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投資家による投資の歴史(2024年1月16日)

※2024年1月16日に開催したイベントのレポートです。

昔に比べ、広く一般的な存在となった「投資」。

人生100年時代における老後の資金問題や、新NISA制度の導入で、ますます興味をもつひとも増えているのではないでしょうか。

プレゼンターは、”すべての人へ、投資の新しい扉をひらく”をミッションとするWealthPark研究所所長の加藤航介さん。

自身も、金融資産や不動産をはじめ、アート、ワイン、木材…などなど豊富な投資経験をもち、投資の本質を広く世の中へ伝える「投資のエバンジェリスト」です。

冒頭、「今日はお金が儲かるって話は一個もありません!」と言い切り笑いを誘う、チャーミングな一面も。

「投資」とは、「未来(次)にお金(貝=昔のお金)を投じること」だと語る加藤さん。

「投資って本当に素晴らしい。わたしたち日本人にとっても必要なことです」

投資というシステムは、歴史の中でどのようなイノベーションを経て今の形となったのか。そして、それは人類にどのような影響を与えたのか、を教えていただきます。

投資2万年の歴史

そもそも、資産というものはいつ生まれたのでしょうか。

人類にとって最初の資産は、不動産。その起源は、およそ2万年前にまで遡ります。

「狩猟中心の時代から農耕社会へと変わると、不動産、つまり土地の価値がさらにあがりました。土地自体が大事な資産になったんです」

その後、メソポタミア文明が栄えたイラクで貨幣が生まれ、金、債券・株式、そして暗号資産…と、歴史の変遷とともに、あたらしい資産が次々と誕生してきました。

「株式はまだ500年くらいしか歴史がなくて、不動産や貨幣に比べると資産の中ではヒヨッコなんです」

今なお、不動産は資産の中心的な存在です。

世界の富の資産別の割合では、不動産が占めるシェアは半数近くにのぼると考えられています。そのうち3分の2が居住用不動産なのだそう。

「住まいは人間が使う24時間の中で1番長い時間を過ごす場所だから、占める割合も高いんですね。個人で所有する方も多い資産です」

加藤さんは、「僕ら人類の長年の歴史は、不動産の取り合いの歴史と言えるのではないか」といいます。

確かに、古くも新しくも人類による領土争いは絶えません。日本でも石高、その土地における米の生産力がそのまま財力として考えられてきました。

このように、農耕社会の誕生から荘園・封建社会まで権力や財力のすべてだった土地。

ゲームチェンジが起きたのは18世紀後半。イギリスからはじまった産業革命です。

それまでは土地を持っている人間=権力者。そこへ起業家が台頭し、株式と結びついた工業生産力が、資産としての重要性をもつようになりました。

不動産そのものも、この100年ほどで民主化という新たな波を迎えています。住宅ローンというシステムができたことにより、不動産の所有は限られた富裕層のみの選択肢ではなくなりました。

そして、近年。経済の中心となった株式においても、有形資産から無形資産への価値のシフトが生まれているといいます。

加藤さんが教えてくれたのは、アメリカのS&P500指数の時価総額における、有形・無形資産の比率。

1975年時点では有形資産=工業生産力が83%を占めていたのが、その後10年ごとにソフトウェア・特許といった無形資産の割合が高くなり、1995年以降は逆転。

株式が登場したこの500年ほどの期間の中でも、情報技術の発展により大きな変化が起きているとわかります。

投資やお金にまつわる社会イノベーション

道具の誕生。火の活用。印刷技術、電気、ワクチン…

ホモ・サピエンスは、その20万年にもおよぶ歴史の中で、さまざまなイノベーションを経験し今日の社会を作ってきました。

では、投資や経済に着目すると、これまでにどのような変革があったのでしょうか?

まず初めに大きな変化をもたらしたのが、13世紀イタリアにおける「複式簿記」の登場だと加藤さんは語ります。

「2枚の紙で会社を表せる、という人類の大発明。複式簿記が誕生したことで、相手が取引先として信用できるかどうかがわかるようになり、経済の広がりに大きく貢献しました」

「株式会社」のはじまりは、1602年に設立された「オランダ東インド会社」。国債をはじめて発行したのもオランダです。

世界初の資産の市場=「証券取引所」はベルギーのアントワープで設立。

そして17世紀のスウェーデンで、今度は「中央銀行」が登場します。

これら、「株式会社」「証券取引所」「中央銀行」らのシステムを大きく進化させていったのがイギリスです。

監査・独禁法・破産法なども、19世紀のイギリスで誕生しました。

一方、マインドセットの側面で変革が起きたのも18~19世紀です。フランス革命やアメリカの独立が起きたこの時代、”個人が資産をもつ”という概念が生まれました。

20世紀以降は世界経済のリードをアメリカがとるようになります。ここで生まれたのが「投資信託」。

「1933~1934年に証券取引法が成立。市民のお金を株式会社に結びつける法律で、これがアメリカの大きな活力になりました」

70年代には個人が年金でアメリカの企業の株を買えるようになり、一般市民の資産力が大きな存在感を示すように。

「アメリカが冷戦でソ連に勝てたのは、投資信託が生まれたおかげとも考えられます」

さらに21世紀、オバマ政権時代にはスタートアップへの支援制度が整えられました。

最後に、直近での大きなイノベーションとして、「ブロックチェーン技術」があると加藤さんは言います。

「ブロックチェーン技術には、資産の民主化をさらにすすめる可能性があります。かつて王侯貴族だけのものだった資産を市民に解放した、18~19世紀の民主化運動がもたらした変化に通じるかもしれません。”時代を変える技術”といえると思います」

2万年前からつい400年前まで、長く続いた不動産が資産のすべて=投資のすべてという時代。

その後続々と新たな技術やシステムが生まれ、人類社会における”資産”や”価値”は今なお目まぐるしく変化しています。

わたしたち一人ひとりに、明るい未来をつくるチャンスをくれる投資。これから先、どんなものに価値が生まれていくのか、ワクワクも芽生えるイベントでした。

プレゼンター・加藤さんのnoteもぜひご確認ください!


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