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再会から始まる中高年の恋愛

第32回山本周五郎賞受賞作で第161回直木賞候補にもなった朝倉かすみ氏の作品を読みました。

朝霞、新座、志木―。家庭を持ってもこのへんに住む元女子たち。元男子の青砥も、このへんで育ち、働き、老いぼれていく連中のひとりである。須藤とは、病院の売店で再会した。中学時代にコクって振られた、芯の太い元女子だ。50年生きてきた男と女には、老いた家族や過去もあり、危うくて静かな世界が縷々と流れる―。心のすき間を埋めるような感情のうねりを、求めあう熱情を、生きる哀しみを、圧倒的な筆致で描く、大人の恋愛小説。 (「BOOK」データベースより)


同じ時期に検査を受け、今の所は問題なかった青砥と、進行しているがんが見つかるという結果になった須藤の正反対な結果が、2人の距離をグッと縮めます。

青砥の方は須藤との出会いで前を向いて生きる力をもらいますが、須藤は抗がん剤治療による体力の消耗等により、青砥からの与えられる愛情がどんどん負担になっていきます。

彼女の深い思いに気づかず、須藤との新しい人生を夢見るようになった青砥はプロポーズをしますが、がんの進行が早まり、青砥との一緒に生きていくことは束の間の夢だと悟っている須藤は、別れを告げるのです。

LINE、ユニクロ、コンビニ、病院検査と、現代的小道具を上手に使いながら、切ない中高年の思いを見事に描き、本当に切なく狂おしい、それでいて可笑しくもある、中高年の現実にありそうな物語が出来上がっていました。

今日も読んでいただき、ありがとうございます。

本日の作品はシニアはもちろん、再会から生まれる恋愛小説として若い方にも理解してもらうと嬉しい作品だと思います。


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