サイコパスチェックに思う(オレ、高層マンション住まんし)
『サイコパス』というアニメ作品があったので、それを見て私は「サイコパス」という単語を知りました。それ以後、「サイコパス」という言葉が日常会話の中でも使われたり、メディアの中でも頻繁に登場するようになったように思います。それまで知らない言葉だったものが「自分の知っている単語」になったことで、その存在に気付き、認知する回数が増えたせいもあるでしょうし、実際に、色々なところでいろいろな人がその言葉を使うようになったこともあると思います。
ちょうどその頃、私は中学校で生徒の学習をサポートする仕事をしていました。担当していた学級のある男の子が、友達との会話の中で「お前それサイコパスじゃん」といったようなせりふを吐き、笑って、盛り上がっている場面に出会ったことが何度もありました。アニメをきっかけに「サイコパス」という言葉が一般的になったのかなと私が思ったのは、私自身がそのアニメの視聴者だったからにほかなりません。その頃私の近くにいた中学生の男の子たちも、アニメが好きで、よくそういった関連の話で盛り上がっていました。
「サイコパス」とされる人は、多くの人がそうはしない考え方や行動・言動をする傾向にあるようです。「あなたのサイコパス度チェック」というような内容で多くのバラエティ番組だったり、ネット記事だったりが放たれたように思います。たいてい「普通の人はこう答える。でもサイコパスはこう答える」みたいなことが明かされるのですが、それに私自身の答えを当てはめてみると、そのどちらでもない場合が多いです。ってかその前に、そもそも「この問題提示でそこまで分からんやん」と思います。そう、簡単に短い文章(原稿)で「こんなときあなたならどうしますか?」という提示があるのですが、その提示にたくさんの嵩を割く記事や放送はそうそうないので、要約されます。つまり、詳しいところまでわからない。細かい状況、その環境条件なんかは問題を出された人の想像による部分が大きいと思うのです。だから、同じ問題文からでも、ひとりひとりが想像した情景って全然違うんだろうなと思います。そんななか捻出された一人ひとりの答えを「サイコパスか、そうじゃないか」の二極のどちらかにあてはめるなんて、なんて「ざっくり」してるんだろうと思います。たいていの「記事」や「放送」の場が、「ざっくり」のために割かれているのかななんて思います。
たとえば、「あなたは高層マンションの自分の部屋のベランダから、地上で起きている殺人の現場を目撃。マンションのほうを見上げた殺人者と目が合う。すると殺人者はこちらに向けた人差し指を動かし、何かを言っているかのよう。殺人者はなんと言った? あなたはどうする?」というような問題。これ、有名な「サイコパス的な答え」ならびにその対処には、「殺人者は、あなたを殺しに行くために、あなたがマンションのどの階のどの部屋にいるのかを指差し数えている。あなたはすぐに他の階に逃げるべき」というようなものがあるようです。私はこの問題を受けて、まず「高層マンションなんてオレ、絶対住まん(私に似つかわしくないから、非現実的)」と思いましたし、そもそも「サイコパスチェック」的な趣旨が前提となっているのを承知していますから、「私がとらないような行動を選び、私が望まないような結果を望む」のがサイコパス的なんだろうなぁ、みたいに思い、斜めに構える姿勢をとってしまっています。 私は「指を動かした」というようなシーンの「指の動かし方」について、「手の甲を地面に向けて、人差し指のみを起こし、ほかの指は軽く握って、立てた人差し指をこちらに向けて前後させる」ようなシーンを想像しました。で、「こっち来いよ。(一緒にこの現場を味わいましょう)」みたいなことを殺人者は言っているのかなと想像しました。で、私がとる行動は、そんな現場に加わりたくないので「戸締まりを確認し、警戒しながら直ちに通報」です。 提示された問題文は、たぶんネットでいろんな文章が出回っています。指の動かし方がどんなだったかについて、もっと細かく述べられたものもあるのかもしれません。私が今回、出会った簡素な問題提示では、その指の動かし方の細かい様子までは説明されていません。同じ問題の提示文のバリエーションの中には、「指を定期的に動かした」みたいなニュアンスのものもあるようで、それを初めに受けていたら、ちょっと想像するものも違ったかな、なんて風にも思いました。
結構、私は、「ほかの人がどう思うか」なんてことを気にしながら、様子見をしながら自分のリアクションを考えたり、決めたりしがちなのを自覚しています。先程の問題を受ければ、きっと多くの人が「自分を殺しにくる」と考えるだろうな、でも「こうも考えられんじゃないかな」というのを私は示した方が、人類全体として考え方や反応や行動のバリエーションが豊かになるであろうなんてことを思って、ヘンに「斜めに構えてしまう」ようなところがあります。それでいいと思っているのですけれどね。
とにかく、「みんながおんなじ過ぎる」のもまた不気味ですし、不自然です。
お読みいただき、ありがとうございました。
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