゝからはじまる、珈琲。はコーヒーを始めてみたい方のためのシェアスペース。

コーヒーへ興味を持つ方や、副業にしたいと考える方が増えている一方で、
・カフェを開きたいけど、始め方が分からない
・焙煎をしてみたいけど、体験できる場所がない
・業界未経験だけど、コーヒーを仕事にしてみたい
・お金やリスクについて不安
と、お悩みの方も多いでしょう。

コーヒー業界未経験の方に向けて「最小限のリスクで最大限のチャレンジを」というコンセプトのもと、焙煎や加工、パック詰め、ドリップパック製作、販売、珈琲教室など、コーヒーに関わる全てを体験することができます。

また、定期的に焙煎セミナーを行っています。焙煎の基礎知識や流れ、焙煎機(aillio)の特徴、使い方などを説明し、実際に焙煎を体験したあと試飲することができます。

全国的に見てシェアロースターは珍しく、またaillioを目的として、遠いところだと秋田や大阪から来てくださる方もいたんだとか!お客様のほとんどが、コーヒー業界未経験の方やコーヒーを副業にしたいと考えている方だそうです。

平日は会社員、副業でコーヒー屋を営む久保谷さん。
コーヒーを始めたきっかけはなんだったのでしょうか?

「学生時代からコーヒーは好きで、缶コーヒーのブラックコーヒーはよく飲んでいました。社会人になってさまざまなコーヒーを飲んでいるなかで、ライトアップコーヒーさんの浅煎りコーヒーのフルーティーさに感動。今までの「酸味=酸っぱい」「苦い=美味しい」という概念が覆されました。」

「そこがおもしろいなっていうところから入って、いろんなお店を巡っていて、自然と焙煎にも興味を持つようになりました。そのタイミングでたまたま家に焙煎器があって。普通の家に焙煎機ってないですよね(笑)」

お話を聞くと、奥様が購入された焙煎機だそう。

台湾製のQuest M3

「結婚したタイミングで焙煎機があったので、焙煎をやってみました。最初は失敗ばかりでしたが、徐々に上達していって、自分の焙煎したコーヒーを飲んでもらいたい、浅煎りコーヒーの魅力を伝えたいという思いが強くなりました。」

「将来的に2人でカフェやコーヒーをやれたらいいねって話をしていたんですけど、やはりメインが会社員なので副業がダメだったというのと、土日だけとか週1だけとかで働かせてくれるコーヒー屋がないっていうのが現状としてあって。どうしようかってときにSNSでコーヒー屋のお手伝いの募集を見つけました。それが藤池さんのGDATCOFFEEです。」

藤池さんはGDATCOFFEEの運営の傍ら、現在はこゝからはじまる、珈琲。のアドバイザーも務めています。

「当時は会社員を辞めてまでバリスタの道で生きていく自信がなかったので、会社員をやりながらまずは「やってみよう」という気持ちで応募して、月に1回手伝わせてもらいました。」

その後、店舗を持たない間借りカフェというスタイルを知り、「一度やってみてもいいかも」と思い立ったそう。2022年5月から阿佐ヶ谷にて「気分転換コーヒー」を週に一度開いています。

念願のコーヒー屋の開業ですが、始めてみて葛藤や悩みはありますか?

「未経験・異業種からの参入なのでコーヒー屋の知り合いもいないし、副業禁止の会社で副業をしているっていうところで呼べる人がいない。最初は友達が来てくれていましたが、継続して来てくれるのは難しい。」

「コーヒー屋さんは横のつながりが強くてフットワークが軽い方が多いですが、やっぱり未経験からコーヒー屋に入ってくる人っていうのはそこの集客の部分が難しいですね。僕たちは始めた当初は1日で2組とかお客さんが来ないっていうのもあった中で、いろいろ試行錯誤して、今はなんとか運営できるようなレベルにはなったんですけど…。」

実はコーヒー業界は横のつながりが強く、いい意味でも悪い意味でも少し閉鎖的な雰囲気がある。例えばお店を借りるときに、コーヒー屋同士だと「知り合いだから貸すよ」「少し安くするよ」となる場合もあるが、異業種からだとそういうやりとりや交渉などの横のつながりは無いに等しいかもしれない。

そういった状況の中で、自信を持ってコーヒーを出すのも勇気が必要になりますよね。

「僕たちでいうと、そのために藤池さんがいます(笑)最終的には、「これをお客さんに出して大丈夫かな」など本当に不安な部分が多いんですけど、実際にコーヒーのプロの方に「いけるじゃん」って言ってくれた。こういう後押しできる人がいると、踏み出せない人も一歩踏み出せるのかなと思います。そのためにアドバイザーとして藤池さんにいてもらっているのは本当にありがたい。」

「あとは、コーヒーは低単価なので諸々のコストを考えると利益を出すのが難しいです。」

今や、コンビニでコーヒーが100円で飲める時代。出勤前や休憩中のちょっとした時間で手軽に買うことができて、しかも美味しい。ライバルが幅広く数多い中で、600円のスペシャリティコーヒーをどうやって売っていくのだろう。

久保谷さんは将来的には会社員を辞めて、コーヒー1本でやっていきたいですか?

「正直なところ、店舗を構えてコーヒーをやるっていうのはちょっと厳しいかなとは思っています。やっぱり家賃とか現実的な問題を考えると、どうやったら利益を得られるのかなっていうのがリアルな部分。今はコーヒーをやっているけど、5年後にコーヒーをやっているか分からない。」

「なので、僕たちの最終のゴールとしては自由な働き方をしたいなっていうのが一つあって。自分たちのライフスタイルに合わせて働き方を変えていきたい。」

実は、数ヶ月後に副業可のIT会社に転職をする久保谷さん。新たに得るものがあるのではと、転職を決意したそう。

働き方改革や働き方の多様化が進む一方で、副業がNGの会社はまだまだ多い。それにより副業をしたくてもできず、踏みとどまっている人も多いですが、こゝからはじまる、珈琲。は今後どんな場所にしたいですか?

「副業を応援するプラットフォームにしたいと思っています。」

「シェアロースターを調べている方がよくおっしゃるのですが、ここは他社に比べて値段をとても安く設定しています。その理由は、みなさんを応援したいという気持ち。例えば、お店や間借りをするときに1日2万円ほどかかる。さらに自家焙煎すると、シェアロースターだけで8000円くらいかかって、どんどん経費がかかってしまう。すると、やりたいのにやれない方が多い。なので最低限の利益はとらせてもらって、あとは還元できるようにっていう形にしています。」

「やりたいけどやれない、踏み出せない方がいらっしゃったときに後押しできる場所。コミュニティーを作りたい。」

ここはじコミュニティー、とってもいいですね!

「そうなんですよ。ここに来る人って大工やDJなど本当にいろんな職種の人がいるので、そこを掛け合わせられたらいいなって。もう少し会員数を増やして、お客さん同士をつなげるプラットフォームっていうのを将来的にやっていきたい。」

「あとは、例えば開業される方がいらっしゃったときに、「休みの日に他の人に貸してもらえないですか?」っていう交渉できるような、横のつながりですね。ハブ的な役割を担えるようなところを将来的には目指していきたい。今後の展望です。」

ここまで久保谷さんのお話を聞いて、異業種からコーヒー業界への転職や副業はなかなか難しいものと感じました。
悩んでいる方に、なにか伝えたいことやアドバイスはありますか?

「こゝからはじまる、珈琲。に来る方は将来的にカフェをやりたい方、副業でやりたい方が多いのですが、みなさんとお話をしていると、なぜか裸一貫で飛び込む方が多い。過去の経験や本業の得意を活かさないで、コーヒーだけで生きていこうとする方が多いと感じます。」

「まずはリスクがない状態でやることの方がいいかな。いきなり「会社を辞めます」「お店を出します」「焙煎器を借ります」だと集客が難しいので、まずは副業として間借りをやってみるとか、豆を販売してみるとか、着実なステップを踏んでやっていくように、徐々にステップアップした方がいいのかなと。」

まずはやってみたらいんじゃないかなっていうのはあります。やってみると視野が広がったり、新しい出会いがあったりするので。コーヒーに限らずですが、やってみると現実問題にぶつかるのでそこをどうやって打破していくのかをクリアできれば踏み出した方がいいかな。」

「僕たちは「何個仕事していてもいいんじゃないかな」と思っています。僕は会社員の営業職×焙煎師という形でやっていて、喋るのが得意なので接客に活かしていたりとか。過去の経験を活かしたお店作りや売り方、コンセプトを作っていくといい。そこを伸ばしていけば、価格に左右されずに戦えるんじゃないかなってすごく思っています。こゝからはじまる、珈琲。では、そういうところをみなさんに普及できるような場所にしていきたいです。」



今回、久保谷さんとお話をして驚いたことは、
「まずはやってみる」「行ってみる」「やってみよう」という行動力。

焙煎に興味を持って、焙煎を「やってみよう」
SNSでお手伝いの募集を見つけて「行ってみよう」
店舗を持たない「間借り」というスタイルを知り、「一度やってみていいかも」

久保谷さんこの行動力は、なかなかできるものではないと思います。

自分のやりたいことに挑戦をするときや初めてのことを経験するとき、心のどこかで「失敗したらどうしよう」「理想と違っていたらどうしよう」「失敗が怖い」など保守的な考えが働いてしまい、行動に移せない方も多いでしょう。

「今はコーヒーをやっているけど、5年後にコーヒーをやっているか分からない。」と言う久保谷さん。

でも、今やりたいことだから、今やってみる。行ってみる。

こゝからはじまる、珈琲。は、みなさんが踏み出せずにいる一歩を、背中を、ちょんと押してくれる場所です。
みなさんの珈琲を、こゝからはじめてみませんか。という想いが込められています。

みなさんを応援したいという久保谷さんの優しい気持ちが伝わってきます。

副業としてコーヒー業界へ飛び込むのをためらっている方、
今、やってみませんか?


こゝからはじまる、珈琲。公式Instagram:


2023年10月16日取材
ライター 古川


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