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僕が一般企業からNPO法人へ転職した理由

2023年11月、僕は一般企業からNPO法人へ転職した。
職種はサステナビリティ推進から、
財務戦略全般(資金調達戦略、計画予算マネジメント、寄付者コミュニケーション)になり、
働き方は、週5・平均残業時間45時間から週4・残業無になった。
また、前の企業から一部の業務について委託を受け、豪州で植林する会社の経営管理もしている。

以前以下の記事で紹介した通り、僕は2022年7月に東京から広島県尾道市に移住し、それに伴い一回転職している。

あれから1年ちょっとしか経っていない&自分の望む職種を継続することができていたのになぜまた転職?と思われるかもしれないが、尾道移住後の1年数カ月で自分の価値観が大きく変わってきたのが要因だ。
ここではどのように自分の価値観が変わり、働き方を変えるに至ったのかを書き残しておきたい。

どのように価値観が変わり、働き方を変えるに至ったのか

①環境のサステナビリティから風土のサステナビリティへ

前職の東京の会社では主に環境の仕事をフルリモートでしており、自分の所属する企業が排出する温室効果ガスを減らすための仕事をしてきた。
気候変動の問題は僕が声を大にするまでもなく、世界で最も大きな社会課題の一つである。そこに取り組めることにやりがいもあったが、仕事を進めるにつれ、問題が大きすぎるがゆえに、自分が生み出せる社会的インパクトの小ささや、自分の暮らしと環境課題の繋がりの感じづらさにより、虚無感が芽生え始めた。
これは自然豊かな尾道で暮らし始めたことで、「グローバルな環境」ではなく、自分が存在する「ローカルな環境(風土)」に興味が移ってきたからに他ならない。
自分は働くことを通じてではなく、暮らすことを通じて、風土のサステナビリティを紡いでいこうと思い始めたのである。

②尾道と関わる余白の少なさへのストレス

尾道で生きている人たちは、お店をやったり、まちづくりに積極的にかかわったり、自分でものづくりをしていたりしていて、尾道という舞台を通じて、自分を表現して生きている人が多く、そういう人たちにも非常に影響を受けている。
そのように自分を表現している素敵な友人にも恵まれる中、平日に何か楽しげな会が催される場合はお誘いを断らずを得ず、このまま東京時間の中で忙しく働き、休日のみ尾道と関わるスタイルでいいのかと疑問を持つようになった。
尾道で出会った人には「暇になるために努力している」という人も多く、そういう余白が、尾道での新たな&予期せぬ展開を生んでいく可能性があることを知れたのも、働くペースをもっとスローにしようと思ったきっかけになった。
ちなみに今は働き方を変えて生まれた余暇で、購入した古民家のDIYもやっているので興味があれば覗いてみてほしい。

③非営利セクター(NPO法人)への関心の移行

最後に、企業のサステナビリティの世界から一旦離れてみたいという気持ちが強くなってきたのも要因だ。2015年の国連サミットでSDGsが採択されてから、欧州を中心にルールメイキングがされ、日本でも一気にサステナビリティ経営(社会的インパクトを創造しながら持続的な成長を目指す経営スタイル)が広まった。
2017年には世界最大級の機関投資家であるGPIFもESG投資(社会・環境・ガバナンスに配慮した投資)を開始し、お金の流れが社会課題を解決する方向により流れ、新しい資本主義が始まっていくぞという期待感があった。
ただ未だに社会的インパクトを志向する長期投資家の割合は小さく、ほとんどの機関投資家が短期的な利益を強く求める構造は変わっていない。

社会的インパクトをいくら創出しても、機関投資家からは「で、それがどのように利益に繋がるの?」というプレッシャーをかけられ、株式会社のシステム上、経営者はそのプレッシャーから逃れることはできない。
別に機関投資家が悪い、利益を生み出すことが悪い、言いなりになる経営者が悪いと言っているのではなく、利益至上主義が生み出す世の中のひずみ(長時間労働、それによる家庭内の不和、ハラスメント、不正、環境破壊、サプライヤーの人権問題、格差)がどんどん大きくなっていくことを危惧しているだけである。

今まではこのシステムを少しでも変えていくことにやりがいを見出していたが、ちょっと疲れた&自分なりに成果も出してこれたという自負もあり、今回、利益を第一に置く世界から離れ、社会的インパクト創出に専念できるNPO法人で働いてみたいと思うようになった。

NPO法人でやっていきたいこと

自分がNPO法人でやっていきたいことは一つ。自分もいまだにそう思っているのだが、やはりNPO法人の活動は理念や思い先行型が多く、自分が寄付したお金がどのように社会的インパクトを生み出しているのかが見えづらい。それが怪しさやうさん臭さを生んでしまっており、ソーシャルセクターに人やお金が集まらない要因となっている。

企業の利益第一主義が好きじゃないのは前述の通りだが、一方で企業は利益を求める投資家(お金の出し手)への説明責任を果たすという意味では、NPO法人よりも実践的で優れていると思う。

それでは、NPO法人が寄付者(お金の出し手)に果たすべき説明責任、お返しすべきものとは何だろうか。それは、「社会貢献実感」であると僕は思っている。自分のお金が社会の役に立っている、誰かの助けになっている、文化や自然を守っている、と感じたいから寄付をするからだ。

となれば、NPO法人が社会的インパクトの創出に本気で取り組むのは当然のこととして、寄付者からのお金に対する対価として社会的インパクトを計測、きちんとその成果をお伝えし、説明責任を果たすのはNPO法人の責務だと僕は思う。

NPO法人主語でいうと、
「問題をお伝えする→寄付を通じて応援してもらう→社会的インパクトを創出する→インパクトを計測する→寄付者にお伝えする→更なる寄付や別のアクションを起こしてもらう」

寄付者主語でいうと、
「問題を知る→寄付する→社会的インパクトの成果を知る→社会貢献実感を得る→自分が社会を変えていける実感を持つ→さらに寄付する、または、別のアクションを自ら行うようになる」

この循環を回し、大きくしていくことが、ひとりひとりが自分らしく生きられる豊かな社会に繋がるはず。
自分はNPO法人の財務戦略を考える立場として、来年以降ここに力を注いでいきたい。

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