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お酒は美味しいのか?

 初めてお酒を飲んだ時の事を思い出してください。私は飲酒歴が長すぎて正確には初めてお酒を飲んだ時の事を思い出せません。

 記憶の中で一番古い飲酒体験は高校生の時でした。土曜日に両親が翌日まで帰ってこないという友人の家で酒盛りをしようということになりました。

 5人程度集まったと記憶します。用意された酒は日本酒。皆、恐る恐るコップに注がれた酒をそれぞれのペースで飲み始めました。味は全く覚えていません。しばらくすると友人が奇声を上げて騒ぎ出したのだけ覚えています。その後、気になる女の子の電話番号を調べて内容の全くない電話をかけたり踊り出したりシラフでは絶対できないような行動が繰り広げられたのを覚えています。何度も言いますが、お酒の味は全く覚えていません。

 私の飲酒がひどくなり始めたのは大学受験に失敗してからです。浪人生仲間とストレス発散で飲みに行くようになり、大学進学を諦めて就職してからは慣れない仕事のストレス発散で飲みに行きました。その度に皆で大声で笑ったり叫んだり、時には同じような境遇にある友人と肩を抱き合って泣いたりしていました。

 はっきり言って楽しかったです。当時は酒でストレスを発散出来ていると信じていたのです。この飲み始め方が私の飲酒地獄の始まりとなったのだと思います。そしてもう一度言いますが、酒の味の事は全く覚えていないのです。

 酒に酔って得た体験自体は覚えているのですが、酒の味を全く覚えていないのです。果たして酒って美味しいのでしょうか?

 私はビールが大好きです。ギネスなどの濃いビールは好きではありません。飲みやすいバドワイザーのようなライトなビールが大好きです。さて、ここでよく考えてみましょう。

 私は「飲みやすい」と言いました。「美味しい」とは一言も言ってません。正常な飲食では通常「美味しい」から飲んだり食べたりしたいと思いませんか?「食べやすい・飲みやすい」からと言う理由で摂取するのは通常、普通に食べたら不味かったり噛むのに手間がかかる食べ物に対してです。

 初めてのお酒の味を覚えている方はその味を思い出して下さい。ビールならきっと苦かったと思います。日本酒ならツンとくる刺激臭が鼻をついたのではありませんか?
 最初お酒が不味いと感じた方も先輩や上司に「酒の味が分からないなんて大人じゃない」などと言われて無理して酒の味に慣れた方も多いのではないでしょうか。

 評判の良いワインについても「飲みやすい」という表現がよく使われます。女性でも「飲みやすい」カクテルという宣伝文句もよく聞きます。「飲みやすい」ってなんだよ?と思いませんか。

 つまり、アルコールは基本飲みにくいものなのです。飲みにくいので長年熟成させてまろやかにしたり、いい感じの渋みをつけるのです。カクテルはその代表格でしょう。甘くしたり見た目をおしゃれにしたりとなんとかアルコールの飲み悪さを消そうと努力しているように思えます。

 はっきり言いましょう。アルコール本来不味い飲み物なのです。慣れないと美味しくならない飲みのもなんて飲む必要あるのでしょうか。アルコールを好きな多くの人はアルコール自体の味が好きなわけではなく、酔った時に脳に放出される多幸感発生成分のドーパミンが欲しいだけなのです。

 あなたの理性が脳からドーパミンが出るのを感じる事はありません。アルコールよって発生したドーパミンをもっと得なさいとあなたの本能が脳に命令するだけです。本能に命令されたあなたはお腹が空いたら何か食べたくなるようにお酒が欲しくなるように脳がどんどん学習していくのです。これが依存の仕組みです。

 人間の体は本能的に体に悪いものを取り込まないように出来ています。体に悪いものは基本的に不味く感じるように出来ています。わかりやすい例で言えば、腐った食べ物は本能的に不味いと判断できるようになっています。

 もしお酒が体に良いなら子供でも美味しく感じるはずです。子供におやつを禁止してもこっそり食べたりします。こっそりお酒を飲む子供がいるでしょうか。お酒に手を出すのは大人と認めてもらいたい年齢になってからです。

 現在依存症になっている方に今更、本来お酒は不味いものだと言ってもなんの解決にはなりません。ただし、パーティーの時に場がしらけるからと言って不味いお酒を飲んでいる方はお酒に手を出す必要はありません。自ら不味い飲み物を飲む必要がどこにあるのでしょう。しかもその先にはドーパミンのいたずらによる、依存症という地獄が待ち受けている事もあるのです。

 

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