国立新美術館「佐藤可士和展」から知る、アイコニック・ブランディング
現在、国立新美術館で開催されている「佐藤可士和展」。当初、2020年9月16日〜12月14日の予定でしたが、2021年2月3日(水)〜5月10日(月)に会期変更となりました。
ご存知の方も多くいらっしゃるかと思いますが、TVCMはもちろん、生活していたら一度は見たことがあるようなものを、数多くデザインされております。有名どころですと、ユニクロや楽天など。
全然デザインを知らない方でも楽しめますし、デザインをかじっているわたしも改めて拝見させていただき、色々と学びになりました。
本記事では、個展の一部内容と、可士和さんのアイコニック・ブランディングの考えについてご紹介したいと思います。
名前は聞いたことあるけど……
まずは改めて、プロフィールを少しご紹介いたします。
佐藤可士和
クリエイティブディレクター/アートディレクター
1965年東京生。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒。株式会社博報堂を経て2000年独立。同年クリエイティブスタジオ「SAMURAI」設立。
ブランド戦略のトータルプロデューサーとして、コンセプトの構築からコミュニケーション計画の設計、ビジュアル開発、空間設計、デザインコンサルティングまで、強力なクリエイティビティによる一気通貫した仕事は、多方面より高い評価を得ている。グローバル社会に新しい視点を提示する、日本を代表するクリエーター。
(SAMURAI CO., LTD. プロフィールより一部抜粋)
書籍も出版しており、佐藤可士和の打ち合わせ (日経ビジネス人文庫) は打ち合わせを超えた、仕事術を体系立てて知ることができます。
国立新美術館「佐藤可士和展」の概要
■特設サイト
がありますので、概要を詳しく知りたい方はご参照ください。予めご一読されると、各展示エリア冒頭でストーリーを読み込まなくて済みます。
リンク先はこちら
■おすすめの持ち物
1.音声ガイドを自分のスマホで聞けますので、イヤフォンを持参されるとよいかと思います。
2.また、撮影可能エリアもありますので、もしばっちり撮影されたい方はカメラをお持ちください。
展示3:ロゴはコミュニケーション設計の要
やっと個展の内容をご紹介いたします!
久々の外出ということもありますが、画面越しでは感じ取れない「リアル」に触れるという体験が大変新鮮でした。
そのリアルは平面だけでなく、立体的に展示されているものが数多くありました。いくつかロゴを例に上げさせていただきます。
・HondaNの「N」→ メタリックの巨大なNは前を通ると自身を映し出し、見る角度で目に入ってくる反射物に変化があります。
・ヤンマーFLYING-Yの「Y」→ 中心部と端で厚みが異なるデザインで、プラスチック素材の物体が滑らかで艶やか。こちらも眺める角度で表情がかわります。
・今治タオル→ ポスターかと思いきや、タオル生地で3mぐらいの巨大な一枚布がポスターのようになってます。隣にはユニクロのロゴが展示されているのですが、引けをとりません。
他にも楽天のロゴがくり抜かれおり映像が流れたり、まさに現会場の国立新美術館のロゴも展示されています。
また、興味深いのがロゴ設計図の緻密さ。ありとあらゆる利用想定をされているのは、さまざまな展示物を通して感じ取れます。
ロゴはコミュニケーション設計の要にしており、この展示では企業や組織の本質を表現する素材で製作されています。
展示6:新しいアートワークシリーズの対比
こちらはかなり前衛的な印象でした。
FLOW
白い画面に迸る鮮やかな青のインクで描かれるドローイング。紙に一切触れず動力と重力で描き、パワーを可視化する試みで筆跡のないドローイングです。
LINES
鮮やかな赤青白の直線で構成されており、美は何かを普遍的な問いかけをテーマにしています。完全な直線は自然界には存在しません、人間の頭の中だけで作られているのです。人間の概念の象徴であり、形にする実験であり、作品で追いかけています。
シンプルで明快なアイコンとして提示する
音声ガイドの中で、ユニクロを世界に打ち出す際に日本発ということをエッジにしていきたいか、代表取締役会長兼社長の柳井さんに最初にヒアリングしたそうです。その答えは、日本の正確なものづくり、多様な文化背景、ミニマミズム認識などを際立たせ、世界で戦っていきたいので日本発としたい、との回答でした。
それを踏まえ、どんなロゴを見たらインパクトがあるか、世界の街の景色を想像して考え、直感的にカタカナはどうかと思ったそうです。なぜなら、カタカナは外来語を日本語として表現するときに使います。それが、アメリカで生まれたカジュアルファッションを日本流に再解釈し、世界に大して打ち出すことが、もっとも本質的だと思えたからでした。
また、今回の個展にあたり、penのインタビューにこのように語っています。
「ブランディングとは、社会の中での存在感を戦略的に構築していく作業。ですから、その対象の本質的価値をつかんで研ぎ澄ませ、シンプルで明快なアイコンとして提示すると、ひと目で多くの人に伝わり非常に効果的なんです」
pen【佐藤可士和のクリエイションの秘密】より一部抜粋
ユニクロのロゴを代表例とさせて頂きましたが、可士和さんの手がけた全てが、この本質的価値を研ぎ澄ませ、明快なアイコンとして提示する「アイコニック・ブランディング」の考えにに沿って構成されているのです。
さいごに
とにかく、目でみて楽しむことをおすすめいたします!休日は少し混んでましたが、10分程度の待ち時間で入ることが出来ました。
また、休憩室に展示されている三井物産との取り組みも大変興味深いものでした。今までインナー向きに統一されたものはあったが、社外には分かりにくい三井物産のスローガン。それを全社的な運動として取り組み、総合商社の中で差別化された強みを明確したのです。その取り組みとして「表現の解像度」をwhatを固めるのではなく、ある程度絞れたらhowを考え始めることで、whatがクリアになる、などプロセスが語られています。
実際にはご紹介出来ていないことが大半ですので、是非日本を代表する作品たちに再会し、直接感じるのはいかがでしょうか。
会期
※会期変更 2021年2月3日(水)~5月10日(月)毎週火曜日休館
※ただし、2月23日(火・祝)、5月4日(火・祝)は開館、2月24日(水)は休館
開館時間
10:00~18:00
※毎週金・土曜日は20:00まで 当面の間、夜間開館は行いません。
※入場は閉館の30分前まで
詳細は新国立美術館のサイトをご確認ください
この記事が参加している募集
最近イベントに参加できてないので、デザインやビジネスのイベントがあったら行きたいです。おすすめあったら教えてくださいー