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流浪の月(11-50)

昨夜読み終えたのは凪良ゆう氏の本屋大賞ノミネート作品。

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あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい―。再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人を巻き込みながら疾走を始める。(「BOOK」データベースより)

私にとってこの著者の初作品がとても衝撃的なものとなりました。

最近SNSによって知り合った若い男性に小中学生が軟禁されるという事件が多発しています。
今の私に対象の子どもが身近にいないので、事件を深く知ろうとしていなかったのですが、ニュースを聞く限りでは、被害者とされる子どもたちが男性の誘いに気軽に応じて、部屋に軟禁状態となり、子どもの保護者もかなり時間が経って連絡が取れないので被害届を出すという形のようです。

今回読んだ作品はSNSにより知り合った訳ではありませんが、父親の死により家族というものから見放された9歳の女子 家内更紗と、自身の男性的な発育と家庭との息苦しさに悩む男子大学生 佐伯文が、偶然に公園で知り合い、女子が現状から逃げるように男子学生の部屋に住み着きます。

2人は自由な暮らしを楽しみますが、世の中はそんな2人を見逃してはくれず、女子は伯母夫妻のもとに、男子学生は病状観察で医療保護施設へと離されます。

従兄弟の性的対象になった更紗は児童保護施設に入所、高校卒業と同時に就職しますが、9歳の時の事件はインタネットという世間から離れることなく、彼女を苦しめ孤独に追いやります。

そしてある日、カフェ「calico」(日本語で更紗)を開いていた文と更紗が再会。同時期更紗は同棲していた男性との結婚を拒否したためDVを受け始めます。

働いていたコンビニの同僚でシングルマザーの女性がDV男性から更紗が逃げるのに協力、更紗は思わず文の住むマンションの隣に住み始めますが、同棲していた男性に見つかったり、文が付き合っていた女性から更紗がストーカー扱いされるなど再び問題が起こり始め、最後にまたしても2人はかつての事件の加害者と被害者として扱われることに。。。

現代社会で円満な家庭生活の姿を決めつけることなどできるはずもなく、何が幸せで、何が不幸なのか当事者でなければ分かり得ません。

そんな中子どもたちも伸び伸びと成長期にあった生活が皆過ごせているかといえば、否でしょう。

これだけ経済的に豊かになっているのに、真の幸せとは何か、日々の生活に満足感がないことに私たち大人の責任を痛感します。

扱っているテーマを考えるとこの作品が本屋大賞を受賞するのは、少し難しいかもしれません。けれど皆さんに読んでもらって今の日本を考えてもらいたい、そんな作品だと思います。


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