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【小説】総括のコンジェルトン

第一部 帝国の分裂

第五章 帝都脱出作戦


議場の出入口はついさっきまで生きていたはずの死体がうず高く積み重なっていた。その場を立ち去る元老や関係者たちは、その死体の山を越えていかねばならなかった。

「ふう…」
死体を踏み踏み、血生臭い院内を出、ようやく外の空気を吸い込んだデンゲンはため息を付いた。
「これからどうしたものかのう…ウェド・カークの策は不発に終わったようじゃし…」

デンゲンは中庭まで出るとベンチに腰掛けた。その時――
「もーちがおるんよ……」

「そ、その声は…!」

「こわいんよ……」

「光の妖精、ウィル・オー・ウィスプ!」

そこに立っていたのは光の妖精『ウィル・オー・ウィスプ』であった。彼はコンジェルトンの精霊魔法によって召喚され、現況を確かめにやってきたのであった。

「ぼくのおしり、プリプリなんよ。触って」
そういうとウィル・オー・ウィスプは自分の尻を突き出した。

「うぅっ…」
エイデンは仕方なく彼の尻に触れ、揉んでやった。

「あんっ…」
その瞬間、ウィル・オー・ウィスプはエイデンの脳内イメージを自らに読み込み、状況を完全に把握し尽くした。

「それで、どうするんよ?」

「さあ?こっちが聞きたいくらいじゃわい……」

その時。

「おーい、エイデン!」

「パルムス!」

パルムスの瞳からは火花が飛び散っていた。そしてそれを見たエイデンはすべてを悟った。

「やり遂げようぜ」

「うむ…!わかったわい」

「パルムスも、ぼくのおしり、触って」

パルムスに尻を触られた瞬間、ウィル・オー・ウィスプもまたすべてを悟るのであった。

「わかった!ウェリス王国にいるコンジェルトンに伝えておくんよ!」
そう言うと、ウィル・オー・ウィスプは光の速さでダッシュし去っていった。

「さて、問題はガルフリードとその母親を、どう脱出させるかということじゃな」

「元より戦争は覚悟の上、ならば強行突破も……」

「とすれば必要なのは……馬かいの」


一方ウェリス王国の都オルド近郊の街イードにある盗賊ギルドのアジトでは、ウェド・カークとコンジェルトンが寝泊まりをしていた。盗賊たちは多くの場合、自らの親分筋にあたる貸元からトーテム(代紋)を授けられていた。そのトーテムを示しきちんと宿泊代を支払いさえすれば、それ以上の身元確認は行わないというのが盗賊ギルドの掟であった。しかし、それゆえに盗賊ギルドは警備の厳重な都に居を構えることはできないのである。

ギルドの一室、濃く煮出した麦茶をカップに注ぐコンジェルトンは窓の外に気配を察知した。

「もうっ、五代くん!?」

「どうした?」
ウェド・カークが顔を出す。

「ウィル・オー・ウィスプが帰ってきたぞ!」

「なにッ、どうだった?」

二人は早速ウィル・オー・ウィスプの尻を揉んだ。

「西方元老達が、元老院内で虐殺ッ!?」

「下手人の一人はヒルメスの弟レムロスで、もう一人はティタノドワーフだとぉッ!」

「これでプランA=短期決戦の目は潰えたか…」
コンジェルトンは呟いた。

「うむ、プランBに向け、各々出立の時が来たようだな…」

コンジェルトンとウェド・カークは互いの目を見合った。その瞳には、やはり火花が飛び交っていた。

「上手くやれよ」

「互いにな……」

二人は早々に荷物をまとめ、アジトの玄関に向かった。挨拶を済ませるのである。

「長々とお世話になりました。我々はこれにて出立させていただきます。貸元にもくれぐれよろしくお願いいたします」

「へえ、お兄さん方もお気をつけなすって」
応対をしたのは駆け出し者であった。

「じゃあな」

「生きていたらまた会おうぞ」

それだけ言葉を交わすとウェド・カークは馬車を引き、都オルドへと向かっていった。そしてコンジェルトンはアレニアとの国境に向かい、来た道を戻っていくのであった。



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