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隣町の漱石さん


私が住む新宿にはかなりの町名が残っている。

1960年代に住所の合理化をはかる政府の対応に反発した町名保存運動の結果だ。

新宿といえば都庁、歌舞伎町、高層ビル郡、広がり続ける新宿駅などおおよそ伝統が少ない大都会の中心だと思われる方も多いだろうが、
23区の内、6区で暮らしを営んだ僕から見ても新宿の北東側は時代が入り混ざる独特のエリアだ。下町風情あり、現代的洗練もあり、昔から住んでいる方々の伝統がしっかりと生き続けている。
現存する東京原風景。

90を超える町名があり、江戸時代からの名残りを残す。未だに住所表示が曖昧な所さえある。こんな場所は23区では新宿区と千代田区くらい。
これは恐らく、地域愛が強い人が多く、声が大きく(発言力)、昔からのお金持ち(政治力)が多かったからだと思う。

大江戸線若松河田駅から牛込神楽坂までの3駅間の裏道をゆっくり散歩すると、小笠原伯爵邸を皮切りに随所に保存された古い建物があるだけではなく、今現在お住まいの住宅からも夏目漱石の小説的雰囲気が出てたりする。魚屋、花屋、八百屋など個人の小さなお店がたくさんあり、人情や愛に溢れてる。

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大久保通りから夏目坂を降り早稲田方面へぬける途中の町名は喜久井町。ここは地元の名主夏目家の家紋である「井桁に菊」にちなんで名付けられた。菊井 キクイ 喜久井 となったらしい。
その先には近年できた漱石山房記念館、草間彌生美術館など現代的な美しい建物がある。 

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僕は時間がある1人の日は漱石山房記念館の図書室に通って小説を読んでいる。


そしてさらに夏目漱石が通った神楽坂の裏道を散策するのは楽しいが、これを挟むと長くなり過ぎるのでまた別の機会に、、 


新宿は3丁目の伊勢丹や高島屋、南口のニューマンもいいが、この千代田区、文京区寄りの新宿区は新たな発見がたくさん転がっている。
長らく住んでいると忘れてしまうが、こうして書き始めると歴史、文学好きにはたまらない町だ。夏目漱石終焉の地跡に立つ漱石山房記念館周辺には微笑を浮かべながらシャッターを押しているおじさま(紳士)が多い。

また、あまり注目する人は少ないだろうがこの界隈のアップダウン(高低差)は半端ではない。山手線内で新宿駅は最も標高が高く、新宿区戸山公園からは富士山が美しく見えたそうだ。地盤がしっかりしている為か有名建築家や芸術家の御自宅も神楽坂周辺には多い。
つぎに標高が高い港区愛宕町(芝公園周辺)まで外苑東通りで繋がっており、この道だけが唯一平坦で急な坂がない。この平坦な道を早稲田、四谷、赤坂御所、青山、乃木坂、六本木、東京タワー、愛宕神社の順にサイクリングする8kmほどのコースは東京を堪能できるおすすめの道だ。


少しマイナーな新宿の楽しみ方をご紹介いたしました。

地名は記憶

残すのは合理的ではないかもしれないが、現代が忘れたなにかを伝えてくれている。


おわり





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