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強い衝撃と私なりの覚悟 (28-50)

本当なら東京五輪で日本中が沸いているはずだった今日、小康状態であろうと予想していたcovid-19の感染状況の凄さに今更ながら、再び恐怖を感じています。

そして、昨夜読み終えた薬丸岳氏の新刊にも、強い衝撃を受けてしばらく何も手につきませんでした。

一夜明けて冷静にその作品に向き合って、この作品を皆さんに紹介したいと思います。

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飲酒運転中、何かに乗り上げた衝撃を受けるも、恐怖のあまり走り去ってしまった大学生の籬翔太。翌日、一人の老女の命を奪ってしまったことを知る。自分の未来、家族の幸せ、恋人の笑顔―。失うものの大きさに、罪から目をそらし続ける翔太に下されたのは、懲役四年を超える実刑だった。一方、被害者の夫である法輪二三久は、“ある思い”を胸に翔太の出所を待ち続けていた。贖罪の在り方を問う、慟哭の傑作長編。
(「BOOK」データベースより)

車はとても非常に便利な道具で、特に私の住む田舎町では必須なのですが、反面とても恐ろしい凶器で、一瞬にしてその命を殺してしまうことは皆さんご存知のとおりです。交通事故は毎日どこかで起こっていて、亡くなっている方も1人とかではありません。

さらにあれほど注意喚起されているにもかかわらず、飲酒運転で検挙される者が後を経ちません。今日紹介する作品のようにほんの一瞬の気の緩みから飲酒運転、よそ見運転のため事故を起こし命を奪った例は少なくないと思います。

本作では事故を起こした青年が人を引いたことを自分自身で否定し、逃げてしまったことから問題は大きくなりました。そのため実刑判決を受け、受刑して刑期を終えると自身の家族はバラバラになっているのです。

最近は特に報道だけでなく、SNS等でのバッシングが異常であるため、罪を犯した本人以上に家族が非難されることも多いでしょう。

そういう現代の非情さや、今の若者特有の自虐的思考はいつものことだと捉えられ、その点が作品になることが多いのですが、本作はそれ以上のものがあります。

それは事故を起こした青年の告解を、妻を事故で失った被害者の夫の戦争体験の告解により、お互いの罪の深さを確かめた点です。

被害者の夫は先の太平洋戦争下において多くの中国人等を殺めていました。それは戦時下だから仕方ない、といった気休めな言葉ではとても忘れることのできない強烈な苦悩だったのです。

戦後自分の不注意から幼い娘を亡くし、雨の深夜高熱を出した夫のため、氷を買いに出て妻はひき逃げ事故に遭う、という苦悩が重なっていました。

認知症を患い自らの命もわずかとなった被害者の夫 二三久が、加害者 翔太を前にして告解する場面は生温いという意見もあるでしょうが、私には救いの場面に思えました。

決して起きてはならない、戦争と交通事故。

方法は違えど、殺人に違いないのなら、人間なら回避する力があるはずです。その力を決して亡くしてはならないと強く思いました。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

こちら今日も雨です。皆様どうか事故にお気をつけください。




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