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ライオンのおやつ(9-50)

連日ですが、本屋大賞候補作になっている小川糸氏の作品を読み終えました。

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余命を告げられた雫は、残りの日々を瀬戸内の島のホスピスで過ごすことに決めた。そこでは毎週日曜日、入居者がもう一度食べたい思い出のおやつをリクエストできる「おやつの時間」があった―。毎日をもっと大切にしたくなる物語。(「BOOK」データベースより)

物語は33歳の海野雫が余命を宣告され、闘病するも快方に向かわないと認め、地元の人が「レモン島」と呼ぶ瀬戸内海の小さな島にある「ライオンの家」というホスピスに入居を決意、代表のマドンナからの歓迎する旨の手紙から始まります。

穏やかな瀬戸内海の風景の中、基本的暮らしは食べることと寝ることなのですが、毎週日曜日には入居者がリクエストしたおやつが出る「おやつ時間」があり、皆が楽しみにしています。

雫は「六花」という犬と仲良くなることで、犬を買いたかったという夢を叶え、次第に「ライオンの家」の入居者や島でワイン作りをするタヒチ君とも親しくなっていきます。

しかし現実では入居者が次々と亡くなっていき、雫も心身ともに弱っていき、自身も最後に向けて静かに死へと向かいます。

あって当たり前だと思っていたものが、いかに貴重な存在か。確かに私は、そのことを癌になってから思い知ったのだ。
「ごめんなさい」
自分の運命ばかりを呪ってばかりいた過去の自分を反省した。そして神さまに、感謝の気持ちを伝えたくなった。p96
「雫さん、よく眠り、心と体を温め、よく笑うことです。いい人生を送りましょうね。」そっと肩にのせられたマドンナの手が、じんわりと温かかった。p116

私の母がよく「死が近づくと、亡くなった身内が目の前に出てくるようになる」と言っていますが、雫も死の間際会いたかった人たちに次々と会うことができ、連絡を絶えていた育ての父(実叔父)とともに、彼女がリクエストしたおやつを楽しみつつこの世と別れます。

ホスピスという終末医療の現場やそこに出向くボランティア、地元との繋がりの大切をフィクションではありますが、とても優しく語ってくれている作品でした。

私自身もそう遠くない現実です。高齢者はもとより、若い方にも読んでいただきたいと、書店員さんたちは選んだのだと思います。

深夜から雪が降り、久しぶりに積もりました。今は止んでいますが、寒い1日になりそうです。冬です。皆さんの地域はいかがでしょうね。

ぼんやり窓の外を眺める時間を持てる幸せを感じます。

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