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最後の手紙(22-50)

目まぐるしい気圧配置の変化に、いつもよりひどい頭痛に悩まされながらも、寂しくてこの本を読み終えました。

近代日本文学から現代日本文学を数多くイタリア語に翻訳し、村上春樹氏「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」の翻訳で第21回野間文芸翻訳賞を受賞したアントニエッタ・パストーレ氏の初の小説です。

別れた夫の思い出のみを胸に戦後を生きた女性。その遺品の手紙が語り出す、悲しい真実とは。
イタリア人の目を通して描く、実話に基づいた「原爆と戦争」の傷跡――
日本人男性と結婚したイタリア人の著者は、結婚の挨拶に広島を訪れた。
義理の叔母ゆり子と話すうち、別れた夫を想い続けるゆり子に興味をひかれていく。深く愛し合っていたふたりは、なぜ引き裂かれてしまったのか。(Amazon内容紹介より)

本書は2016年にイタリアで発表、日本では2019年8月に日本語訳が発表されました。

1945年8月6日広島に投下された原爆は、数多くの爪痕を今なお残していますが、戦後75年ともなると、シニアと呼ばれる私たちでさえ、戦争は遠い過去になってきています。

そんな中、戦争被害国の一つであるイタリア人の作家が、日本の戦争、特に原爆よる身体的被害だけでなく、精神的にも多くのものをなくしてきたことを短期間とはいえ、身内となり、その身内から知り得たことを実体験に基づく物語としてですが、公表してくれたことはとても意味深いと思います。

さらにこの作品を読んだ後、2011年の東日本大震災で起きた原発事故による風評被害が、未だ癒えない地方があることを考えると、日本人ならではの良さと根強く残る忌み嫌う気質をもう一度振り返る必要性を強く感じます。

イタリア語での原書はわかりませんが、翻訳された本書は著者が日本の外国語大学の教職をとっていただけに、とても読みやすい文章で成り立っています。この文章なら中学生でも理解できるのではないかと思うほどです。

しばらく休校になっていた学校が多くの地方で、再開されているようです。休校中に養われた読書を継続するのにいい作品ではないかとも思いました。

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