雲を紡ぐ(18-50)
毎日TVをつけると、大雨の被害が画面いっぱいに映されて、胸が潰れる思いです。
被害に遭われた地方の皆様、私には何もできることがなく申し訳ない気持ちですが、どうか前を向いて生きていただきますよう、お祈りいたします。
さて今月中旬には芥川賞、直木賞の発表がありますね。すでに候補作も発表されていますが、皆さんどれくらい読まれたでしょうか?
今回直木賞候補作で図書館に納められていたものは、2作品しかありません。
そのうちの1作品、伊吹有喜氏の作品を読み終えました。
壊れかけた家族は、もう一度、ひとつになれるのか?羊毛を手仕事で染め、紡ぎ、織りあげられた「時を越える布」ホームスパンをめぐる親子三代の心の糸の物語。(「BOOK」データベースより)
目次
第一章 六月 光と風の布
第二章 六月下旬 祖父の呪文
第三章 七月 それぞれの雲
第四章 八月 美しい糸
第五章 十月 職人の覚悟
第六章 十一月 みんなの幸い
第七章 三月 その手につかむもの
エピローグ ホームスパン
物語に登場するのは、苦労して入学した高校であることからいじめに遭い、登校拒否の主人公山崎美緒、技術職で勤務先が統合等の憂き目にあう無口の父 広志、教師で生活指導を担当、裏サイトで叩かれている母 真紀、ホームスパンを昇華させてきた故に、妻香代を亡くした広志の父絃次郎、夫と離婚後自立した女性として娘を育て、娘の結婚後も支える横浜に住む真紀の母という三世代の家族たちです。
きっと家族がある人には経験があると思いますが、ぶつかる母と娘、父と娘、祖父と父、祖母と母、そして互いの伝えたいけど伝わらない、理解してもらえないもどかしさをそれぞれの視点で描かれていて、とても切なく伝わってきます。
しかし本作では、主人公のゆかりのある環境の中で、それぞれのしがらみが解け、それぞれが自分の居所を見つけ、親子間の糸(想い)が人を包み込む何かに繋がっていくという表題につながる結末へと向かいます。
絃次郎が「ホームパン」を営む盛岡市は宮沢賢治もゆかりがあります。物語の中心に彼の作品がとても意味深く使われています。
特に有名な「銀河鉄道の夜」のクライマックス
「どこまでもどこまでも一緒に行こう」
”みんなの幸のためならば僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない”
が絃次郎の決意とも重なり涙があふれました。
今日も読んでいただき、ありがとうございます。
週も後半、木曜日。週末に向けもうひと頑張りですね。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。これからも励みますね。