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日本ワイン頂上決戦!〜白ワイン編〜②

管理人(以後、「管」): 前回からの続きです!


続いて、中澤ヴィンヤードについて、お願いします!

総支配人(以後、「総」): では、中澤ヴィンヤード クリサワブラン2019/Nakazawa Vineyard KURISAWA BLANC 2019
だね。
このワインのテイスティングデッサンに描かれている身体意識の中で最大の特徴は、胸の上部から口の高さにかけてロート状の身体意識があり、その内側と外側へ青で描かれる涼やかさ、赤で描かれる温かさや熱さ、緑で描かれる生命力など、多彩なクオリティが混じり合いながら降り注いでいることだね。
それで、胸の上部に形成された青い水平面として描かれているスライサーという身体意識を境に、下方からも多彩なクオリティが入ってきている。
この多彩なクオリティは、クリサワブランの特徴でもある15種類もの葡萄品種を一緒に醸造する、混醸と呼ばれる醸造法による影響かな。
ラベルに描かれている万華鏡のような六芒星のイメージ通りの、他の日本ワインにはなかなか観られない素晴らしい身体意識だと思う。

管 なんだか強そうな身体意識図ですよね笑
青色の涼やかさ、赤色の温かさ、緑色のバイタリティと多彩なニュアンスがあるということですが、この辺りの色味は素人の我々にも感じれますか?何かコツなどありますか?

総 このクオリティの違いというのは、個人によって感じやすいものとそうでないものがあるので、全て分かる、というのは難しいかもしれないけれど、どれか一つは分かるのではないかと思うね。
感じるコツがあるとすると、1種類づつ感じてみることだね。ああ、これは何か涼やかな感じがする、とかね。
あとは身体の場所を分けて感じてみること。頭はどうかな、胸はどうかな、とかね。

ちなみにスライサーは、「身体意識 x エノテカ」の記事でも触れたように、精度を要求されるような作業や認識に必要な身体意識なんだけれど、このクリサワブランの場合は、混醸といっても全品種一度に収穫するのではなく、品種ごとに熟した順番に収穫したり、灰色かび病の原因となる葡萄についた花かすを1粒1粒丁寧に筆で落としたり、というところに表れているね。

造り手の中澤一行氏は、大学で機械工学を学ばれた後、大手電機メーカーへ就職され、生産技術の分野で活躍されていたそうなので、そのこともスライサーの形成に影響を与えているのだと思う。
スライサーは、味わいへ甘みがあるのにベタつかない、という状態も与えていて、それも素晴らしい。ストラクチャだけではなく、クオリティで楽しませるワイン、と言えるね。

管 ブレンドは海外ワインにも多くありますが、この多彩さは中澤ワイン独特なものでしょうか?
中澤さんの機械工学的なモノづくりが、ビシッと設計した味わいを表に出すためのスライサーと思えますよね。

総 海外ワインや他の日本ワインの混植や混醸によって造られたワインをいろいろ飲んでみたけれど、ここまで多彩さがはっきりと美しく分かれていて、しかも気品があるワインは珍しいんじゃないかな。
普通はいろいろ混ぜるとぐちゃぐちゃになってしまうのだけれど、それがここまで美しいのは、そのこと自体にもスライサーという身体意識が利いているということだよね。
中澤氏の経歴から考えると、ワイナリーをやりたいとなった時に、普通はなかなかスーッとそこへ入っていけないと思うのだけれど、それが出来たのは、おそらく本人の身体意識にもスライサーが形成されていて、その機能である困難を障害と感じさせない行動が生まれ、常識にとらわれない認識が働いたと推測できる。
例えばサッカーやバスケの動きで言えば、相手が反応できないような死角にススーッと滑るように入っていけるようなことが、もっと大きな範囲の行動として表れているよね。

これは余談だけれど、サッカーならリオネル・メッシ、バスケットボールならマイケル・ジョーダンに、完成度の高いスライサーが複数形成されているので、それぞれの全盛期のパフォーマンスを観ると、それが感じられる方もいると思う。

管 なるほど!ぜひ、皆さんにもワインを飲みながら、この身体意識図や解説を見て感じてもらいですよね!
このクオリティひとつ一つを分解して感じとることはあるものの、混醸というくらいなので、混ざり合ったニュアンスが美味しいと感じるのだと思います。
その多彩さは総合的に身体からどのように感じるものでしょうか?

総 クリサワブランの場合、混ざり合ったニュアンスが美味しいのはその通りだね。完全に均一化するまで混ざってしまうと、それはまた違った美味しさになってしまうからね。それぞれのクオリティが分かれて感じられることで、時間差でそれらが感じられたりするところも魅力だね。
テイスティングデッサンを観ると、口や喉、鼻の辺りに多彩なクオリティが集まってきているのだけれど、それらのクオリティは上下左右前後と多様な方向から入ってきいて、それらが重なるように時間差がありながら感じられるのが、身体で感じられる特徴だね。

管 口当たりでワインの味わいがブワァと広がる感じなんですね!城戸ワインやミエイケノのようにセンターなど解説するべきポイントはありますか?

総 センター系の身体意識は、細径軸が天地に抜け通っていて、頭から上方へロート軸も形成されているね。
細径軸は、多彩なクオリティと対象的でシンプルに一線通っているところが、この多彩なクオリティを際立たせているとも言えるね。
ロート軸は、人間の場合はメンタルの強さなんかにも影響がある身体意識なんだけれど、このワインで言えば、「これがクリサワブランだぞ!」というブレなさが身体意識として表れ始めているのかな、と思う。
あとはサイドセンター(第2側軸)も頭部から体幹部にかけて通っているね。これはまだまだ良くなる可能性があるね。

管 センターとしての余韻や滑らかさ、骨格を感じるというよりも喉付近に感じるクオリティを引き立てる役割が強そうですよね?

総 そうだね。このクリサワブランのセンターは骨格的なしっかりとした感じというよりも、各種クオリティの差異を感じさせて引き立たせる、基準線のような役割もあるね。

管 センターが一本通っていますが、ここまで多方面から様々なクオリティが喉、口に集中するとある意味骨格がしっかりしそうで、安定感は出てきそうな気もします。
ちなみに、混醸とブレンドは違うんですかね?例えば、有名なオーパスワンはヴィンテージ違う葡萄?を醸造していたと思います。また、こういう日本のモノづくり的なワインが世に評価されるととても嬉しいですよね。

総 混醸とブレンドは違うね。
いろいろやり方はあるけれど、ざっくり言えば、混醸は発酵前に混ぜてから発酵させて造られるワインで、ブレンド(アッサンブラージュ)は発酵後の複数のワインを混ぜ合わせて造られるワインだね。
オーパスワンは、ビンテージ表記されているから、同一年度の葡萄のみ使用しているはずだよ。品種の混ぜ方はアッサンブラージュだね。 

管 そうなんですね、知らなかった。笑
混ぜ方や配合にも研究を重ねてこられたのだと思いますが、味わうとその労力歳月にも感動しそうです。

総 そうなんだよ!まさにそこに感動するよね。

管 そうですね。管理人はまだ中澤ワイナリーのワインを飲んだことがないですが、ここまで多彩だと混醸もかなり神経を使ってそうで、品質の均一化や安定化を続けるのも課題になりそうですね。とにかく日本ワインにかける想いが伝わってきます。
中澤ワイナリーのクリサワブランは以下のような感じですかね?
・造り方=混醸による作り上げたワインの多彩さが海外ワインにも他の日本ワインにもないくらい上手く表現されている
・口当たりでその多彩さのパワーも感じられて、そのパワーさゆえに構造的にしっかりした味わいがある
・造り手のモノづくりに対する姿勢や実際に手を動かされている作業への姿勢を感じられる

総 いいまとめだね。
味わってみて、これってどんなワインなんだろう、と調べたくなる素晴らしい一本だね。

管 次は
農楽蔵 ノラブラン2017/NORAKURA NORA BLANC 2017
ですかね?

総 そうだね。このワインの特徴は、股関節中心を通る2本のサイド・センター(側軸)と、中央のセンター(細径軸)、そして三重構造の中丹田かな。さらに上が開いている上ロート軸もあり、股関節そのものもクリアだね。
農楽蔵の造るワインはどれも人気が高く、入手困難なワインなのでかなり期待していたのだけれど、現時点でのレベルは物足りない。
以前から何度も飲んできたものなので、記憶の中だともう少し身体意識が良かった気もするのだけれどね。個体差なのかどうなのか。
身体意識から観ると、日本ワインの愛好家たちから、かなりの期待を受けていることは伝わってくるのだけれど。それでも味わいで言えば、中丹田から生まれる分かりやすい美味しさはあるので、ワイン初心者にも受け入れやすいと思うし、それは素敵なことだよね。
身体意識の水準は一定以上を超えているし、日本ワインの中ではトップクラスなのは間違いないのだけれど、いちファンとして期待を込めて辛口なコメントになってしまったかな。笑

 
管 うむ!他の日本ワインに比べて始めから辛口ですね。笑
身体意識から「日本ワイン愛好家から期待を受けている」というのが分かるんですか!?気になるところです。

総 横から見た図で中丹田に赤い太い線が入ってきているのが、愛好家からの期待だね。
リバースと呼ばれる相手と自分の関係を強化する身体意識で、太陽とのつながりを持っているワインもあれば、このように人々からの期待を受けているワインもあるね。矢印の方向が自分へ向いている場合は、対象から自分へ向かう関係性が強化され、逆に対象へ向いている場合は、自分から対象へ向かう関係性が強化される。もちろん両方の方向性を持っている場合もあるね。

管 なるほど!今後もその視点でワインを見ると面白そうです!
身体意識図から見ると、センターが下まで伸びて、下から中丹田へ伸びる赤い矢印などから見ても、飲んで喉通過後に分かりやすく「美味しい」フワッとしたワインの風味があって、且つ余韻もしっかりとある気品さというよりクリアな感じなんですかね?
 

総 その通りだね。どちらかと言えば気品のある方向性ではなく、クリアで分かりやすい、万人受けする方向性だね。

管 物足りなさという所だと、もう少し味わいの深さや、クリアではないもう少し先の気品さがほしいという所でしょうか?

総 そうだね。センターは細径軸とロート軸があるので、その効果として品格はあるのだけれど、強い中丹田とのバランスでそれらが弱く感じられるんだよね。
それと、このワインがもう少し供給量があって入手しやすければ、そういうことも思わないのかもしれないけれど、現状の入手困難さ、オークションでは¥15,000程の価格で取引されていることを考えると、それに見合った身体意識を期待してしまうよね。

管 なるほど、そういう意味では確かに他の価格帯ワインを飲んでいると、同レベルの期待は膨らみますよね。本数が少ないのでオークションなど市場価格で決められてしまうので、輸入の海外ワインと同じ価格感で比べると確かに厳しい勝負になりますよね。
このワインの味わいとしてはクリアで喉通過後すぐにフワッとワインの風味が味わえると思うのですが、他にコレ!という特筆すべき点などありますか?
造り手の佐々木夫妻は北海道のテロワールを表現すると同時に、彼らならではの味わいも表現しようとされていると思います。そこはどのあたりで感じられるのかなぁ?と。

総 味わいで言えば、優しく満足感のある果実味かな。評価の高いワインにありがちな近づき難さがなくて、ワイン初心者も上級者も納得させるような親しみやすさがあるところが素晴らしいね。
テイスティングデッサンでは緑色の線で描かれている、ガイアと呼ばれるクオリティを持つ身体意識があるのだけれど、これがある種の郷愁を感じさせてくれる。これがテロワールの表現として素敵なところだよね。特に北海道出身の方が飲まれると、懐かしい感じがすると思うよ。 

管 喉を通過後にフワッと分かりやすいワインの美味しさも、日本人に親しみやすい安堵感もあるワインだけれども、もっとロート軸などベースになる品格でバランスが取れれば素晴らしいワインになるということですね。

総 その通りだね。
今後その品格とのバランスが取れると、偉大なワインになる可能性があるよね。
ワインが開いてくると洋酒のようなニュアンスも出てくるので、今後への期待が高まるね。

管 農楽蔵は以下のような感じでしょうか?
・中丹田に集まる意識から分かりやすい美味しさがあるものの、ロート軸などベースになる品格はもう少し欲しいところ
・しかし、テロワールを活かした親しみやすい、バランスが取れているワイン
・その美味しさに期待する飲み手も多く期待できるワイナリー

総 いいまとめだね。今後さらに楽しみなワイナリーだよね。

管 最後は山崎ワイナリーですかね?

総 いよいよラストだね。
白の日本ワインのラストは、
山崎ワイナリー シャルドネ プライベートリザーブ 2016/YAMAZAKI WINERY CHARDONNAY Private Reserve 2016
だね。
このワインの最大の特徴は、三層構造のセンターが通り切っていること。

日本ワインの中で三層構造のセンターが通っているものは稀で、しかも多くは熟成を経る必要があるのだけれど、このワインは若くても安定して通っているのが素晴らしいね。 
城戸ワイナリーシャルドネに惜しくも敗れたけれども、完成度の高い素晴らしいワインだね。
山崎ワイナリーのシャルドネは公式WEBサイトの記事でも取り上げているので、そちらも読んでいただけるとより理解が深まると思う。

管 三層構造のセンターとは、①中心の太い筒状の線、②さらに中央にある濃い青い線、③①の筒状センターの中に入っている薄い青い線のことですかね?
三層構造のセンターがあるワインと無いワインとでは何が違うんですかね?

総 そうだね。描き方はいろいろあるけれど、太さの異なる3本の筒状の身体意識が天地に抜け通っているものが三層構造のセンターだね。
この三層構造のセンターがあると、センターが一本だけのものよりもさらに品格、骨格、味わいの安定感が増す、と考えてもらえると分かりやすいかな。
特に安定感については、最も太い大径軸と呼ばれるセンターが通っていると、輸送や温度などの環境の変化に対しての強さもあり、そういう意味では飲食店などでも使いやすいワインとなるね。
また、今回取り上げたワインの中では比較的入手しやすいこともプラス評価かな。

管 入手性は意外と大事ですよね。その造り手の生産能力を評価に繋がりますし、美味しいワインを多く作る技術はやはり難しいでしょうから。
そもそも、ワインはやはり飲んで何ぼなので多くの飲み手の口に入る可能性があるワインはその後の評価も付けやすいですよね。

総 そうなんだよね。
今回選んだ5本のワインは、山崎ワイナリー以外はどれも入手が困難なものばかりなので、ある程度安定供給されて入手もしやすいという点はかなり評価したいね。
例えばフランスのボルドーワインのいいところは、ある程度有名な銘柄でも供給量が多いというのが魅力でもあるよね。
もちろん人気があるワインは需要量とのバランスになるけれどね。
入手困難だと、必然的にオークションなどでプレミア価格で取引されることになるから、それが当たり前となっているワインの本当の実力はどの程度なのか、というのも今回のテーマのひとつなのかな、と思っているね。

管 本当ですね。希少価値にお金を払うのももちろん良いですけど、やはりワインという飲み物としてのレベルにお金を払いたいと思いますね。

総 結局飲み物だからね、飲まないと意味がない。笑
三層構造のセンターが形成されていると品格がある、ということについて、もう少し踏み込んだ話をすると、品格と言ってもいろいろな方向性があって、このセンターから生まれる品格だけ取り上げても、その高さ深さ、質、そして太さによって全然違ったものになる。
それで、その異なる品格が三層重なっていると、それだけで味わいの深みや豊かさが増したり、余韻が素晴らしいものになったりすることは想像しやすいよね。

管 なるほど、三層のセンターがあるだけでも凄いことですが、その三層のバランスによっても品格や深さ、安定感に違いが出ると言うことなんですね。
「三層センターを通すワインになる多くは熟成を経る必要」とのことですが、通常レベルのワインは大体どのセンターが通っているんですか?また、それらセンターの層が少ないワインは通常、どのくらいの熟成時間を経て三層構造になるのでしょうか?

総 いい質問だね。通常レベルのワインのセンターについてだけれど、通常レベルをどのくらいに考えるかによるね。
ざっくり言えば、センターの通っているワインはワイン全体の5%〜10%くらいなんじゃないかなぁ。その中でさらにリリースした瞬間から三層構造のセンターが通っているワインは多くて10%くらいだと思うので、相当珍しいと思う。
まず、センターの通っているワインと言っても、ほとんどは三層のうちのひとつだけ、しかも身体の途中までしか通っていないものが多いね。それで、そのセンターが熟成を経ることによって、身体を抜け通り、さらに天地に高く深くなったり、一層しかなかったものが二層、三層になったり、という変化を遂げたり、逆に三層のものが細径軸のみに研ぎ澄まされたり、という場合もある。ワインの奥深さを感じるよね。
そうなるために必要な熟成期間は、そのワインの持つポテンシャルによって違って来るのだけど、おおよそ白ワインで5年〜10年、赤ワインで10年〜20年くらいかかるかな。
よくワインの飲み頃は何年先、というテイスティングコメントがあるけれど、その飲み頃というのは端的に言えばこのセンターの形成度がピークに来るタイミングだよね。あの辺りは、皆さんセンスのある方は潜在的に捉えているのだと思う。

管 なるほど。山崎ワイナリーのワインはそこまでのレベルだと世界でも有名なワインと戦えると期待してしまうワインですね。
センター以外にも他の4つの日本ワインには無い身体意識もあるようです。他に特筆すべきはどんなところでしょうか?

総 股関節中心が身体意識化された「転子」とそこを通るサイド・センターも特徴的だね。味わいに、股関節から脚にかけて、スッキリとするような印象を与えているね。
また、テイスティングデッサンに青く細かい点線で描かれた身体意識があるよね。これは天から降り注ぐ清々しい霧雨のようなクオリティを持つ身体意識で、これと重なるように降りてきている緑色の線、ガイアのクオリティを持つウォールと呼ばれる身体意識とあわせて、テロワールからの特徴を味わいに与えているね。
さらに、両脇には熱性のクオリティを持つ身体意識と天性のクオリティを持つ身体意識が重なるように入ってきていて、熱くかつ涼しいという状態を生み出しているね。これらの心田と呼ばれる身体意識もこのワインの特徴かな。

管 転子がセンターと並行している点、スッキリとするような印象を味わいに与える点からもセンターを補完する=品格など表現するアシストをしているような感じでしょうか?

総 そうだね。スッキリとした印象を与える身体意識には様々なものがあるのだけれど、この場合の転子とサイドセンターは、真ん中を通るセンターから生まれる品格を支えつつ、支えられつつ輝く、という関係になっているね。

管 霧雨やウォールはテロワールからの特徴を味わいへ与えているということですが、もう少し詳しく教えてもらえますか?この辺り、味わいとしてはどのような点で感じるのでしょうか?また、飲んだ時に、雨やウォール=壁という言葉の通り、厚みのあるものを感じるのでしょうか?

総 実際のテロワールの印象そのまま、というわけでもないのだけれど、比較的冷涼で整えられて開けた森の中に霧雨が降っていて、その中を森の香りが軽く吹き抜けるように降りてきている、というような情景がイメージではなく、身体意識で感じられるね。
飲んだ時には厚みがある、というよりは、サーッという霧雨の中を、ガイアのクオリティを持つウォールという身体意識が吹き降りてきている。
ウォールという身体意識には、静的なものと動的なものがあって、まさに壁のように動かないしっかりとしたものもあれば、このようにモビリティを持っているものもあるんだよね。ワインの身体意識によく見られるウォールは動的なものが多く、クオリティは様々だけれど、上方向や下方向へ吹き抜ける風のような印象を持っている場合が多いね。

管 天性のクオリティとは、下から胸にかけて伸びる青い矢印のことでしょうか?
熱いと涼しいが1箇所に集まると、身体意識的にはどのように感じるものでしょうか?味わいにもどのような印象を与えるのか気になるところです。

総 そう、この青い矢印の身体意識だね。
熱い、涼しい、という性質の異なる身体意識が同時に入ってくると、まず、味わいに複雑さや豊かさを感じさせるようになる。さらに、それぞれが大抵の場合、時間差があって入ってくるので、さらに複雑で豊かな印象になるね。熱いと涼しいをちょうど良いタイミングで交互に体験すると、とても気分が良くなる、という体験をされたことがあると思うけれど、まさしくその理想系のような状態になりうる身体意識だね。

管 なるほど、ガイアもウォールも両脇の身体意識もこのワインを飲んだ時に心地よさと言うか、気持ちよさを印象として与えてくれるものなんですね。中丹田の赤い球体、その上に覆いかぶさるような赤い屋根は何でしょうか?

総 この屋根のように中丹田の上に覆いかぶさるようにあるのは、温性のクオリティを持つ身体意識だね。中丹田は通常の位置よりも少し低めになっていて、中丹田とこの身体意識の間に隙間があるのが面白いね。
さらに、それぞれのクオリティが温性と熱性で異なっていることも香りや味わいに影響を与えているね。
例えるとどんな感じかというと、北海道産の歯ごたえのある新鮮なリンゴを丸かじりで食べようとした時に、果皮の部分と果肉の部分って噛んだ時に固さや食感に差があるよね?一瞬、隙間まではいかないけど、噛みついた瞬間とは明らかに固さが異なる感じがあって、そこから果肉にシャキッと歯が入っていくよね。そのような味わいの印象を、中丹田とこの温性身体意識との隙間やクオリティの違いから生み出していて、味わいだけではなく香りにもそれが表れているね。
また、中丹田の位置が低く、胃の上部に少しかかっているので、精神的な満足感だけではなくて、お腹が満たされるようなニュアンスも少しだけあるね。

管 なるほど。今までの解説だと中丹田にある熱性あるいは温性をもった球体は果実味や、分かりやすいワインの美味しさを味わいとして表していたと思いますが、このワインの中丹田にあるものは球体と屋根でその機能を果たしている感じですかね?

総 そうだね。中丹田の満足感は味わいで言えば果実味や酸味を伴っているのだけれど、この山崎ワイナリー シャルドネ プライベートリザーブはそれらに加え、身体意識の隙間感と質感の違いから生まれる食感、液体の食感というのは普通は使わない言葉だけれど、そのように表現したくなるような味わいを生み出しているね。

管 他に特筆する身体意識はありますかね?大体出尽くしましたか?

総 ほぼ出揃ったね。
あとは前頭部に斜め上方から天性のクオリティを持つ身体意識が導入されているね。上丹田のように球状ではないけれど、涼やかさを感じさせる身体意識だね。
また、肋骨上部、中丹田のすぐ上には天性のクオリティを持つ肩包面も形成されているね。この肩包面に、先ほど話題に上がった霧雨のような身体意識が降り注いでいるね。

管 なるほど!山崎ワイナリーをまとめると、
・センターの身体意識が国外の身体意識が優れたワインと遜色なく、品格、骨太、味の安定感がある
・本来なら熟成に時間がかかってやっとレベルが上がるが、山崎ワイナリーはそのセンターの特性によりすでにその味の厚みを持っている
・中丹田や脇、頭付近の霧のような意識から熱性や冷性をバランスよく表現されているため安心感かつ分かりやすいワインの美味しさを感じることができる
という感じでしょうか。

総 おー!良いまとめだと思う。
やっと5つのワイン解説が終わったね!長かった。笑
日本の白ワイン対決の締めとして、ハイレベルな闘いを勝ち抜いた城戸ワイナリーと他の4本の日本ワインを含め、同価格帯のフランスワインの一流の造り手が手掛けるワインと比較してみよう。

取り上げる造り手は、ドメーヌ・ドミニク・ラフォン。ブルゴーニュを代表する白ワイン、ムルソーの最高峰の造り手のひとりであり、世界の白ワインの造り手の中でも3本の指に入ると評価される「ドメーヌ・デ・コント・ラフォン/Domaine des Comtes Lafon」。このドメーヌの当主「ドミニク・ラフォン/Domminique Lafon」が個人名でリリースするコストパフォーマンスの高い一本である、ブルゴーニュ・ブランを取り上げることにしたよ。
このワインの特徴は、三層構造のセンターが形成されていること、そしてそのなかの1番細い細径軸が柔らかく揺らぎのあることだね。この揺らぎは、本来であればポテンシャルの高いワインが年月を経て素晴らしく熟成した結果生まれてくるものなのだけれど、このドミニク・ラフォンの手掛けるワインは若くてもこの揺らぎが感じられる。これは、造り手であるドミニク・ラフォン本人が、素晴らしく熟成したワインがどのようなものなのかを、身体意識として捉えられていると考えられるね。

胸に形成された二重構造の中丹田は、中心部が太陽、周囲は地下との繋がりが強く、味わいに厚みのある果実味を生み出している。それで、これだけ熱性のエネルギーが入ってきていると味わいの主張も強くなりがちなのだけれど、中丹田の周囲に緑色の線で描かれているガイアのクオリティが中丹田を取り囲むことで、その強さを和らげている。これは有機栽培やビオディナミの影響かな。このガイアもかなり強さがあって、上方向と下方向、どちらからも入ってきているね。
上方からは体幹に沿うように涼やかな天性のクオリティを持つ身体意識が降りてきていて、両脇に入ってくる天性のクオリティと併せて、味わいに心地のよいミネラル感を伴うすっきりとした印象を与えているね。
青丸で描かれた頭部に形成された上丹田もかなりのレベルで、味わいに知的な印象を与えているね。

管 身体意識の見た目、物凄い情報量です。笑
ぱっと見、センターと中丹田に意識が集中しているのが印象的です。
なるほど、たしかに今まで紹介した5本のワインのそれぞれの意識が総括されて、さらにバランス良く強調されているように見えます。
日本でも5,000円台で購入できるのは日本ワインにとってはある意味脅威ですね。
造り手が素晴らしい身体意識を感じ取れているからこそ、このワインの味わいが表現できているということですが、ワイン栽培や作り方の紹介を見ても、「ザ・オーガニック」という感じですね。
ここまで自然にワインのポテンシャルを引き上げている点に感動しますし、平均的なナチュールワインと比べてしまうと、レベルの差に愕然としてしまいそうです。

総 そうなんだよね。この身体意識のレベルで5000円台で購入できるというのは日本ワインにとって脅威だよね。分析時は4000円台だったからね。
こうして6枚のテイスティングデッサンを見比べると、確かにフランスのドミニクラフォンのワインが最も優れた身体意識だけれども、日本ワインの5本もかなり健闘していることが直感的にも分かるよね。

管 そうですよね!この5つの中で総支配人が推したいのは城戸ワイナリーということですが、他のワインもとてもポテンシャルがありそうで飲みたくなるワインでした。

総 また、今回取り上げていない日本ワインの造り手の中にも、素晴らしいワインを造られている方がいることを伝えておくね。例えば、山梨県の
ドメーヌ デ テンゲイジ/Domaine des Tengeijis
は、味わい的にも身体意識的にも、ワールドクラスのワインに迫ろうとしている素晴らしい造り手だね。


管 海外勢のワインの方がやはり歴史もあるために日本でも美味しいと有名ですが、これら日本ワインも本当に美味しそうでした。
ぜひ味わってみたいです。

〜〜〜おまけ〜〜〜
テイスティングデッサンの存在意義

総 日本ワインの評価について、生産量の少ないワイナリーの評価が高い傾向があって、それは本当にそうなのか、という疑問がある。今回取り上げたワインの中には、通常のルートではほぼ購入できないものもあるので、そのブラックボックスのワインを白日の下にさらすことで、その評価が正しいのか、いう疑問に対するひとつの解答を今回の企画では提示したいね。
さらに、今回取り上げたワインのテイスティングデッサンを見て、「日本ワインは何か大したことがないなぁ」と思われた方がいるとしたら、それは違っていて、まずここに紹介していない膨大な数のワインの中には、テイスティングデッサンとして、線も色もほとんど描けないようなものがかなりの数ある、という事実を押さえていただきたいね。
身体意識がほとんど感じられず、単体では間違いなく飲む気になれないようなワインは多いんだよね。それは日本ワインでも海外のワインでも同じ。そんなワインを飲んでも身体意識から生まれるメリットがほとんど無いわけだから、身体に悪い一方で極論すると飲む意味はないよね。
一方、我々が紹介しているワインは、そのようなワインとは全く別次元のレベルにある。アルコール飲料、という次元を超えた、本当に素晴らしいワインもあるということなんだよ。

管 「テイスティングデッサンとして線も色も書けないワイン」というのは、美味しくないということですよね。
味覚はあくまでも主観性があり、その人が美味しいと言っていたら、それは美味しいということなんでしょうけど、例えば山崎ワイナリーのワインの身体意識と、その人が美味しいと言うワインを比べると、〇〇な点で美味しさが優れているよね?とあくまでも客観的に示せるのがテイスティングデッサンですよね。

総 その通りだね。テイスティングデッサンをはっきりと描けないワインは味はするけど、とても美味しいとは言えないね。
身体意識の脆弱なワインは、何というかスカスカなんだよね。味はするけれど、ただそれだけなのでそれなら美味しいジュースを飲んだ方が体にも優しいし良いよね。
テイスティングデッサンはその辺りの違いも図で表せるのが面白いよね。言葉よりも客観性が生まれるからね。
そこに、身体とっては健康的にマイナスになるアルコールをわざわざ摂取するための前向きな理由、ワインの優れた身体意識を一時的にでも自分の身体に取り込むことができる、ということがあるんだよね。
優れたワインを味わったときに、例えば経営者なら今まで全く考えられなかった発想のビジネスを思いついたり、芸術家なら新しい発想の作品が思い浮かんだりするのはそのためなんだよね。ワインテイスティング、特に身体意識を味わうテイスティングは、身体の外側への関わりばかり増えている現代社会の中で、身体そのもの、身体の内側からの反応を味わう、見つめるという点で優れた文化的行為だとも思うね。
ワイン文化が今後意義ある文化として残るためにも、このような我々の取り組みは意義のある取り組みかな、と思っているね。

管 それはすごい視座ですが、とても意味があるように感じます。やはり、食欲は人間の欲求の中でも優先度が高い位置にありますもんね。食べ物飲み物は身体に入れる以上、質の良いもの、美味しいものを口に入れることが身体に良いし、健康に繋がりますもん。
その文化的行為をテイスティングデッサンで、あくまでも客観的観点から図示することもそうですが、まだまだこれらワインが持つ身体意識というものを多数の方が意識する、認識することでワインの美味しさ、文化的行為の楽しさに増す要因のひとつになれればいいですよね。

総 その通りだよね。美味しくて栄養もあり、身体意識の優れたものを食べると健康に直結するよね。反対に、いくら健康に良いと言われるものでも、身体意識が優れていなければ食べるのが苦痛だよね。笑
他に面白い例としては、世界一臭い食べ物と呼ばれるシュールストレミングがなぜ今も残っているかと言えば、めちゃめちゃ不味いんだけど、身体意識で優れたものをいくつも持っているからだよね。

管 なるほど!確かに珍味や匂いがキツイ食べ物も食べられ続けるにはそう言う理由があるからですね。良いお酒を飲むと議論が弾むというのは、まさにそうですもんね。
ただ、お酒を飲めばいいと言う訳ではなく、さらにワインを全身で感じるパワーがないとお酒飲みながら良い議論をするエネルギーも生まれてこない気がします。

総 その通りだね。さらに言えば、議論に向くお酒とそうでないものがあって、ワインは知的活動を支える身体意識である上丹田を壊しにくく、さらに良いワインは上丹田を活性化して高めてくれるものあるくらいだからね。アルコールなのに。笑
管理人が言うような楽しめる文化、というのが最も大切なことだよね。ワインの記号情報をたくさん知っていて、それを初心者や中級者にひけらかしてマウントを取るような方もいらっしゃるようだけれど、そこには自己満足という意味以外何もないよね。笑
味わって楽しめて感動できること、そのことこそワイン文化の本質であるということを我々も常に忘れないようにしたいね。

管 我々も常に勉強、身体を修練する気持ちでいたいですね。
味わって感動して楽しんで、ワインが持つエネルギーを吸収して、みなさんにもエネルギッシュになってもらいたいです。

総 本当にそうだよね。少しでもその理解と実践の助けになれれば良いなと思っているよ。


我々のコンテンツでは、皆さんに美味しいワインを紹介することを目的にし、皆さんが美味しいワインを探すサーチコストを下げることを目標にしています。皆さんからのいただいた報酬はワイン調査のため、我々のコンテンツ拡充のために使用させていただきます。