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ラブレター・タイムカプセル

大好きで確実なものと、そうでないもの。
その二つを明確に区別するようにしている。
(その癖を身につけた経緯は、
 長くなるので割愛する。)

表面上の付き合いや流行のファッションに、
私は二十代前半にして興味を抱かなくなった。
「生涯好きだろう」と
現時点ですら思えないものに、
時間とエネルギーを割くのが惜しいのだ。

そんな私が今、芽が出ないかもしれない鉢に、
健気に水をやっている。
人生で一番の、熱烈な片想いをしているのだ。

鉢には、種すら埋まっていないかもしれない。
しかし私は、約束したい。
彼を生涯愛し抜く自信があるということを。
私が彼のことを嫌いになることは、
この先絶対に無いと確信していることを。
彼が拒まない限り、
毎朝鉢に水を与え続けられることを。

彼が永遠の愛を信じていないことを、
私は知っている。
だからこそ、彼に信じて欲しくてたまらないのだ。私の愛は、私の命がある限りに続くということを。

彼を見た時、初めて男の人を美しいと思った。
これまで25カ国程を訪れて、色々な人を見てきた。しかし、彼ほど私に衝撃を与える人には
出会わなかった。

見た目だけではない。
声も、聞くたびに心が震える程に大好きだ。
ぱちくりと瞬きをするところ、
少し内向的なところ、
好き嫌いがはっきりしているところ、
他人に厳しいところ。
その他全てをひっくるめて、
私は彼を愛してしまった。
愛が理屈ではないことを初めて知った。

誰かと時間を共に過ごすことを、
これ程切に願ったことは、ない。
彼を感じると、自分の心が光ってしまう。
この高揚感を味わってしまった今、
もう他の人では満たされないのだ。
彼が私を自分色に染めたいというならば、
骨の髄まで色を変えても構わない。

一昨日、私は彼に愛の告白をした。
私の人生で初めての愛の告白だった。
彼はにやにやしただけで何も言わなかった。

出会った当初から、
彼は今は誰とも付き合えないと言っていた。
彼一人でやりたいことや夢もある。
海外へ移住する可能性もある。
誰かに時間を割くことはできないし、
それ故に失望させることも避けたい、
と言っていた。
なので私の気持ちが受け入れられる可能性が
低いことは重々承知の上だった。

しかし今まで彼との交流の中で、
彼が私の好意を重荷に感じている気配はなかった。

それさえわかっていれば、どうでもよかった。
自分のプライドや僅かな期待が
消失することなんて、どうでも良かった。

この気持ちを証明する方法。
それは今と同じ熱さで、
彼を永遠に愛して見守り続けることだと思う。
私はなるべく早く彼に好意を伝え、
愛した時間の長さを測る際の
“始点”を作りたかった。

自分勝手な考え方かもしれない。
エゴも多分に含まれている。
しかし、彼が疲れた時や何かから逃げたい時に
ふらっと寄れる砦になれれば、私は良いのだ。
私は、その砦作りを誰よりも早く始めたかった。

彼にとって安定した場所となるために、
私自身の生活や精神の基盤を整えて、
どっしりと構える必要が今の私にはある。
居心地の良い、美しい場所となる必要もある。
砦の土台を壊すような、
どうしても譲れない要求を彼がしてきた場合には、
潔く断る必要もある。
相手にとって私は必要じゃないと言われれば、
その瞬間に諦める覚悟もしている。
それも愛するが故なのだ。

このまま何年過ぎようとも、
私は残りの人生全てをかけて彼を愛することを、
ここに約束する。

2021/1/11

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片想いの相手に向けて?自分の決意として?
1年前に書いたラブレターらしきものが、
携帯のメモにあった。

正直、たった1年と少しだけれども
私の心は燃え尽きてしまいそうな状況下にある。
そろそろ片想いも終わりかな、
彼との関係をフェードアウトするべきかな、
とここ数日考えていた。

明らかに、自分の心の健康に良くないからだ。
彼を好きでいられるだけで幸せだったのに、
今は、どうして何の手応えもないのに
まだ好きなんだろうと、悔しくなったり
泣きたくなったりしてしまう。
私の日々はなんだったのだろう、と。

けれど私のこの時の気持ちは紛れもなく本物で
この文章を読んで始めて、
一方的に好きで居続けることの難しさを痛感した。
きっと、少しでも結ばれる可能性を
この時は信じていたのだと思う。

人間関係、こと恋愛関係においては
相性だけでなく出会うべきタイミングも重要だ。
私はきっと彼と出会ったのが去年ではなく
今でも、5年前でも、5年後でも、
変わらずに恋に落ちた気がしてしまう。

彼は、出会ったのが去年じゃなくて
10年前や5年後だったら愛してくれただろうか。
実は同じ質者を彼にしたことがある。
「想像できないからわからない」とのことだった。

いつか彼は私の熱烈な好意を
懐かしむ時が来るだろうか。
その時は、少しでもいい思い出であってほしい。

それだけは自分のためにも望んでいたい。

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