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ひこばえ(39-50)

「暑いですね」会う人会う人、この言葉が挨拶がわりの今日この頃、皆さんお元気でしょうか?こちらも日中35度を超える日々が続き、夜更かしをする日が続いています。

今日紹介する本は、新聞に連載中から好評とのことで図書館に予約し借りたたものの、実際に手に取ったときの重さにこの暑さの中、読み終えることが出来るのかと不安がよぎりました。

しかし重松清氏が描く物語は予想を裏切ることなく、実に深く、読む年代を問わない力強さでグイグイと私を引っ張ってくれました。

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世間が万博に沸き返る1970年、洋一郎が小学校2年生の時に家を出て行った父親の記憶は淡い。郊外の小さな街で一人暮らしを続けたすえに亡くなった父親は、生前に1冊だけの「自分史」をのこそうとしていた。なぜ?誰に向けて?洋一郎は、父親の人生に向き合うことを決意したのだが…。(「BOOK」データベースより)

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老人ホームの施設長を務める洋一郎は、入居者たちの生き様を前に、この時代にうまく老いていくことの難しさを実感する。そして我が父親は、どんな父親になりたかったのだろう?父親の知人たちから拾い集めた記憶と、自身の内から甦る記憶に満たされた洋一郎は、父を巡る旅の終わりに、一つの決断をする―。(「BOOK」データベースより)

重松清氏の作品で父と息子の物語というと「流星ワゴン」「とんび」が思い起こされますが、まさにその作品に続く、父から息子へと受け継がれる物語であると確かに思いました。

親の離婚、再婚で苗字が次々変わった主人公 洋一郎。物語は骨となった実の父と再開することで始まります。

記憶とはなんだろう。思い出とは、いったいなんだろう。p16

小学校2年生で実父と生き別れた洋一郎も55歳、孫も出来て、人生の終わり、残された家族の始まりということが現実となってくる歳です。

家族という枠に時として苦しめられた洋一郎ですが、存命中の父親を知る人と出会い、また職場である老人ホームの入居者たちから血の繋がり、自身の存在について改めて問い直していきます。

家族が離れて暮らすことも普通になり、年老いて孤独死を迎えることも不思議ではなくなった今、「ひこばえ」という木の切り株から若い芽が生えてくるように、命は受け継がれていくのだという、強いメッセージを発しながら物語は進んでいきます。

物語の中で、亡き父の愛読書、映画として選ばれた作品も著者らしく、池波正太郎氏の「剣客商売」山田洋次監督の「男はつらいよ」シリーズは王道、本作で初めて知った松尾あつゆき氏の「原爆句抄」、童話の「カロリーヌ」シリーズと幅広いのも見逃せません。

最後に亡き父親が散骨という形で納められた日本海の無人島が、私が知っている島だと分かりビックリしました。岡山県出身の著者だからでしょうか。

長編小説ではありますが、新聞小説らしく、都度休憩しながら読んでも飽きさせないストーリーに読み終えたという達成感も味わえてお勧めです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

週末ですね。猛暑に負けぬよう、体調管理をして乗り切っていきましょう!







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