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缶コーヒー1

 缶コーヒーはコーヒーじゃない。缶コーヒーという飲み物だ。だから、カフェで快適なソファに座り、ゆったりとした気持ちで香り高いコーヒーを楽しみたい時もあるし、チープで甘ったるい缶コーヒーを飲みながら散歩したい気分の時もある。

どちらが高いから良いとか、安いから悪いとかいう問題ではなくて、そもそも比べられるものではないのだ。牛丼とステーキを同じ次元で考える人はいないだろう。そういうことだ。

学生の時、カフェに入るお金が惜しくて、いつも公園のベンチや校舎の階段に腰掛けて缶コーヒーを飲んでいた。

僕は微糖が好きだった。よく一緒にいた友人は格好をつけて、いつもブラックを飲んでいた。お金はなかった。でも時間はたくさんあった。

色々な話をしたけど、ほとんど内容は覚えていない。きっとどうでもいい話だった。それで良かったし、それが良かった。そんな毎日が楽しかった。このまま大人にならずに、ずっと缶コーヒーを飲みながらバカな話をしていたかった。

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