血を吸う者は [小説]

俺は血を吸う。俺の正体が何かはあえて言わないでおいてやる。ちょっとヒントを出すならば鬼って言われたこともあったかもな、

あっちなみにこんな口調だが、俺は女だ、男じゃねぇ、まあわざわざ言う必要もないことだがな。さて、日も落ちたことだし、ちょっくら血を吸いに行くとしようか、ケケッ、待ってろよ獲物ども。
おっ、あいつは何か良さげだな、部活帰りの女子高生か? まあそんなことはどうでも良い、今日はあいつの血をいただくとするか。ああ、それと余談だが、俺の仲間はこの世で一番人間を殺してるぜ、おそらくなぁ、まあ安心しろよ、吸われたからって確実に死ぬわけじゃねぇ、死ぬかもしれねぇってだけだ、ケケッ、今度の女はどうなるかなぁ?
女の血を吸う前にちょっと俺の仕事について教えてやるか、俺たちの仕事はいかにバレずに血を吸うかってことに懸かってんだ、まあバレちまうこともあるがなぁ、だからおめえらも朝起きたら知らない内に血を抜かれてたってこともあるかもしれねぇぜ、ケケッ、精々気を付けるこったなぁ、
さて、いよいよ仕事の時だぜ、どっから吸ってやろうかなぁ、腕か? 腰か?ケケッ、やっぱり首だよなぁ、そうだよなぁ、それじゃあ行くぜ! うおぉぉっ──っ! なんだ!? あいつ!? こっちを見てやがる!?!? バレたかっ!? いや、そんなはずはねぇ、ここは一旦待とう──
──ふぅ、大丈夫だったようだな、さてと気を取り直してちょいと血を貰うとするか──
──はぁ~うまかったぜぇ~これで今夜も生きてけるな──
──三日後──
よしっ、そろそろ喉も渇いてきたし、今夜は狩りに出掛けるとするか──キャンプ場──
おっ! なんだ? 人がぞろぞろいやがる、ケケッ、どうしても俺に血を吸われたいらしいなぁ、楽しみだぜ、さて、どいつにしようかなぁ~、よしっ決めた! あいつにしよう、男の血は好きじゃねぇんだがたまにはいいだろ、よしっ闇に紛れて突撃だ! うおぉぉ──っ! なんだっ!? この臭いは! 鼻に効きやがる!? にんにくでも食ったのか!? 何かはわからねぇがしょうがねぇ、今夜は退散だ、命拾いしたなぁ! 人間どもっ!
──はぁ、喉が渇いたぜぇ、前回は失敗しちまったからなぁ、今回はなんとしても血を吸わないとな、バレたとしてもだ、ケケッ、不運だなぁ次に狙われる奴は、なんたって俺の本気を見せられるんだからなぁ、可哀想で泣けてくるぜ、今度ばかり死んじまうかもしれねぇなぁ、
──さぁ狩りの時間だぁ、おっ! あいつはこの前の女子高生か? 今夜は友達も一緒みたいだなぁ、ケケッ、本当に不運だったみてぇだなぁ、俺に二度ともみつかっちまうなんて、でもまあ遠慮はしねぇぜ、お前の血はうまかったからなぁ、楽しみだぜ!
──よし、一人になるのを見計らって──今だ! 悲しいなぁ、女よ、お前の血は俺のもんだぁ! 首に狙いを定めて……よし! 成功だ、後は吸うだけ──
──はぁ~やっぱうまいぜ! せっかくだからもうちょっと貰ってやるよ、いっただっきま──
「ちょっと美紗~、聞いてよ」
──っな! もう一人が戻ってきやがった! やられたぜ! 早く戻らなければ!
「ねぇ、聞いてる? トイレットペーパーが──って美紗! 首元! 首元!」
っ! やばい! やめろ! それだけはやめろ! やめてくれぇ~~~!
──パチン!──

「いったぁ~い、マジ最悪~、またやられたんだけどぉ~」
「ははっ、どんまいどんまい」


──ここにまた一つ、小さな命が失われた。

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