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読書備忘録

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#読書note

貴方のために綴る18の物語

暑さの中ですが、時折通り過ぎる涼風に、肌が秋に近づいているのを感じています。日曜の昼下がりいかがお過ごしですか? 夫婦で朝寝坊をした日曜日はゆっくりとブランチを取り、部屋で各々好きに過ごしています。 むごくて、いびつ。せつなくて、まっすぐ。 たったひとつの愛なんてない… 帯に書かれたこのフレーズに惹かれて手に取りました。 「珈琲店タレーランの事件簿」の著者がトーハンの「新刊ニュース」に連載したものを今年5月単行本化した作品です。 「143」という字が英語のスラングで文

テスカトリポカ

連日夏の暑さが戻ってきて、少々バテ気味です。皆さんはいかがでしょうか? 先週から読み進めている第165回直木賞と第34回山本周五郎賞をW受賞した佐藤究氏の作品です。 題名のテスカトリポカTezcatlipocaは、アステカ神話の主要な神の1柱。 古代アステカの生贄の心臓を捧げる儀式と、現代の臓器売買が重なっていくというのが本作です。 実は現在もまだ読み終えていません。主人公がカタカナ名だし、周りの登場人部もニックネームが付けられてしまい、内容に入り切るまでに、私は疲れて

音楽家として母として妻として奮闘する姿

直木賞受賞作「テスカトリポカ」に苦戦しているので、ちょっと一息つこうとエッセイを手に取りました。 先般TV番組「王様のブランチ」でも著者本人が出演されていたSEKAI NO OWARIのメンバーであり作家の藤崎彩織さんのエッセイです。 母親となられた著者が親になって知る自分の親や祖母に対する感じ方の変化や、子育ての悩み、子育てする親を取り巻く環境に対する考えなどに私自身も親の一人なので、興味を持って読ませてもらいました。 上手くできないことは、みんなで助け合ってやろうと

スモールワールズ

今朝は久しぶりに朝読書をしてこの作品を読み終えました。 独立した6つの短編が収められていました。 ネオンテトラ 魔王の帰還 ピクニック 花うた 愛を適量 式日 作者の一穂ミチさんの作品は初めてでしたが、とても読みやすかったです。きっと本を読む時間がないといわれるだろう若い方でもすっと物語に入れて、読み終わることができる分量と内容だと感じました。 親として、孫を持つ世代としては「ピクニック」が怖さを感じる作品でしたが、今一番の問題提起をしていると思ったのは「愛の適量」で

夜行秘密

図書館の新刊コーナーに掲げてあって、音楽をベースにした物語ということなので、ちょっと借りて読んでみました。 川谷絵音さんという名前だけは色々と話題になったので、知っていましたが、音楽は聞いたことがありませんでした。 今回彼が率いるバンドのアルバムということで、幸いにもApple musicにあったので、曲を聴きながら本作品を読んでみました。 小説『夜行秘密』 はアルバムの曲順ではありませんでしたが、題名はそのままの短編が並んでいました。 目次 1.夜行 2.左恋

読み終えました

先日noteでサイン本をいただいたことを報告しました。 そしてやっとその作品を読み終えました。 こちらが借りてきた単行本の表紙です。2008年に発表後単行本化、2012年に文庫化されています。 データベースにもあるように犯罪者と死刑制度に真正面から向き合い、生きる者と死にゆく者をつなぐ最後の希望を描いています。長編小説とAmazonなどの説明には書かれていますが、分量から中編小説だと思いました。 施設で育った経験を持つ刑務官の主人公は「死」を目の前にする2人の男と関わ

どんな時代でも自分の道を歩き続ける

毎日暑いですね。今日もあっという間に30度を超えています。これほど暑いと日中の読書はきついので、読書時間は夜中になります。 読み終えたのは、書店でもPOPが飾られていた「女たちのニューヨーク」 2010年89歳のヴィヴィアン・モリスの元に、彼女が最後に愛した友人フランコ・グレコの娘アンジェラから自身の母の死とともに「母の逝去した今なら父があなたにとってどういう人だったのか、あなたは語れるのではないか」という問いの手紙が届きます。そしてヴィヴィアンはフランコとの関係を解き明

花を見るように君を見る

「韓国で大ベストセラー50万部突破!世界的人気アイドルグループBTS(防弾少年団)RM、BLACKPINK・ジスの愛読書として 話題の本、待望の日本語訳!」 こう本の帯にあるように、作者のナ・テジュは私よりも上ですが、韓国本国では若者が著者の詩を支持しているようです。 韓国ドラマ「揺れながら咲く花(学校2013)」第2話で俳優イ・ジョンソクさんがこの著書に収められている「草花」を朗詠する場面もあって、作品を観た私は韓国での詩の存在の高さを感じました。 (あとがきでも

世界に暗躍する日本の組織を追う

少しづつ読み進めていた「高校事変」シリーズですが、既に発売された10巻までをとうとう読み終えました。これで最終かと思っていたのですが、続編が秋には発売との噂もあり、まだまだ続くようです。彼女が高校を卒業するまでかしらと想像しているところです。 読後に、オウム真理教の松本死刑囚の遺骨を次女が権利を得たとニュースで言っていたのを耳にしました。この小説とリンクして不思議な感じがよぎりました。 『探偵の探偵』に登場する市村凜は、結衣の異母妹である凜香の実母だった。意識不明の重

誰しも仮面をつけている場面がある

このところ新型コロナワクチン接種や通院などで時間待ちをする日が多くなったので、Kindle本を購入しました。それが「仮面」伊岡瞬さんの作品は初読みです。先般TV番組「王様のブランチ」でも紹介されていたので、思わずクリックしました。 まさに2時間サスペンスドラマのような展開の作品でした。 物語の始まりから次々と登場する女性たちと、彼女たちの怪奇な行動がどう繋がっていくのか、そこが大きな魅力の一つですが、明らかになるにつれ、男性側の都合主義が目に余り、腹立たしさが込み上げ

子どもを信じて一緒に戦ってください

7月に入りました。朝からぐんぐん気温が上がっています。夏らしさを感じています。 昨夜というか深夜に林真理子さんの新刊を読み出したら、どんどんと勢いがついてしまって読み終えたら朝を迎えてしまいました。 結婚も就職もできぬまま50代になった子どもが、80代の親の年金を頼って生きていくという8050問題。 表題そのままの内容かと思いきや、引きこもり、それもいじめが原因であることがわかっていても学校は隠蔽し、親もなすすべもなしと子どもを急き立てるばかりの悪循環で、ついには子が親

キム・ナムジュの最新刊を読む

とにかくキム・ナムジュという作家は女性を描くのが上手いです。著者自身の体験から得たものが大きいのでしょうが、思春期の女の子と彼女らを取りまく大人たち、そして社会は彼女らが頭で理解しても、本質的に拒否してしまう難しい問題も含んでいます。 空と海も区別できない、恐ろしく黒い夜。 その夜のように茫漠としていた心。 互いの本心だけなく 自分の本心もはっきりわからなかった。 (本文より)  「82年生まれ、キム・ジヨン」で脚光を浴び、韓国の女性の立場から社会問題を浮き彫りにしま

普通に笑いながら日常を生きていたい

久しぶりに三浦しをんさんの作品を読みました。今回は著者お得意(?)の青春小説です。 舞台は長閑な温泉町の商店街と住宅地。そこに住む男子高校生たちが主役でそれぞれに家庭の事情があり、進路に悩み、そんな中悪友として馬鹿騒ぎをし、事件や夢がなくても、普通に日常は営まれていきます。 おバカなノリの彼らに笑い、ほっこりし、時に涙腺を緩め、心から応援してしまう、三浦しをんさんが若者を描く作品は絶品です。 コロナ禍、住むところでそれぞれ事情が異なりますが、どうしても暗くなってしま

凶悪犯の子供たちの性

おはようございます。9巻にして大きな物語の一区切りがついた、そんな感動を味わっています。 田代ファミリーとの死闘も、最後は主人公結衣は次男の勇次との一騎打ちとなり意外なゲームで終結を迎えます。 フェリーでの激闘から数日。公安の監視を受けながら学校生活を送る優莉結衣は、船上で果たせなかった田代勇次との決着の日が近く訪れることを予感していた。多くを失い、手負いの獣と化した勇次は民家に潜伏し、復讐の機会を虎視耽々と狙う。威嚇、撹乱、陽動―ついに最終決戦の火蓋が切られた。血で