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少年と犬(19-50)

連日の大雨被害のニュースで、多くの方が被災され、亡くなられたことを知り、日本が毎年天災から逃れられない国なのだということをしみじみと感じています。

こちらも今日は雨。私も雨の中月1回の通院です。

こんな状況で直木賞候補にもなっている馳星周氏の作品は、いつにも増してこんな時だからこそ犬のように人間でない家族の力の大きさを伝えています。

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家族のために犯罪に手を染めた男。拾った犬は男の守り神になった―男と犬。仲間割れを起こした窃盗団の男は、守り神の犬を連れて故国を目指す―泥棒と犬。壊れかけた夫婦は、その犬をそれぞれ別の名前で呼んでいた―夫婦と犬。体を売って男に貢ぐ女。どん底の人生で女に温もりを与えたのは犬だった―娼婦と犬。老猟師の死期を知っていたかのように、その犬はやってきた―老人と犬。震災のショックで心を閉ざした少年は、その犬を見て微笑んだ―少年と犬。犬を愛する人に贈る感涙作。(「BOOK」データベースより)

東日本大震災で飼い主の出口春子を亡くした子犬の多聞は、春子が生前連れて行ってくれた公園で仲良くなった内村光という子どものところに向かいます。

光は被災地を離れ熊本に住んでいたので、いく先々でに拾われ、その人の守り神となりますが、それぞれの事情で離れ離れとなり、5年という年月を経て、光のもとにやってきます。また被災が原因で話せなかった光は、多聞と再会したことで徐々に会話ができるようになります。

内村一家は今度は熊本地震で被災、多聞は崩れ落ちた家屋の中で光を守り死んでしまうのですが、光は多聞によって心がとても成長していました。

多聞がいく先々で出会う人々は、決して周りが見れば幸せでない人のように思えます。けれど、人間よりも本能的な犬を好きな人はどうも精神的には幸せのようです。

また幼い頃は犬も子どもも記憶がないように思えますが、実は感覚的に覚えていて一生涯忘れないものだとこの作品は語っています。

私はペットを飼ったことがないので、生き物との繋がりが薄い人間ですが、それでも読んでいて胸が熱くなりました。



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