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パーマ

僕はモブだ
“なんとかを探せ”の本の中ではじの方に
スペースを埋めるために書かれている風の人間だ

人は内面が重要だって言われて育ってきた
だけど目から入る情報に人は左右されるのも
いくらか生きてくると分かってくる

鏡を見れば見るほど典型的なこのモブ顔を
どうにか自らの手で変身させてあげたい
ああ、小さい頃は楽しかったな

そんな風に思いに老けている今
目の前には美容室で頭に色とりどりのカールを
びっしりと乗せられタオルに包まれた
ヘンテコな生物と鏡の前で向き合っている

まるで幼稚園児がお絵かきで書いた
てるてる坊主のようだ

取り返しのつかないことをした方が
自分を変えられると思ったのが運の尽き
勢いとは怖いものだ

「あと10分したら流しますね」

美容師の言葉は
人生崩壊のカウントダウンか
楽園の入り口の扉が開く音か

カールがどんどん外されていく
「ちゃんとパーマがかかってますよ」
美容師は言うが気になるのはそこではない
肝心なのは良し悪しだ

手際よくシャンプーからセットまで行われたが
あまりに変わる自分の印象に判断力を失い
自分が綿飴にでもなった気分だった

「またおいでくださいね」と
美容師に軽く言われ店を出る
人の人生の決断のように思い切った行動を
だいぶ軽く扱ってくれるもんだ

パーマ頭で見るいつもの街並みは変わらないけど
自分を帰ることは一応できたのだと思う

家に着くとやっぱ似合っていない気もして
うねった髪を引っ張って小さな手行を見せたが
変わろうとした自分の思いを背負っていくと
決めたのだからとセットの練習をした

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