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aloha1144
花空夜行
この街のどこにこんなにも人がいたのか
そう思うような人の波をすり抜けるように歩く
非日常の中に連れゆく君と
離れ離れにならないように
ドーンドーンという破裂音が近づくほど
人々が色めき立っていくのがわかる
歩行者天国となった道の両脇は
たこ焼きや焼きそばなんかの屋台が並び
その提灯の灯りが非日常感をさらに演出する
びっしりと人が並んでいる河原沿いに着き
たまたま空いた特等席とは言えないけれど
それなりに見えるスペースに君を導いて
見上げた空には色とりどりの花が次々と咲き
放たれる光で照らされる人々の顔は
大人も子供も皆微笑みの形をしていた
咲いては消えた空の花
太陽が眠る星空の下
あなたの心を照らすから
あなたと誰かを紡ぐから
気づいたら君の大好きな歌の歌詞をつぶやいていた
君は笑顔のままなのに僕は泣き顔を照らされる
最後に大きな花束が空を満たしたところで
アナウンスがなり人々は散り散りとなり
僕も一人で帰路に着いた
大好きだった君と空の花を見に来るのは
これで何回目だろうか
必ず一緒に行こうねと約束していたけど
結局一回も本当の意味では来れなかった
胸ポケットにある生前の君との写真を手で押さる
花と火が繋がると
君がいなくなってしまったあの日
たくさんの花に包まれながら
火葬された光景の悲しさが蘇る
だから僕はその日からそれを
「空の花」としか表現できなくなった
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