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花空夜行

この街のどこにこんなにも人がいたのか
そう思うような人の波をすり抜けるように歩く
非日常の中に連れゆく君と
離れ離れにならないように

ドーンドーンという破裂音が近づくほど
人々が色めき立っていくのがわかる
歩行者天国となった道の両脇は
たこ焼きや焼きそばなんかの屋台が並び
その提灯の灯りが非日常感をさらに演出する

びっしりと人が並んでいる河原沿いに着き
たまたま空いた特等席とは言えないけれど
それなりに見えるスペースに君を導いて
見上げた空には色とりどりの花が次々と咲き
放たれる光で照らされる人々の顔は
大人も子供も皆微笑みの形をしていた

咲いては消えた空の花
太陽が眠る星空の下
あなたの心を照らすから
あなたと誰かを紡ぐから

気づいたら君の大好きな歌の歌詞をつぶやいていた
君は笑顔のままなのに僕は泣き顔を照らされる

最後に大きな花束が空を満たしたところで
アナウンスがなり人々は散り散りとなり
僕も一人で帰路に着いた

大好きだった君と空の花を見に来るのは
これで何回目だろうか
必ず一緒に行こうねと約束していたけど
結局一回も本当の意味では来れなかった
胸ポケットにある生前の君との写真を手で押さる

花と火が繋がると
君がいなくなってしまったあの日
たくさんの花に包まれながら
火葬された光景の悲しさが蘇る

だから僕はその日からそれを
「空の花」としか表現できなくなった

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