見出し画像

小話3 発泡スチロール

うちの祖母は7人か8人姉妹の一番上だったのですが、妹(以後おばさんと呼ぶ)が隣の家に住んでいました。六畳の部屋が一階と二階にあるプレハブ小屋のような古い家が四つ並びに並んでいる建物のそれぞれに祖母とそのおばさんが住んでいました。

そのおばさんはものすごい倹約家で、米屋さんでまじめに働かれてお金をたくさん貯めたというようなことを聞いていました。自分が幼少期の頃、祖母が85歳くらいで妹さんがおそらく70代後半だったと思いますが、自分は祖母が大好きだったのでよく祖母の家に遊びに行きました。祖母の家に寄った時、自分とも一応親戚関係になるので、たまにそのおばさんの家を覗く機会がよくあって、見るいつもガラガラと入口入ってすぐの一階の六畳の部屋に発泡スチロールの箱が入り口から台所にかけて至る所に天井ぐらいまで高く積んであり、隣接する台所にいるおばさんの顔を見る時にその発泡スチロールの箱の隙間から覗くような形でおばさんと話していました。想像しやすくすると、引っ越し後、部屋に段ボール箱がたくさん積んであるというようなのがずっと続いたというようなものでしょうか。

その家の前はスーパーで、よくスーパーで余りの発泡スチロールをもらっていたとのことですが、おそらく倹約家ということで、家具代わりに発泡スチロールを使っていたと思われるのですが、幼少期の自分はただ発泡スチロールの箱が積んであるのを認識しただけで全く不思議に思わなかったところが思い出すとおもしろくあります。
それ以来、発泡スチロールで埋め尽くされた家は見たことがなく、なんのための発泡スチロールだったのか、今は全く見当がつかず、家具代わりというのが最も有力な説になっております。

脱プラスチックの時代ではありますが、SDGsの最先端を走っていたとでも言えますでしょうか。戦前戦後の物不足の中で育った人にとってはそういったことは美徳であることもあり、なかなか人に話すことはできずにいましたが、発泡スチロールを溜めることだけが自己満足だったのか、物入れのために使ったとしてもいちいち箱をどかして物を取り出さないといけないし、その後の人生または子孫のためにお金を溜めることを優先して現在の効率性を完全に犠牲にされており、(変わった人もいたもんだなぁ)と今しみじみ思うのでありました。

#発泡スチロール #おばさん
#月曜日 #小話#社会#エンターテイメント#本#Monday#ComicStory#Society#Entertainment#Books


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?