『ドーン』を読み終えて
『ドーン』を読了しました。
「個人」と「分人」との違いは何か、物語を通じて、考えられるようになっていて、とても良かったです。
この作品の重要なキーワードのひとつは、「顔」だと思います。
固定された、たったひとつの自分を生きる「個人」と、関わる相手によって、違う自分を生きられる「分人」では、「分人」の方が、表情豊かな「顔」を見せているはずです。
物語の中では、「可塑整形」という技術もあり、その人であることを証明する「顔」に、自由を与えられたら、生きやすくなる人もいれば、どのようにして、他者と信頼関係を築けば良いか、戸惑う人もいるだろうなと思いました。
私は、平野啓一郎さんが作る愛の物語が大好きです。
人類初の有人火星探査と、アメリカ大統領選という、二つの大きな流れがある、この壮大な物語にも、愛が欠かせません。
自分の与り知らない分人と向き合い、何とか愛を守ろうとする明日人と今日子の二人の道のりが、幸せなものでありますように。
過去を未来で変えるために、誠実なディヴィジュアルを差し出した、あの登場人物にも、明るい未来が待っていますように。
『ドーン』|平野啓一郎公式サイト
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